太陽光発電システムを自宅に搭載した人は、発電した電気を電力会社に売ってお金をもらうことができます。この記事の執筆時点(2010年2月現在)では、「余剰電力の買取制度」が有効で、太陽光発電した電気から、自分の家で使った電気を引き算し、余った電気があればこれを売電できます。
これに対し政権与党の民主党は、現在の余剰電力の買取制度から、「全量買取制」(→用語解説)への移行を検討しています。この全量買取制では、家での消費電力とは無関係に、太陽光発電したすべての電力を売電できます。
この制度移行が太陽光発電ユーザーにとってどんな意味を持つか、いくつかの側面から説明していきましょう。
冒頭の説明は要点だけだったので、両制度のしくみの違いをもう少し詳しく説明しましょう。まずは現行の「余剰電力の買取制度」です。これを図にすると次のようになります。
余剰電力の買取制度(現行制度)
余剰電力の買取制度では、太陽光発電した電気から、使った電気を引いて、残った電気を売電する。
このように余剰電力の買取制度では、太陽光発電した電気から、まずは自分の家で使った電気を引き算して、余り(余剰電力)が出たときに売電できます。どれだけ発電しても、消費する電気の量が発電量を超えていて、余りが出なければ、売電はできません。逆に家で使う電気を節約すればするほど、余剰電力を多く出してたくさん売電できるという特徴があります。このため、消費者の節電努力を促しやすい制度だといえます。
次は全量買取制度を見てみましょう。全量買取制度では、余剰電力とは無関係に、太陽光発電したすべての電気を売電したものとします。
全量買取制度
全量買取制度では、太陽光発電した電気のすべてを売電したものとして計算する。
このとき、家で消費した電力分については、通常どおり電力会社から必要な電気を買います(買電します)。たとえ太陽光発電した電気より多くの電気を消費して、余剰電力がなかったとしても、太陽光発電した全部の電気を売電ができます。全量買取制度では、「余剰電力」という考え方自体がなくなるといってよいでしょう。買電した電気料金は通常どおりに支払うので、光熱費を節約したければ節電が必要ですが、売電という観点では消費電力も余剰電力も無関係です。
ここで、実際の売電額やトータルの光熱費がどのようになるか、例をあげて紹介しましょう。ただし、民主党は全量買取時の買電単価などはまだ発表していません。ここでは、売電単価には現時点で適用されている48円/kWhを、買電単価には従量型契約の買電単価に近い23円/kWhだとして計算します。なお想定は、ある晴れた日に、3kWの電気を3時間にわたって太陽光発電する一方で、1kWの電気を3時間にわたって使っていたと仮定します。
売電額、光熱費のシミュレーション
まずは余剰電力買取制での売電に注目しましょう。3kWの電気を3時間太陽光発電したので、全部では9kWhの電気を発電しました。消費電力のほうは、1kWを3時間ですから3kWhになります。従ってこの間の余剰電力は、9kWh-3kWh=6kWhになります。売電単価は48円/kWhですから、売電額は6kWh×48円/kWh=288円になります。この3時間で、288円の収入が発生しました。
次は全量買取制です。こちらは9kWhの発電すべてを売電できますから、売電額は9kWh×48円/kWh=432円になります。一方、3kWhを消費していますから、この分の電気料金は3kWh×23円=69円です。つまり432円の収入が発生しますが、69円の支出が発生するので、差引では432円-69円=363円の利益ということになります。余剰電力買取制の利益である288円と比較すると、約26%の収入アップです。
ここで計算したのは、たった1日分です。まったく同じ状況が仮に30日続けば、1カ月分の利益は余剰電力買取制で288円×30日=8640円、全量買取制では363円×30日=1万890円と2250円の収入アップになります。
さらにここでは、売電単価を48円/kWhとしましたが、民主党は太陽光発電システムの設置時補助金を廃止して、そのメリット分も含めて全量買取を有利にするという旨の説明をしており、売電単価はさらにアップする可能性があります。売電単価が上がれば、それだけ全量買取制の利益は大きくなります。
余剰電力買取制度が実施されている現在は、特に理由がないかぎり、太陽光発電システムの設置時に余剰電力計だけを追加設置します。この結果、もともとある買電計(電力会社から買った電気の量を計測するメーター)に並べて、余剰電力計が取り付けられます。例えば次のような状態になります。
買電メーター(左)と余剰電力メーター(右)
太陽光発電システムの設置では不可欠なパワーコンディショナー(→用語解説)には、通常、太陽光発電した電気の全量を計測する機能がありますが、計測の精度などは保証されておらず、また検針員も簡単に検針できません。そこで全量買取制に移行するには、さらに全発電量計を設置する必要があります。すでに買電計と余剰電力計の2つを設置している場合は、さらにもう1つ全量計が設置されて、メーターはトータルで3個になります。追加設置の費用は、内容にもよりますが、工事費も入れて5万円程度といわれています。
すでに簡単に触れましたが、民主党は、現在提供されている太陽光発電システムの設置時補助金を廃止して、その分のメリットも含めて全量買取制に移行することを検討しています。設置時の補助金は設置後すぐに支給されるのに対し、電力買取施策のメリットは時間とともに少しずつ回収されるものですから、設置時補助金がなくなることは、購入に踏み出すためのハードルを少し上げることになるかもしれません。しかし太陽光発電システムは、そもそも10~20年かけて元を取ろうというものですから、長い目でみて十分なメリットがあるなら、太陽光発電を始める人にとっては、設置時補助金でも全量買取メリットでもあまり違いはないでしょう。
しかし、補助のお金の出所という意味では、設置時補助金と電力買取ではまったく違います。前者は国の予算(いわゆる国のサイフ)から、後者は国民が直接的に「太陽光サーチャジ」として負担するからです(全量買取のしくみが、現在の余剰電力の買取と同じしくみで、それが拡大された場合)。これについては、別稿に詳しく説明しましたので、そちらを参照してください(→関連記事)。
(2010/2/12 公開)
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