直接的ないい方ではないかもしれませんが、太陽光発電システムの販売に関するチラシ(投げ込みチラシ)や、販売店のホームページ、訪問販売の営業マンの説明などで、「急いで設置しないと損をする」という表現が使われる場合があります。根も葉もないウソというような悪質なケースはまれだとしても、こうした説明にあわてて設置を決めるのは後悔の元です。時期による多少の影響はあるにせよ、大事なのは、本人がしっかり納得して購入を決めること。いずれにせよ、このような説明であまりに購入を煽るような業者とは契約してはいけません。
ここでは、「急いで設置しないと損」の背景についてまとめてみましょう。ポイントは、「補助金」と「売電価格」の2つです。
「急いで設置しないと損」の第一の理由は補助金です。ご承知のとおり、現在(2011年5月末現在)、個人住宅向けに太陽光発電システムを設置するときには、国からソーラー・パネル1kWあたり4万8000円の補助金がもらえます。全国平均でみると、4kW程度のパネルを搭載するケースが多いそうです。4kWなら、19万2000円(4kW×4万8000円)の補助金を国からもらえるわけです(詳細は関連記事を参照)。
国の補助金にはあらかじめ予算があります。2011年度(平成23年度)の例では、予算額は349億円で、補助金申込みの締め切りは2011年12月22日(木)必着とされていますが、それ以前でも予算がなくなれば締め切られます。この意味では、予算が残り少なくなったときに「早くしないと補助金が終了する恐れあり」というのはウソというわけではありません。十分に検討して設置を決断したのなら、補助金があるうちに早めに申し込むべきです。
都道府県や市区町村も、場所によって太陽光発電システムの設置時補助金を提供しています。こちらは募集から短期間で予算に達して締め切られることが多いようです。全国の都道府県、市区町村は、予算が確保できると、期の途中でも鋭意補助金募集を開始しています。「補助金情報」のページを見ると、全国の動向がわかるでしょう。都道府県や市区町村の補助金については、タイミングによって、受給できるかどうか、運に左右されることも大きいのが実情です。地元の業者なら、補助金の募集状況や、直近の予定なども知っているかもしれませんから、相談して、可能であれば受給できるタイミングで申請するようにするとよいでしょう。
国の補助金にせよ、都道府県、市区町村の補助金にせよ、まずは太陽光発電システムの設置についてよく検討し、設置を決断した場合はなるべく補助金がもらえるように申請するというものであって、補助金がもらえるからよく検討しないで購入を決断するというものではありません。
2009年11月から、太陽光発電による余剰電力の高額買取(48円/kWh)が開始され(関連ニュース)、2010年度はこの価格で据え置き、今年度(2011年度)は42円/kWhに削減されたものの、比較的高額な買取が現在も継続されています(関連ニュース)。補助金と同じく、この買取単価も、太陽光発電システムの実勢価格に応じて調整されることになっています。将来的に実勢価格が下がれば、買取単価も徐々に下げられる予定です。
この買取単価は、設置した年度の金額(現在であれば42円/kWh)が向こう10年間継続されます。つまり将来的に買取単価が下がっても、すでに設置した人は、向こう10年間は42円/kWhで買い取ってもらえるわけです。買取単価が下がると、すべての余剰電力がその新価格で買い取られると勘違いしている人を見かけますが、それは間違いです。
買取単価は年度ごとに決定され、同一金額で向こう10年間に渡って適用される
買取単価も下がる方向ですから、「早くしないと、売電価格が下がってしまう」というのはウソとはいえません。しかしこれは、高額なシステムを早期に設置した人が不利にならないように調整するものですから、補助金の場合と同じく、単純に損とはいえないでしょう。
今回説明したとおり、補助金にせよ余剰電力の高額買取にせよ、細部は調整されながらも、当面は継続されるものと思われます。タイミングによる多少の損得はあるにせよ、あわてて購入を決める必要はまったくありません。太陽光発電システムは、10年~20年かけて初期投資を回収するものですから、目先のわずかな損得より、「20年しっかり発電できる」製品と、その間安心してサポートを受けられる工事業者を選ぶほうがずっと大切です。
太陽光発電システムを設置して、予想どおり(予想以上)の経済的な恩恵があり、満足している人がたくさんいるのは事実です。けれどその一方で、当初の見込みどおりには発電できず、不満を持っている人も一部にはいます。つまり、買えば誰でも満足できるとはかぎらないわけです。繰り返しになりますが、高額な買い物ですから、万が一にも後悔することのないように、納得するまでじっくり検討してください。
(2011/5/31 更新)
2015年3月末をもちまして補助金情報の提供は終了しました。