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よくある質問

スマートグリッドやスマートハウスになると、どんないいことがあるのでしょうか?

「スマートグリッド」や「スマートハウス」という言葉をニュースなどで目にする機会が増えました。スマートグリッドの「スマート」は「賢い」という意味で、「グリッド」は「(電力会社の)送電網」の意味です。簡単にいえば、送電網が電力受給を自立的に調整して、従来は不可能だったダイナミックな受給調整を可能にし、より効率よく電力を供給できるようにする「次世代送電網」のことです。一方のスマートハウスは、住宅の内部に電気やガスなどのエネルギー管理システムを設置して、スマートグリッドなどとも連携し、より低コストで快適な生活を送れるようにするものです。

と、ここまでの説明はよく目にしますが、「結局は新しい家電製品を売りたいだけではないのか」とか、「現状で特に困っていないのに、どうしてこれ以上スマートにしなくちゃいけないのか」などという意見をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。確かにどちらもスケールの大きな話で、立場によってもさまざまな見方があるため、わかりにくいのが実情です。ここでは、消費者の視点に絞って、スマートグリッドやスマートハウスの必要性や、利点について考えてみましょう。

大きく変わる未来のエネルギー環境

私たちをとりまくエネルギー環境がいまのまま将来も変わらないなら、スマートグリッドもスマートハウスもいらないかもしれません。しかし現実はそうはいきません。石油や天然ガスなどの化石燃料は価格が乱高下したり、これらを燃やすと発生するCO2(二酸化炭素)が地球温暖化の主因だといわれていたり、原子力発電所事故の影響で従来の原発政策を大幅に見直さなければならなかったりしています。どのように変わるかは断定できませんが、いまのまま変わらないということはありえません。私たちが将来も豊かな暮らしを続けるためには、私たち自身の暮らしを新しいエネルギー環境に対応させて変えていかなければならないのです。

いまわかっている範囲で、近い将来にどのような変化が起こりそうなのか、主だったポイントをまとめてみましょう。

未来のエネルギー環境

未来のエネルギー環境
HEMS(ヘムス)は住宅の電力管理を見える化したり、自動化したりするシステムのこと(Home Energy Management System)。

自然エネルギー利用の拡大

化石燃料の利用によるCO2の発生と地球温暖化の問題、原発事故をきっけとした脱原発問題などから、太陽光発電や風力発電などの自然エネルギー利用の拡大が叫ばれています。自然エネルギーは、使い減りしない、使ってもCO2を発生しないという大きな利点がありますが、難点は相手は自然なので、人間の都合で発電量をコントロールしづらいことです。これらの自然エネルギーをうまく使うには工夫が必要です。

電気自動車の普及

走行時にCO2を排出しない電気自動車(EV:Electric Viecle)が注目されています。まだ高価なため広く普及するには至っていませんが、量産効果によってバッテリの大幅な価格低下が進めば、一気に普及が進むものと期待されています。電気自動車には、大容量のバッテリが搭載されており、このバッテリを家でも使おうというアイデアもあります。

家庭=消費者から、消費者+生産者へ

いままでの一般家庭にとって「電気」は、電力会社から一方的に買うものでした。しかし太陽光発電システムが、この関係を大きく変えました。ソーラー・パネルを屋根に置いて発電すれば、一般の家庭でも、あたかも小さな発電所として、余剰電力を電力会社に売電できるようになったのです。こうして家庭は単なるエネルギーの消費者から、消費者+生産者へと変われる時代がやってきました。自宅で作った電気をどう自分の生活に活用するか、あるいは余った電気でどう社会に貢献するか、これまでにはなかった選択肢が消費者にもたらされました。

電気を貯めて使える家庭用バッテリ

電気自動車の普及や、太陽光発電の普及と関係が深いものとして、住宅用バッテリがあります。現状、電気は貯められないので、いま使う電気は、いま発電しなければいけません。夜には太陽光発電はできませんから、夜使う分の電気はどうやっても電力会社から買わなければなりません。しかし住宅にバッテリがあれば、ここに電気を貯めておいて、後で使えるようになります。いまはまだ高価ですが、電気自動車の普及によって価格低下が見込めるということと、前述したとおり、電気自動車のバッテリを家庭でも活用してしまおうという動きもあります。

何が問題なのか?

上のような変化が起こると、どんな問題が生じるのでしょうか?

自然エネルギーが無駄に?

まずは自然エネルギー利用ですが、いま述べたとおり自然エネルギーはコントロールが難しく、人間の都合で「必要なときに必要なだけ電気を作る」ことはできません。たとえば自然エネルギー利用が急速に進んだドイツでは、売電量がときに多すぎて、電力系統(電力会社の送電網)がこれを受け入れられず、売電の一時的な停止を強制した日が、1年の半分以上もあったそうです。つまり自然エネルギーで発電しているのに、それを無駄にせざるをえなかった日が、1年の半分もあったということです。「必要なのに足りない」というときの対応も困難ですが、このように「必要ないのに発電して無駄になってしまう」という問題もあるのです。

電気自動車をみんなが買うと……

CO2を排出しないクリーンな電気自動車は、多くの人にとってあこがれの存在でしょう。「もう少し安くなったらぜひ買いたい」と思っている人も多いのではないでしょうか。では願いどおり安くなったとして、みんながこぞって電気自動車を買った世界を想像してみましょう。仕事やレジャーで電気自動車を使って家に戻ったら、翌日に備えて充電しないといけません。おそらく、持ち主が家にいて、車を使わない夜間に充電する場合が多いでしょう。たとえば電気自動車の先駆的存在として注目される日産のリーフは、24kWhという大きな容量のバッテリを搭載しています。ちなみに標準的な家庭の1日の電気使用量は10kWh程度といわれます。つまりリーフのバッテリを空の状態からフル充電するには、およそ標準家庭2軒が使う1日分の電気が必要ということになります。みんなが電気自動車を持っていて、しかも夜間時間帯に集中してみんなが充電を始めたらどうなるでしょうか。とてもいまの体制では、電力供給が間に合わなくなるでしょう。

日産の電気自動車「リーフ」

日産の電気自動車「リーフ」
標準的な住宅の1日の電力消費(10kWh)の2倍を超える24kWhの大容量バッテリを搭載している。(写真提供:日産)

ピークに合わせる無駄

たとえば、お昼休みには100人の客がどっと押し寄せるが、他の時間帯は10人程度しかお客さんがこない食堂があったとします。この場合も、お昼に殺到する客を滞りなくさばくためには、座席にしろ厨房にしろ配膳にしろ、100人をこなす体制が必要です。でも100人体制が必要なのは昼だけで、それ以外の時間帯は座席も厨房も配膳も過剰になってしまいます。現在の電力の供給体制はこれと同じで、電力消費のピークに合わせた体制が必要になっており、非常に無駄が多い状態になっています。

「電力消費に合わせた供給」の時代から「電力供給に合わせた消費」の時代へ

いま述べたような問題を解消して、自然エネルギーを積極的に活用し、電気自動車などの新しい機器を普及させ、しかも安定的に、無駄なく効率よくエネルギーを使えるようにするにはどうすればよいのでしょう。それは現在のような「電力消費に合わせた供給」から、「電力供給に合わせた消費」へ転換することです。いまは消費者が使いたいように使い、それに合わせて電力会社が供給していますが、これとは逆に、電力供給に合わせて消費者が電力消費を調整できるようにするというわけです。

みなさんはエコキュートをご存じでしょう。安価な夜間電力を使ってお湯を沸かしてためておけるようにする機器です。お湯をガスでなく電気で沸かすわけですから電力消費量は増えますが、安価な夜間電力を使うので、全体でみれば安くすむという利点があります。夜間電力が安いのは、その時間帯は電力消費が少なく、電力供給に余裕があるからです。

夜間電力は決まった夜間時間帯だけ電気の料金単価を安くするものですが、発電量をコントロールしづらい自然エネルギー利用が増えると、よりダイナミックな料金単価設定が求められる可能性があります。電力会社からすれば、天気がよくて太陽光発電した電気が大量にあるとき、風が強くて風力発電した電気が大量にあるときは、できるだけたくさん電気を使ってもらいたい。これとは逆に、天気が悪く、電力供給がひっ迫しているときには、なるべく電気を使わないようにしてほしいわけです。こうした電力会社の都合に消費者に合わせてもらうために、一番わかりやすいのは、電気料金の単価を事情に応じて上げ下げする方法でしょう。電気が余っていてたくさん使ってほしければ単価を安く、電気が足りなくて使ってほしくないときは単価を高くするのです。消費者としては、なるべく単価が安いときに消費するようにして、高いときは消費しないようにすれば、同じ量の電気を使っても、電気代を安くできることになります。

しかしこの場合、いつ電気の単価が安くて、いつ高いのかは時間帯で決まっているわけではありません。人間が手作業でこれに対応するのは現実的ではありません。ですからなるべく安い電気を使うようにするには、人間がそれを見張っているのではなく、機械に見張らせて、家と電力会社(グリッド)が連携して、電気の供給と消費を最適化する必要があります。これを可能にするのがスマートグリッドであり、スマートハウスだということです。

スマートグリッドとスマートハウスはあくまで独立したものであって、両方がそろわなければ意味がないというわけではありません。たとえばスマートハウス単独でも、エネルギー消費の見える化による節電促進などの効果はあります。ただし両者が本来目指す未来は、今回説明したように、スマートハウスとスマートグリッドが連携して、消費者にも、電力会社にも、そのほか関連する事業者に対しても、いままでにはなかった大きな利益をもたらそうというものです。

住宅をスマートハウスにするには、HEMSを導入したり、HEMS対応の新しい家電製品に変えたり、住宅用バッテリを購入したりと、投資が必要になります。ですが、それによって消費者は電気を安価に使えるようになったり、電気自動車のような新しい機器を安心して使えるようになったりします。長い目でみれば、投資の回収が可能になるはずです。ちょうど太陽光発電システムと同じような位置づけですね。

まだまだ将来の話ですが、確実にやってくる未来の話でもあります。自身のエネルギー生活をどうするのか、選択肢がどんどん広がる中で、自分に最適な方法を選ぶ時代がもうすぐやってくるでしょう。

(2011/8/23 公開)

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