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よくある質問

10年以後の余剰電力の買取はどうなりますか?

現行の政策では、住宅に太陽光発電システムを設置した場合、設置してから向こう10年間、設置した時点での単価で余剰電力(→用語解説)を売電できることになっています。たとえばこの記事を書いている2011年度の買取単価は42円/kWhです。2011年度に太陽光発電システムを設置した人は、その余剰電力を向こう10年間、1キロワットあたり42円で売電できます。

このように設置から10年間の余剰電力の買取は保証されているのですが、その先はどうなってしまうのか。10年たったら買い取ってもらえなくなるのか、買い取ってもらえるとして単価はいくらになるのかというご質問ですね。

国は、10年以後にどうなるかについて具体的な方針を明示していませんので、結論からいえばどうなるのかはっきりとはわかりません。ここでは、いまある材料から、どのような可能性があるのか、また10年後を考えるうえで、生活者として知っておくべきことについてまとめてみましょう。

作った電気を無駄にすることはありえない

補助金や余剰電力の高額買い取りといった太陽光発電の普及政策は、資源の乏しい日本が少しでも国産のエネルギー源を増やすこと、エネルギー資源価格の高騰やCO2排出にかかるコスト負担の影響などを軽減して、安定利用できるエネルギー源を確保することがそもそもの目的です。当然ながら、これは10年たったら決着がつくという問題ではありません。半永久的に解決向けた努力を続けなければならない問題です。10年先の詳細はわかりませんが、はっきりしているのは、太陽光発電で作った貴重な電気を、ただ無駄に捨てるなどは到底ありえないということです。

10年間という期限を区切った余剰電力の高額買い取りは、今後についても当面は継続される模様です。ですから、すでに売電している人が10年たったとしても、後から太陽光発電を始めた人は売電を継続しているわけですから、10年を過ぎたとたんに買い取られなくなるということは考えにくいです。余剰電力の買取は、10年以後も継続される可能性が高いと思っていてよいでしょう。ただしその場合でも、買取単価は大幅に下げられるでしょう。「10年」という期間は、「おおよそそれくらいの期間で、太陽光発電システムの初期の設置費用を回収できる」という考えに基づいて設定されたものです。この理屈でいえば、10年以後は、初期費用の回収を目的とする追加的な付加金はなくなって、その時点での電気料金単価程度で買い取ってもらえると考えるのが自然でしょう(10年後に電気料金の単価がいくらになっているのかはわかりませんが……)。

ソーラー・パネル気象条件による変換効率の変動

買取期間は10年間
10年買取は当面継続されそうなので、先に始めた人が満期を迎えても、後から始めた人は買取が継続されている。買取単価は下がるが、買取自体は継続される可能性が高い。

ただし、大きく変わる10年後の家庭のエネルギー事情

しかし、10年後の住宅のエネルギー事情は、現在とは大きく変わっているはずです。いまは売電できるかどうかを心配しているわけですが、場合によっては、売電する必要自体がなくなっているかもしれません。回答とは少しずれますが、ここで将来の家庭のエネルギー事情についても考えてみましょう。

太陽光発電が大幅に普及すると、売電が難しくなる?

現在、太陽光発電の余剰電力は、家の外にある電線(電力会社の電線)に戻されて、周囲の家で使われます。しかし周囲の家の多くが太陽光発電システムを設置して、いっせいに余剰電力を電線に戻そうとすると、電気を使う人がいないため、電線側の電圧があがってしまい、うまく売電できなくなる恐れがあります。技術的な詳細については、別記事が詳しいので参照してください。

余剰電力の売電が地域的に集中すると売電が困難に

余剰電力の売電が地域的に集中すると売電が困難に
多くの住宅が太陽光発電システムを設置して、余剰電力がいっせいに出てくると、電線側の電圧が上がってしまって、うまく売電できなくなる可能性がある。

この問題の解決にはいくつかの方法があります。その1つは、家庭内にバッテリ(蓄電池)を置いて、余剰電力は電線に戻すのではなく、バッテリに貯めておくことです。当然ながら、太陽光発電は昼間しかできません。ですから昼間余った電気はバッテリに貯めておいて、夜に自分で使うようにするのです。売電単価が高いうちは、貯めて後で使うよりも、売電したほうが得ということになりますが、売電単価が買電単価と同等なら、貯めて後で使っても損はありません。

住宅用バッテリを利用する

住宅用バッテリを利用する
昼間の余剰電力はバッテリに貯めておいて、太陽光発電できない夜間に使うようにする。電力系統に電気を戻さないので、系統への影響はなくなる。

バッテリ価格は大幅に下がる

住宅用バッテリは、特に震災以降、非常時の電源として注目を集めており、複数のメーカーから製品が発売されています。とはいえ、普及の兆しが見えてきたかといえば、現時点ではなかなかそういっていません。なぜなら価格があまりにも高いからです。価格は低下傾向にあるとはいえ、1kWhあたりの価格が50万円前後しています(2011年12月現在)。標準的な住宅の1日の電力消費はおおよそ10kWh程度といわれていますから、バッテリだけで1日すごせるような容量を確保するには、単純計算では500万円くらい必要になってしまいます。とても、庶民が手を出せる水準ではありません。このため現在販売されている家庭用バッテリは、小容量(数百~1000Whなど)にして価格を抑えたもので、急な停電や災害などの不足の事態が発生したときに、夜間の照明や携帯電話の充電、情報収集のためのラジオやテレビなど、最低限の家電製品を利用できるようにすることを目的にしています。

しかしバッテリ価格は、急速に低下しつつあります。大きな原動力の1つは、ハイブリッド型自動車や電気自動車など、バッテリで駆動する自動車の普及が本格化し始めていることです。特に電気自動車は、モーターだけで駆動するため(ハイブリット自動車のようにガソリン・エンジンを持たないため)、大容量のバッテリを搭載する必要があります。たとえば日産が販売する電気自動車のリーフには、24kWhもの大容量バッテリが搭載されています。

自動車での大容量バッテリの利用が進むと、生産量が増えて、量産効果で製造コストが低下してきます。また自動車で使った中古のバッテリを、家庭用に使うということも検討されています。こうした流れは今後も加速するでしょう。家庭で使える大容量バッテリはますます安価に、身近になっていきます。

電気自動車で使った中古バッテリ

電気自動車で使った中古バッテリ
充放電を繰り返して多少性能が落ちて、自動車用としては利用が難しくなったものでも、家庭用バッテリとしてはまだまだ使えます。写真は東京モーターショー2011で三菱自動車が展示していた中古バッテリ。

電気自動車のバッテリを家で使う

首都圏で働くサラリーマン家庭で、通勤は電車という場合、平日の自家用車はほとんど家の駐車場に停めたままになっています。このよう場合に、電気自動車が搭載する大容量バッテリを住宅用に活用しようというアイデアがあります。先に説明したとおり、日産のリーフは24kWhと、標準的な住宅の丸2日分の電気を貯めておけます。いい換えれば、リーフのバッテリが満充電になっていれば、停電してもリーフのバッテリの電気だけで丸2日は普通に生活できるのです。

日産リーフの電気を使ったショー

日産リーフの電気を使ったショー
写真は東京モーターショー2011での日産ブースでの1コマ。ショーの照明などはすべて日産リーフのバッテリから供給されていた。

通常の住宅側から電気自動車への充電だけでなく、電気自動車から住宅へという逆方向の送電を行うには、それなりの設備が必要ですが、今後は徐々に普及していくでしょう。太陽光発電システム、安価な夜間電力、家庭用燃料電池(エネファーム→用語解説)、家庭用バッテリや自動車搭載のバッテリなど、これらのエネルギー機器を組み合わせて、豊かで自然にもやさしい生活を自分で選択できる時代がやってくるはずです。当面の間は、売電したほうが経済的には得、ということはあるかもしれませんが、CO2排出ゼロで、太陽光発電で作った電気で自動車を走らせるなんて、わくわくするではありませんか。

電気自動車のバッテリを活用する

電気自動車のバッテリを活用する
電気自動車に搭載された大容量バッテリを家庭でも利用するアイデアが実現されようとしている。

このように、10年以後を考える際には、「売電できるかどうか」とか「売電単価はいくらか」ということだけでなく、「住宅や生活にかかわるエネルギー事情はいったいどうなっているのか」という点も考慮する必要があるでしょう。

(2011/12/27 公開)

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