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第2回 ソーラー・パネルはカタログどおりに発電するの?

太陽光発電の検証施設で実際にいろいろ試す「ためしてわかった! 太陽光発電」の実験第1弾は、ソーラー・パネルがカタログどおりに発電するのか確かめることにしました。

各メーカーのソーラー・パネルのカタログやWebサイトを見ると、パネルの「最大出力」という項目があります。各社パネルのデータについては、別記事の「[製品比較]太陽光発電モジュール各社比較」ページの基本仕様の表を参照してください。表の真ん中あたりに「最大出力」の項目があります。

これを見渡すと、小さいものだと40W(ワット)程度から、大きいものでは200Wを超えるものまであることがわかります。この最大出力は、パネルの大きさと、発電効率によって決まります。いろいろな出力があるのは、いろんなサイズのパネルがあることと、発電効率も製品によってまちまちだからです。

ソーラー・パネルの最大出力とは?

そもそも、このソーラー・パネルの最大出力とは何でしょうか? ソーラー・パネル・メーカーがカタログに表記する製品の性能は、国際規格で定められた一定の条件下でパネルを評価したものです。最大出力(場合によって「定格出力」と表記される場合もあります)の値も、こうして評価される値の1つです。

具体的には、ソーラー・パネルに昼間の快晴時相当の強さの光(1000W/m2)を当てて、パネルの発電量を調べます。仮に変換効率100%で、面積が1m2のパネルがあったとすれば、1000Wの電気を作り出せる光の強さということになります。ここでは詳しく説明しませんが、国際規格には光の波長にも決まりがあり、地球の地表近くで受ける波長の光を評価に使います。

別の記事でも説明しているとおり、ソーラー・パネルは、パネルの温度によっても変換効率が変わります(一般に高温になると効率が落ちます)。このため国際規格では、パネルを25度にして評価します。この条件で、最大の出力を計測したのが「最大出力」の値というわけです。

国際規格によるソーラー・パネルの評価

国際規格によるソーラー・パネルの評価
パネルに快晴時相当の強さの光(1000W/m2)と、地表近くで受ける波長の光を当て、パネルは25度にして出力を調べる。たとえばパネルのサイズが1m2だったとすれば、この条件で得られる最大出力がカタログ値になる。

カタログどおりに発電するの?

多くのユーザーは、カタログに掲載されたこの「最大出力」の値や、「変換効率」の値、価格を天秤にかけて、どのメーカーのパネルを選ぶかを決めています。変換効率というのは、最大出力をパネルの面積で割ったものですから、実質的には最大出力の値が、パネルの性能を決定づけることになります。ですがこの「最大出力」の値、本当に信用できるのでしょうか?

もちろん、国際規格に基づいて正式に評価した結果ですから、それ自体間違いはないでしょう。問題は、ソーラー・パネルは、上記のような理想的な状態ばかりで使われるわけではないということです。たとえば夏場の屋根は70度以上にもなるといわれますし、日射にしても朝から夕方まで、一定の光というわけではありません。正直なところ、カタログの最大出力の値は、かなり都合のよい条件で計測されたもので、実際の利用条件はこれとは異なる場合が多いといえます。

たとえば、時速60km/hで平地を定速走行する自動車の燃費(ガソリン1リットルあたり何km走るか)を計測したところ、15km/Lだったとしましょう。きちんと計測したのであれば、これはこれで正しい値なのですが、実環境では、信号や渋滞などで加減速を繰り返しますし、上りや下りもあるので、同じ車でも実利用での燃費はだいぶ悪くなります。あまりよいたとえではないかもしれませんが、ソーラー・パネルの最大出力も、これと同じようなところがあります。

発電量を実際に調べてみよう!

ということで、実際に各社のソーラー・パネルの発電量を調べて、カタログ記載の最大出力どおりに発電しているかどうかを確かめてみました。今回は、国内の住宅向けとして主流の結晶系のパネルを調査します。

今回の実験にご協力いただいたのは、第1回でご紹介した、神奈川県藤沢市にある新栄電子計測器(株)の検証施設「PVテクニカルセンター」です。ただし、前回ご紹介したときから、実験に使えるパネルの枚数などが少し変わっています。今回の実験では、以下のメーカー、パネル型番、枚数でテストしました。

メーカータイプパネル型番パネル出力(W)設置枚数(枚)トータル出力(W)
シャープ多結晶型ND-163AW16371141
京セラ多結晶型KD186X-QPE-S18671302
三洋電機HIT型HIT-B205J01205 51025

今回計測した結晶系ソーラー・パネルの仕様

表の「パネル出力」は、各社のソーラー・パネル1枚あたりのカタログ上の最大出力です。これらのパネルが、「設置枚数」だけ接続されています。「トータル出力」は、パネル出力に枚数を掛け算したものです。

今回は、雲のない快晴の日と、曇りの日、薄曇りの日の3つの状態で各社パネルの発電量を調べました。パワーコンディショナに入る前の電力を計測しています。具体的な計測日の条件は以下のとおりです。

計測日天候外気温日射量
2011年7月6日快晴31.5度968 W/m2
2011年8月24日曇り29.7度 295~325 W/m2(平均 312.3 W/m2
2011年9月14日薄曇り25.8度632~637 W/m2(平均 634.8 W/m2

計測日の天候

調査は外気温25度~30度で、快晴の7月6日には光の強さが968W/m2と、国際規格の検査標準に近い数値です。一方曇りの8月24日の光の強さは平均312.3W/m2で快晴時の1/3程度、薄曇りの9月14日は634.8W/m2で快晴時の約65%程度の強さでした。

あらかじめお断りしておきますが、今回の調査は、あくまでも上記3回の条件で試験的に発電量を調べたものであって、カタログ上の出力値と同じく、「ある条件での観測結果」でしかありません。今回の結果だけで、どのメーカーのパネルが優れている、劣っていると判断することはできません。今回の結果は、各社のカタログ出力値と、実際の出力値の間にどれくらいの開きがあるかを知るためのものですし、あくまで参考値です。誤解のないように読み進むことをお願いいたします。

実験結果

今回の実験結果は次のようになりました。少々込み入っているので、表の見方を説明しましょう。

測定日天候メーカーパネル温度(度)日射量(W/m2カタログ出力値(W)期待出力(W)計測出力値(W)計測出力/期待出力(%)
7/6快晴シャープ40.696811411104.49102793
京セラ40.496813021260.34117393
三洋電機40.69681025992.2089390
8/24曇りシャープ35.33111141354.85367103
京セラ35.13251302423.15 467110
三洋電機35.83181025325.95 341105
9/14薄曇りシャープ42.26351141724.5470998
京セラ42.26371302829.37 79095
三洋電機42.26351025650.88 61294

今回の実験結果

表では、快晴時(7月6日)の計測結果と、曇り時(8月24日)、薄曇り時(9月14日)の計測結果をそれぞれ上から並べています。

パネル温度(度)

発電量を計測した瞬間のソーラー・パネルの温度です。外気温の影響もありますが、快晴で日射が強かった7月6日と曇りの8月24日を比べると、快晴時のパネルの温度は5度ほど高くなっています。薄曇りの9月14日は、外気温は比較的低いのですが、計測前にパネルに日射があたっていた関係で、3回の計測ではパネル温度が最も高く(42.2度)なっています。

日射量(W/m2

発電量計測時の日射量です。快晴時の計測ではすべて同じ(968 W/m2)でしたが、曇りや薄曇りの計測では、各社で微妙に日射量が変わっています。計測はパネルを切り替えて短時間で次々と行っているのですが、曇りの日の日射量は、ちょっとした雲の状態の違いでどんどん変わっていくことがわかります。

カタログ出力値(W)

各社のパネル単位の最大出力と、設置枚数を掛け算したものです。パネル温度25度、日射量1000W/m2なら、カタログ上はこれだけ発電されるはずです。

期待出力(W)

今回の計測では、いずれの日も1000W/m2よりも日射が弱いので、そもそもカタログどおりには発電しないはずです。この「期待出力」は、観測日の日射量と、国際規格の日射量(1000W/m2)の比を求めて、上のカタログ出力値に掛け算したものです。たとえば観測日の日射量が500W/m2だとすれば、これは国際規格の半分ですから、ほかの要因(パネル温度など)を無視すれば、最大出力の半分が出力されてもいいはずです。この値と実際の出力値(次の計測出力値)を比較すれば、期待に対して実際にどれくらいの出力があったかを比較できます。

計測出力値(W)

今回、実際に計測された出力値です。当然ではありますが、同じパネルであっても、快晴と曇りでは発電量にかなり差があります。発電量は天気次第というのは、これを見てもわかります。

計測出力/期待出力(%)

期待出力に対して、実際にどれくらいの出力があったのか、割合を求めたものです。この値が100より小さければ、実際には期待値ほどは出力しなかったことになります。100より大きければ、期待値以上に実際の出力があったことになります。

快晴では期待値に届かず、曇りでは期待値以上

ご覧のとおり、結果は、快晴時は期待値に少々届かず、曇り時は期待値以上の発電がありました。それぞれをグラフにしてみましょう。

快晴時(7月6日)の計測結果

快晴時(7月6日)の計測結果

曇り時(8月24日)の計測結果

曇り時(8月24日)の計測結果

薄曇り時(9月14日)の計測結果

薄曇り時(9月14日)の計測結果

快晴時と薄曇り時は、いずれのパネルも期待発電量に達するものはありませんでした。快晴時の日射量は968W/m2と、国際規格の1000W/m2にかなり近い値にもかかわらず、カタログ値どおりには出力しませんでした。さまざまな理由が考えられますが、今回の評価施設では、ソーラー・パネルから計測器までの距離が少し離れている(距離にして10m程度)ため、ここで多少のロスがあったのではないかと考えられます。

もちろん、快晴時や薄曇り時のほうが発電量はずっと多いわけですが、期待発電量との差を計算すると、曇り時は、どのパネルも期待値以上に発電しました。今回の結果は、国際規格の最大出力から単純に日射量だけで単純換算したものですが、やはりそのような単純換算は当てはまらないということでしょう。測定条件(1000W/m2、25度)が変われば、パネルは条件に応じて異なる特性を表すということだろうと考えられます。

どれくらい発電するかは天気次第、条件次第

くり返しになりますが、今回のテストは、各メーカーのパネル性能を比較したものではありません。組織的にいろいろな条件で各社パネルを評価したわけではなく、たまたま、とある夏のとある3日で調べたら、上のような結果になったということにすぎません。お間違えのないようお願いします。

今回のテストでわかることは、パネル・メーカーが公表するカタログ上の「最大出力値」は、あくまで参考値でしかないということです。実際に屋根に設置されたソーラー・パネルは、朝日から昼間の強い日射、夕日と、さまざまな日射条件で発電します。またパネルの温度は、季節によって大きく変化します。これらの条件によって、カタログ性能を下回る場合もあれば、ときにはカタログ性能を上回る場合もあります。

カタログの「最大出力」や「変換効率」はパネルの性能を計る重要な指標ではありますが、あまりに絶対視しすぎるのも間違いです。やはり最後は、専門家として信用できる設置工事業者と、ご自身の設置条件でどのパネルを選ぶのがベターなのか、納得のいくまで相談して決めるのが一番でしょう。

《太陽生活ドットコム 小川》

(協力:新栄電子計測器株式会社)

(2011/9/28 公開)

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