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よくある質問

「再生可能エネルギーの買取法案」で何が変わるんですか?

この記事を書いている2011年7月26日時点で、国会は再生可能エネルギー(自然エネルギー)の利用をいっそう促進するための新しい法案を審議しています。菅直人首相は、この法案の成立を自身の退陣条件の1つとしており、並々ならぬ決意が感じられます。

この法案、正式には「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案」というのですが、新聞などでは「再生可能エネルギーの買取法案」などと表記されています。以下この記事では「今回の買取法案」と表記することにします。

自然エネルギー利用を国民負担で促進する

今回の買取法案の柱は次の2つです。

  • 再生可能エネルギー(自然エネルギー)で作った電気を、国が定めた一定の期間・価格で電力会社が買い取ることを義務化する。
  • この買取に必要な費用は、国民が広く薄く負担する。

簡単にいえば、自然エネルギーを利用した発電を促進する代わり、その費用は国民が負担するという内容です。

自然エネルギー利用促進と国民負担の増加がセット

自然エネルギー利用促進と国民負担の増加がセット
自然エネルギー利用は促進されるが、国民の負担は増える。

以下ではこれらを1つずつ説明していきましょう。

自然エネルギーから作られた電気の全量買取を保証する

第一のポイントは、再生可能エネルギー(自然エネルギー)、具体的に今回の買取法案では、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスから作られた電気を、電力会社が買い取ることを義務とする点です。自然エネルギーから作られた電気をすべて買い取ることから、「全量買取法案」と呼ばれることもあります。以下の説明では、すでに余剰電力の買取が実施されている住宅向け太陽光発電ではなく、事業者による自然エネルギー利用の発電事業を前提に説明します。

太陽光や風力などに代表されるように、自然エネルギーは枯渇しませんが、どれだけの電気を作れるかは天気まかせ、風まかせで、計画/制御できません。加えて、作った電気をいくらで売れるか、そのときどきの市場任せだとすれば、「どれだけ作れるかもわからず、いくらで売れるのかもわからない」まったく見通しのきかない事業になってしまいます。自然エネルギーを利用する発電事業を起こすには、まとまった初期投資が必要ですが、回収の見通しが立たないのでは、投資しようという人が現れません。

これに対し今回の買取法案では、国が決めた一定の期間、一定金額での発電した電力の全量買取を国が保証します。これで事業者から見れば、少なくとも「いくらで売れるか」という部分は、国が保証してくれるのですから、事業の見通しはかなりよくなります。採算が取れると見込めるなら、自然エネルギー利用の発電事業に参入する事業者も増えるでしょう。

参入が増えれば、発電に必要な機器がたくさん売れるようになり、製造コストが下がって価格も下がり、自然エネルギー利用のハードルがさらに低くなるという好循環が生まれるわけです。こうして、自然エネルギー利用の促進を図ろうというのが今回の買取法案の大きな目的です。

買取費用は国民で負担

第2のポイントは、いま述べた自然エネルギー利用による電気の買い取りにかかる費用を、国民全員で負担するということです。電気を直接買い取るのは電力会社ですが、そのお金を出しているのは電力会社でも国でもなく、国民だということです。

具体的には、電気の使用量に応じて、付加金(サーチャージ)と呼ばれるお金を、国民全員に広く課金します。個人も、事業者も、電気を使う人全員から、使用量に応じて追加の料金を徴収して、これを買い取りにあてるというわけです。電力会社は支払の仲立ちをしているだけで、自然エネルギー利用促進のために必要な買取費用は、全国民が直接的に負担するというしくみです。

実はこうした付加金の仕組みは、現在すでに、住宅向け太陽光発電の余剰電力買取向けに実施されています。太陽光発電で余った電気は高額で(48円~42円/kWh)で売電できますが、このための費用は全国民の電気料金に付加されています。電気料金の明細票をよく見ると、「太陽光発電促進付加金」という項目がありますが、これがその付加金です。

今回の買取法案で何が変わるのか?

今回の法案がそのまま国会で承認されるかどうかはまだわかりませんが、仮に立法化されたら何が変わるのでしょうか? 結論をいえば、自然エネルギー利用は促進され、太陽光や風力、水力、地熱、バイオマスを利用した発電事業者が増えて、原子力や化石燃料(石油や石炭、天然ガス)に依存しないエネルギーの割合が増えます。ただしその代り、国民(個人・事業者)が電気料金に付加して支払う付加金が増えます。簡単にいえば、毎月の電気料金が値上がりするということです。

まずは今回の買取法案が施行される前の現在の状態を図にまとめまてみましょう。以下は、住宅向け太陽光発電の余剰電力の買い取りを付加金でまかなっている様子です。

太陽光発電による電気の買い取り、現在のしくみ

太陽光発電による電気の買い取り、現在のしくみ
現在は、住宅向け太陽光発電の、余剰電力の買い取りにかぎり、太陽光サーチャージが使われている。

このように現在は、基本的に個人の住宅の屋根に設置された太陽光発電システムで作られた電気を、まずその家で使い、余った電気があればそれを電力会社が買い取っています。この買取費用は、太陽光発電促進付加金(太陽光サーチャージ)として、全国民(個人・事業者)が負担しています。太陽光発電しているユーザーも、夜は電気を買いますから、買った分に応じて付加金を払います。

住宅の屋根は狭く、それほど大容量のソーラー・パネルは載せられません(全国平均で一軒あたり4kW程度)。また買い取っているのは余剰電力だけですから、買取費用はそれほど大きくありません。経済産業省の試算によれば、標準的な世帯で、付加金は30円~100円程度とされています。

さてそれでは、今回の買取法案が施行されたら、これがどう変わるのでしょうか? 次のようになります。

今回の買取法案のしくみ

今回の買取法案のしくみ
住宅向け太陽光発電だけでなく、自然エネルギー利用による発電全般が買取対象になり、この買取に必要な費用を国民が負担するようになる。

まず、住宅向け太陽光発電の買取はこれまでどおり継続されます。ただし、現状の余剰電力の買い取りか、住宅向け太陽光発電もほかと同様に全量買取になるか、法案には明記されていません。

そして住宅向け太陽光発電に加えて、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスの自然エネルギーから作られた電気全般が買取対象になり、これらの費用も国民が負担します。住宅向け太陽光発電とは異なり、こちらは事業者が実施するもので、採算さえ合えば、大規模な発電所などが作られる可能性があります。それらの設備で発電された電気を全量買い取るわけですから、従来から比べると負担は間違いなく大きくなります。ただし買取費用や期間などは法案には明記されておらず、「後で状況を見て経済産業大臣が決める」とされているので、具体的にどれくらいの負担になるのかは未知数です。

海江田経済産業大臣の国会での答弁によれば、太陽光発電以外の買取期間は15年で1kWhあたり15円から20円の間の20円に近い水準、住宅用の太陽光発電の買取期間は10年で2012年度の買取価格は30円台後半、事業用の太陽光発電の買取期間は15年で買取価格は住宅用を参考に事業用としての特殊性を勘案して決める、と述べています。将来的にどの程度の負担になるのか気になるところですが、この点については「付加金は1kWhあたり0.5円を超えないように買取価格などを調整していく」と答弁しました(標準的な家庭で1カ月200円弱の負担増になります)。実際の買取期間や買取価格については、今回の買取法案が成立後、パブリックコメントなどを経て決定されることになります。

自然エネルギー利用の促進と国民負担のバランスが重要

原子力エネルギーや化石燃料に依存せず、純国産で、うまく使えば枯渇することなく使える自然エネルギーの活用を促進するのは必要なことでしょう。しかし一方で、これらの促進を進めれば進めるだけ、国民には大きな負担がかかります。「自然エネルギー活用」というプラス面だけでなく、国民負担増というマイナス面も常にセットにして考える必要があります。

(2011/7/27 公開)

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