国内の住宅用として販売されている太陽光発電モジュールの多くは、「多結晶シリコン」と呼ばれる材料で作られています(ほかに単結晶型のものもあります)。原料となるシリコンをいったん溶かし、ゆっくり冷やして結晶化さていることからこう呼ばれます。これを薄くスライスして処理し、太陽電池を作ります。結晶シリコン型は歴史的に実績の高い太陽電池材料であり、変換効率が比較的高い(12~18%)、耐久性が高いなどの特長があります。ただし次に述べる薄膜型と比較すると、多くのシリコン原料が必要です(100倍程度)。太陽光発電システムがここ数年で急速に普及して原料シリコンの需要が急増し、価格が高騰したことから、大量のシリコンを使う欠点(原価の増大)が問題視されました。その後、原料シリコンの供給が増加したことなどから、現在では需給バランスは安定しつつあるといわれます。
一方の薄膜シリコン型は、比較的新しい製造技術を利用します。モジュールの基盤(ガラスなど)に、特殊な装置でシリコンなどを含む原料ガスを付着させることで太陽電池を作ります。前述したとおり、原料シリコンがわずかですむのが大きな特長の1つです。薄膜シリコン太陽電池は、液晶ディスプレイの製造工程と共通する部分が多く、技術開発が進んだ製造装置やノウハウなどを応用できるという利点があります。一方の欠点は、結晶型に比較して変換効率が低いことです(10%未満)。
同じ最大出力を得たければ、薄膜型は結晶型よりも大きな面積が必要です。日本の住宅の屋根は狭く、高効率なモジュールでないと十分な出力が得られないため、薄膜型は不利と考えられていました。
しかし結晶型シリコンのもう1つの欠点に、高温時に変換効率が低下するという問題があります。カタログに表記されるモジュールの出力値は、基準温度25度で計測したものです。強い日差しがさす夏場には、モジュールの温度は70度近くになる場合があります。このとき結晶型シリコンの出力は、基準の25度のときより20%ほど低下するといわれます。
一方の薄膜シリコンは、高温になっても出力があまり低下しません。70度でも、25度時点の10%減程度だとされます。
このため、気温が比較的低く、日射が強い春や秋には結晶シリコン型が有利ですが、真夏には薄膜シリコン型と優劣が逆転する可能性があります。年間を通じて発電量を見た場合、このような特性から、結晶シリコン型も薄膜シリコン型もあまり変わらないという報告もあります。特に気温の高い地域に設置する場合は、薄膜シリコン型も有望な選択肢になる可能性があります。選択にあたっては、専門家に意見を求めてみるとよいでしょう。
(2009/7/17 公開)
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