電力を供給する電力会社から見て、多くの人が活動する朝から夜までの時間帯は消費される電気の総量は多く、人が寝静まっている深夜時間帯は消費電力は少なくなります。電力会社は、こうした電気の消費量に合わせて、火力発電所や原子力発電所を使って電気を作ります。しかし出力をきめ細かく調整するのは容易ではないため、深夜時間帯は電気が余り気味になります。
このような理由から、電力会社からすれば、電力消費が集中する昼間よりも、余裕のある深夜時間帯になるべく消費してもらったほうが助かります。このため電力会社は、時間帯にかかわらず単価が一定の料金メニューに加え、深夜時間帯の電気代を割安に、代わりに昼間の電気代を割高にした料金メニューを用意しています。これが一般にいう「深夜電力」です。たとえば、エコキュートなどの夜間蓄熱式機器は、この安価な深夜電力でお湯を沸かし、給湯に利用します。
通常、どの電力会社も深夜電力メニューを持っていますが、具体的なサービス内容や、利用条件などはご利用の電力会社によって変わります。以下では東京電力のメニューを例に紹介しますが、異なる電力会社を利用している場合には、各電力会社のホームページなどで詳細を確認する必要があります。
それでは、実際の深夜電力メニューの例を紹介し、これを利用することでどのように光熱費を削減できるのか見てみましょう。安価な深夜電力を上手に使うコツは、深夜電力時間帯にできることは、なるべく昼間にやらないようにして、昼間の電力消費を安価な深夜帯にまわすことです。
前に述べたとおり、具体的なサービスメニューは電力会社によってまちまちですが、電力会社は、一般的な従量電灯契約(1kWh 約18円~24円)に加え、安価な深夜電力を利用できるようにするオプションを用意しています。一般に深夜電力を利用するオプションを選択すると、深夜時間帯(22:00~翌8:00など)の電気料金が安価になる代わりに(24円/kWh→9円/kWhなど)、昼間の時間帯の電気料金が高くなります(24円/kWh→33円/kWhなど)。たとえば以下は、東京電力が提供している深夜電力メニューの料金例です。
このように、深夜電力を利用する契約にすると、昼間の電気代が高くなるので、昼間に多くの電気を使うと不利になります。しかし太陽光発電システムを設置すると、昼間は太陽光で発電した電気が使えるので、単価の高い買電を抑えることができます。生活パターンにもよるので、慎重に契約するメニューを選択する必要はありますが、太陽光発電システムを設置したときには、深夜電力契約にして、できるだけ深夜時間帯に電気を使うようにすれば、電気料金を削減できます。
太陽光発電と深夜電力の具体的な例を考えてみましょう。たとえば、ある快晴の日に、2kWの余剰電力を1時間にわたって売電しているとします。現在、余剰電力の売電価格は1kWh=48円ですから、2kW×1時間=2kWhの売電で96円になります。しかしこのとき、1000W(=1kW)のアイロンを1時間ずっと使っていたとすれば、余剰電力は半分の1kWhになりますから、売電価格は1kWhで48円になります。つまり、この時間のアイロンの電気代は実質的には48円だったということです。
一方、昼間にアイロンをかけるのはやめて、深夜電力時間帯にかけたらどうなるでしょうか。深夜電力が仮に10円/kWhだとすれば、1時間のアイロンの電気代は10円ですみます。同じ1kWhの電気を使っても、このケースでは昼間なら48円、深夜時間帯なら10円になる(約1/5になる)ということです。
このように、太陽光発電と深夜電力メニューをうまく使えば、同じ量の電気を使っても、電気代を大幅に安くすることができます。
(2009/12/10 公開)
2015年3月末をもちまして補助金情報の提供は終了しました。