信頼できる設置工事業者が紹介するローンなら通常は問題ありませんが、そうしたトラブルが起こる可能性があるのは本当です。住宅の新築時・改築時などに利用する銀行の住宅ローンや、太陽光発電システムの設置を前提にするソーラー・ローンなどでは問題ありませんが、クレジット会社が提供する一般的な割賦販売(クレジットによる立替払い契約)などでは、補助金の支給対象外となってしまう契約内容のものがあります。
以下に説明するのは、太陽光発電システムを設置するときにもらえる国の補助金(「平成22年度住宅用太陽光発電導入支援対策費補助金」→J-PECの説明ページ)についてです。都道府県や市区町村の補助金は、それぞれの自治体が条件を決めているので、各自治体での確認が必要です。ただ、国の補助金と同様のルールを使っているケースは多いと思われます。
ここで問題となってくるのは、ローンで購入した太陽光発電システムの所有権を誰が持っているのか、ということです。国の補助金の支給対象は、住宅に太陽光発電システムを設置して、基本的には自身でこれを利用する個人(または法人)となっています(賃貸住宅などでは、賃貸人が利用することも可)。つまり簡単にいえば、基本は「自分で買って、自分の住まいに設置して、自分で使うものが対象」になっているということです。
たとえば、太陽光発電システムの設置費用を現金で支払った場合、当然ながらシステムの所有権は代金を支払った時点で自分のものになります。もちろん、この場合は、ほかの条件に問題がなければ、補助金がもらえます。
次に、銀行などの住宅ローンや、太陽光発電システムなどを前提としたソーラー・ローンなど、金銭消費貸借契約によるローンではどうなるでしょうか。図にすると次のようになります。
住宅ローン/ソーラー・ローンを利用した場合
この場合、太陽光発電システムの設置代金は、銀行などの金融機関から設置工事業者にいったんまとめて支払われます。その後、太陽光発電システムを設置した人が、銀行とのローン契約に従って、毎月のローンを返済します。しかし住宅ローンやソーラー・ローンなどの金銭消費貸借契約では、太陽光発電システムの所有権は設置者にあります。つまり購入代金は借り入れていますが、あくまでシステムは自分のものです。したがってこの場合、システムの所有権については、現金で買ったのと同等の状態ですので、問題なく補助金をもらえます。
これに対し、クレジット会社が提供する通常の割賦購入(立替払い契約)では、支払いが完了するまで、購入物の所有権はクレジット会社に留保(一時保有)されるのが一般的です(「所有権留保」と呼ばれます)。このようなタイプのローンを利用して太陽光発電システムを設置した場合の状態は次のようになります。
クレジット会社の一般的な分割払いを利用した場合
この場合は、設置した太陽光発電システムの所有権は、ローンを完済するまでクレジット会社が留保します。つまりローンを払い終えるまで、設置したシステムは設置者のものではないということです。問題のなかった前出の住宅ローン/ソーラー・ローンとの違いは、設置者とクレジット会社の間のローン契約の内容(所有権の取り扱い方)であり、設置者から見ればほとんど違いはわかりません。しかしこの場合は、自分のものでない(クレジット会社が所有権を留保している)太陽光発電システムを設置した人が補助金を申請する形式になるので、認められず、補助金がもらえなくなってしまうというわけです。
平成22年度からは、クレジット会社による立替払いによるクレジット契約でも、一定の条件さえ満たせば、国の補助金がもらえるようになりました(それまでは金銭消費貸借契約のみ対象)。条件とは、クレット契約の約款において、購入した太陽光発電システムの所有権が、設置者に移転するように規定されていることです。つまりクレジット会社は使えないということではなく、太陽光発電システムの購入を前提としたサービスであれば、クレジット会社も利用できます。
ローンで太陽光発電システムを設置する場合、通常は設置工事業者が紹介するローンを利用するケースが多いでしょう。実績のある工事業者が提供するローンであれば、普通はここで説明したような問題は起こらないはずです。ただし、この問題によって補助金がもらえなくなるケースも実際に発生しているようです。信頼できる業者に任せるのが何よりですが、心配があるなら、念のため業者に確認するとよいでしょう。
(2010/7/5 公開)
2015年3月末をもちまして補助金情報の提供は終了しました。