非常に誤解をまねく説明ですね。何百万円もする太陽光発電システムが「タダ」で設置できるわけがありません。厳密にいえば、「ローンを使えば初期費用として現金は不要であり、太陽光発電による電気料金の削減分と、売電による収益によって、月々のローン返済くらいの利益がえられます」ということです。確かに、かなりの好条件が重なることと、本人の節電努力を組み合わせれば、「実質的に負担ゼロ」で太陽光発電システムを設置できる可能性はあります。ここでは例として具体的な数字を使って、「実質的に負担ゼロ」の中身を見てみましょう。
全額ローンを利用して設置すれば、最初にまとまった現金はいりませんが、お金を借りて設置するわけですから、かかった設置費用とローンの金利を加えた金額を、毎月少しずつに分割して返していくことになります。これは太陽光発電システムにかぎらず、何を買おうと同じことですね。しかし太陽光発電システムが特別なのは、設置後に発電することで、電気代(買電)を安くしたり、売電で収益を得たりできることです。つまり買った後から、発電によって少しずつ初期費用を回収できるのです。このとき買電を節約できる金額と、売電による収益を加えた金額が、ローンの支払いと同じ額なら、「実質的に負担ゼロ」で太陽光発電システムを設置できることになるわけです。
話だけではあまりピンときませんね。ここでイメージしやすいように、具体的な金額を当てはめて計算してみましょう。
まず、太陽光発電システムの設置費用は仮に全部で200万円だったとします。実際には補助金などがもらえるわけですが、ここではとにかく、太陽光発電システムを設置するのに200万円支払う必要があったと仮定します。
手持ちの現金にあまり余裕もなかったので、全額をローンで支払うことにしました。ここでは仮に、年利4%、元利均等払いの15年ローンを組んだとします。金利を計算すると、15年で支払う総額は約266万3000円になります。1年あたりでは約17万8000円、1カ月あたりでは約1万5000円ということになります。
200万円を年利4%、15年ローンで支払う場合の1カ月あたりの金額
15年間の金利も計算に入れると、トータルでは約266万3000円、1カ月あたりの支払額は約1万5000円になる。季節によらず、毎月コンスタントに1万5000円の実質収益をあげるというのは簡単ではない。
つまり太陽光発電によって削減される電気料金と、売電による実質的な収益が、コンスタントに毎月1万5000円以上になるなら、「実質的に負担ゼロ」で太陽光発電システムを設置できたことになります。
太陽光発電ユーザーの話を聞いていると、一般的な住宅に太陽光発電システムを設置した場合でも、月の収益(買電の削減+売電収益)が1万5000円を超えることは十分にあるようです。ただしこれは条件がよい季節、具体的には春から夏にかけての話で、日差しが弱い冬場などに、1万5000円の収益を上げるのはかなり難しいでしょう。設置場所の日照条件や、ソーラー・パネルの出力、家族の人数や生活パターンなど、さまざまな要因が関連しますから、一概に不可能とはいえませんが、都心郊外の住宅街にあるような一般的な4人家族の戸建て住宅で、太陽光発電による買電の削減と売電によって、年間に18万円近くの実質収益をあげるというのは、簡単ではありません。「実質的に負担ゼロ」で設置できるのは、好条件が重なった場合の、かなり限られたケースの話だと考えるべきです。
(2010/11/24 公開)
2015年3月末をもちまして補助金情報の提供は終了しました。