三洋電機は、セル変換効率を世界最高の21.6%に高めたHIT太陽電池の量産を開始したことを発表しました。HIT太陽電池(→ 用語解説)は、単結晶シリコンを薄膜シリコンでサンドイッチすることで、単結晶シリコン型太陽電池と薄膜型太陽電池の長所を組み合わせ、性能高めた太陽電池セルです。今回発表された新型セルでは、単結晶シリコンと薄膜シリコンの接合部などを改善することで、従来の欧州向け製品「HIT-N235SE10」からセル変換効率を0.5%向上させました(国内向け製品の「HIP-215NKH5」からは2.3%向上)。
この新型セルの採用に加え、太陽電池セル間を接続する配線(この配線をタブといいます)を従来の2本から3本に増したり、ARコートガラス(反射防止膜をコートしたガラス。ガラス表面での太陽光の反射を低減し、高い透過率を実現したガラス)を採用したりすることで、モジュールレベルの変換効率(ソーラー・パネルになった状態の変換効率)でも19.0%を実現したとしています。タブの本数を増やすと、電気的なロスは低減できますが、タブによってセルの受光面積が減るという欠点があります。しかし今回は、1本あたりのタブの幅を細くすることで、受光面積の減少を抑え、高いモジュール変換効率が実現したとのことです。なお19.0%というモジュール変換効率は、米サンパワー社製の「SunPower E19」の19.3%に次いで世界2位になります。
この新型モジュール「HIT-N240SE10」の最大出力は240Wです。現在、日本国内で販売されているソーラー・パネルでは、三洋電機の「HIP-215NKH5」が215Wで最大なので、ほぼ同じ大きさで1枚あたり25Wの出力が向上することになります。たとえば、16枚のソーラー・パネルを設置する場合、従来製品なら3.44kWですが、新製品では3.84kWと0.4kWの最大出力の向上が見込めます。この新型モジュールなら、少ない枚数でも比較的高い出力を実現できるため、都市部の狭小屋根など設置スペースに制約のある住宅に向いているといえるでしょう。
三洋電機では、同セルを採用したソーラー・パネル「HIT太陽電池 Nシリーズ」を2011年2月より欧州で販売を開始するということです。日本国内での販売も順次開始される予定です。なお、価格については現時点では明らかになっていません。
新製品「HIT-N240SE10」と従来製品との比較 | |||
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新製品 | 欧州向け従来製品 | 日本国内向け従来製品 | |
型名 | HIT-N240SE10 | HIT-N235SE10 | HIP-215NKH5 |
公称最大出力 | 240W | 235W | 215W |
外形寸法(W×D×H) | 1580×798×35mm |
1580×812×35mm | |
モジュール変換効率 | 19.0% | 18.6% | 16.8% |
重量 | 15.0kg |
(2010/12/7 公開)
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