太陽生活ニュース

2012年2月23日(木) 11時6分 公開

DMM.com、初期費用8万円で太陽光発電システムが導入可能な「DMMソーラー」の提供開始

[訂正速報]この記事を公開した翌日の2月24日、DMM社から編集部に、DMMソーラーの契約条件を変更したとの連絡がありました。それによれば、発電量シェアの割合を3:7から2:8と契約者の取り分を減らす代わりに、超過分の電気料金の単価は、売電単価(42円/kWh)ではなく、契約者の電気料金単価(24円/kWhなど。夜間電力などを利用している場合はその契約者の昼間の電力単価)が適用されるとのことです。この変更により、契約者の取り分を超えて電気を使っても、本来の電気料金しかかからないため、本記事の説明のように損がでることはなくなりました。今回の変更点の詳細については、以下の記事を参照してください。(2/27 13:30更新)

無店舗型デジタルコンテンツ配信やDVD販売などを行うDMM.comは、太陽光発電システムの設置にかかる利用者の初期費用を大幅に低減する独自に考案した販売モデル「DMMソーラー」の提供を開始した。簡単にいえば、住宅の屋根に設置したソーラー・パネルで発電した電力の70%を、10年間、DMM社に提供することを前提に、初期の設置費用を8万円程度に抑えるというもの。一般的なクレジットによる割賦購入とは異なり、初期費用をクレジット会社から借り入れるわけではない。

DMMソーラーのビジネスモデル

DMMソーラーのビジネスモデル
設置した太陽光発電システムで発電した電気を設置から10年間、3:7でユーザーとDMM社で分配するという契約を前提に、ユーザーの初期費用負担を大幅に圧縮する。(図提供:DMM.com)

DMMソーラーの仕組み

DMMソーラーは、住宅の屋根に設置したソーラー・パネルが発電した総電力量の70%をDMM社に10年間にわたって分配することで、DMM社が設置費用を回収するというもの。具体的には、余剰電力の売電料金をDMM社が指定した口座に振り込まれるように契約し、この口座からDMM社は総発電量の70%相当分を受け取り、残金が生じた場合はユーザーに還元する。売電料金が総発電量の70%相当分に満たない場合は、差額がユーザーに請求されるという形で清算が行われるということだ。この清算は1年に1回で、総発電量はインターネットを経由してDMM社でもモニタするとしている。また契約は10年間で、11年目以降はDMM社への電力を分配する必要はなくなり、実質的に太陽光発電システムを個人所有した状態になる。10年未満で途中解約すると、契約締結日からの年数によって違約金が発生する。

DMM社から見れば、一定以上の発電が期待できる住宅にソーラー・パネルを設置して、その70%の発電量に売電単価を掛け、それを10倍(10年分)した金額が、初期のサービス・コストに見合っていれば利益が出せるというわけだ。

上の図にもあるとおり、DMM社の説明では、「(太陽光発電により)昼間の電気代が安くなる」とある。これはソーラー・パネルが発電する電気の30%を自分で使える(その分の電力消費を節約できる)という意味だ。しかし全発電量の30%を超えて電気を使った場合には、その超過分に対して、通常の電気料金単価(24円/kWh程度)よりも割高な売電単価(42円/kWh)で電気を使うことになるため注意が必要だ。具体的にいえば、共働きの家庭で、子供も学校に行っており、昼間はほとんど不在で電気を使わないという家庭であればよい。けれども専業主婦の家庭や、ペットが屋内にいてエアコンを止められない家庭、そのほか同居の家族(両親を自宅で介護しているなど)がある場合には、昼間の電気代負担が大きくなる危険がある。現時点では問題なかったとしても、契約は向こう10年間継続されるので、将来の生活変化などもよく考える必要がある。

DMMソーラーにおける発電量シェア(例)

たとえば、DMMソーラーを利用して4kW(全国平均の出力)の太陽光発電システムを設置し、年間4000kWhの発電量が得られたとしよう(設置する地方にもよるが、日本でソーラー・パネルを設置した場合、パネル1kWあたり年間1000kWh程度を発電するとされている)。このうち70%である2800kWhがDMM社の取り分、30%の1200kWhが契約者の取り分となる。

年間発電量が4000kWhだった場合の例

年間発電量が4000kWhだった場合の例
全発電量の30%である1200kWhが契約者の取り分、70%である2800kWhがDMM社の取り分となる。


年間の全発電量が4000kWhなので、そのうちの30%である1200kWhが契約者の取り分となる。契約者は、昼間に使った電気をここから賄えるので、その分だけ電気代が安くなる。

一方DMM社の取り分は全体の70%、2800kWhである。DMM社は、これに売電単価(2011年度は42円/kWh)をかけて、年間の金額ベースの取り分を算出する。計算すると、これは11万7600円となる。DMM社の口座に振り込まれた年間の売電額がこれよりも多ければ、その金額がDMM社から契約者に返還され、逆に少なければ契約者がDMM社に支払うことになる。DMM社の取り分が11万7600円になるように、1年に1回清算するというわけだ。契約者は、昼間の消費電力を全発電量の30%以下にして節約すればするほど、多くの金額を払い戻してもらえる。一方、30%を超えて多くの電気を使えば、それだけ多くの金額を清算時にDMM社に支払わなければならない。

売電単価42円/kWhなら、全発電量の70%が損益分岐

このようにDMMソーラーのしくみでは、昼間の消費電力が全発電量の30%を超えると、超過分に対して、通常の電気料金(24円/kWh)よりも高額な売電単価42円を掛け算して、DMM社への支払いが計算される。上の例で、極端な話、全発電量の4000kWhをすべて消費したとすると、DMM社の取り分となる11万7600円を支払わなければならない。ただし本来であれば、4000kWh×24円/kWh=9万6000円の電気代がかかるところ、太陽光発電の電気を使うことで節約できているので、差引の損は11万7600円-9万6000円=2万1600円となる。つまりこの場合は、DMMソーラーを利用したために、年間で2万円強の損が出てしまうということだ。

ここで、契約者視点で見た、DMMソーラーの損益分岐について考えてみよう。DMMソーラーでソーラー・パネルを設置すると、昼は太陽光発電で作った電気を使うので、電力会社から買う電力を減らすことができる。24円/kWh(昼間の電気料金単価)の電気を買わないで済ませられるわけだ。しかし余剰電力の売電単価は42円/kWhである。したがって余らせれば42円/kWhで売れる電気を、24円/kWhで買える電気として使ってしまっているわけだ。つまり太陽光発電で作った電気を使うと、1kWhあたり18円(42円/kWh-24円/kWh)が損になる。

逆に、太陽光発電した電気をまったく使わなかったらどうなるか。契約者の取り分である全量の1200kWhを単価42円/kWhでかけた金額(1200×42=5万400円)をDMM.comから払い戻してもらえる。つまりDMMソーラーの契約者の損益グラフは、次のようになる。

DMMソーラーの契約者の損益グラフ

DMMソーラーの契約者の損益グラフ
年間発電量4000kWh、売電単価42円/kWhの場合。このように損益グラフは、太陽光発電した電気を1kWh消費するごとに18円利益が減る直線になる。


このように縦軸に契約者の損益(円)、横軸に消費した太陽光発電の電気量をとると、損益グラフは1kWh消費するごとに18円利益が減る直線グラフになる。グラフからわかるとおり、損益分岐点は、全発電量の70%を消費した場合だ。消費した太陽光発電の電気が全発電量の70%より少なければDMMソーラーの利用で利益があり、70%以上消費すると損が出る。

設置できるかどうかはDMM社が判断

DMM社によれば、国や都道府県・市区町村から出る補助金を活用することで、サービス契約費用8万円を負担するだけで、太陽光発電システムの設置が可能になるとしている(売電価格や補助金などの条件により変更になる可能性がある)。ただし契約者の条件として、下記の5点を満たすことを挙げている。

  • 発電量(日照量・屋根の形状)がDMM社の規定に達すること
  • 10年間の契約を行うこと
  • 家・建物の所有者であること(または同意を受けていること)
  • インターネットを使える環境が整っていること
  • 補助金制度の利用に同意すること

なお秋田県、青森県、山形県の3県と、離島(北海道、本州、九州、四国、沖縄本島以外)はサービス提供外としている。設置されるソーラー・パネルはグリッド製、施工は横浜環境デザインが担当する。DMMソーラーの申し込み受付は、同社が運営するウェブサイト「DMM.com」とDMMソーラー専用ダイヤルにおいて開始している。初年度の契約目標は1万件とのこと。

《太陽生活ドットコム 小川・小林》

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