「災害時の停電でも電気が使える」「太陽の自然エネルギーを電気に変えて有効活用できる」など、太陽光発電への注目は高まるばかりです。読者のなかにも、実際に太陽光発電システムの設置を検討していて、この記事を見つけたという方がいらっしゃるかもしれません。
太陽光発電システムメーカーのカタログやWebサイトなどを見てみると、「効率が高い」「故障しない」「掃除いらず、手間いらず」「陰に強い」「くもりでもよく発電する」など、消費者をその気にさせたり、安心させたり、自社の強みをアピールしたりする説明があふれています。また太陽光発電システムを販売、設置する業者も、太陽光発電のこうしたメリットをあれやこれやと強調します。
それらのすべてがウソだとはいいませんが、メーカーにしろ設置業者にしろ、システムを販売する立場の人たちですから、まるまる信用できる気もしません。実際のところはどうなのでしょうか。売る側の人たちではなくて、もっと中立な立場な人が、実際にいろいろと試してみた結果が知りたい、そういう人は多いでしょう。
そこでこの「ためしてわかった! 太陽光発電」では、太陽光発電システムの検証施設で実際に編集部がいろいろな実験をやって、その結果を赤裸々に読者のみなさんにレポートしちゃいます。メーカーがいうように、いいことばかりじゃないかもしれませんが、そこはそれ、太陽光発電の1つの現実として受け止めていただければと思います。連載の最初となる今回は、一連のテストを実施する検証施設を紹介します。
今回の検証は、神奈川県藤沢市で電子計測器を開発・販売されている新栄電子計測器(株)が、自社の屋上に開設した「PVテクニカルセンター」をお借りして実施します(PVは「太陽光発電」の意味)。新栄電子は、ソーラー・パネルの発電能力を手軽に検査できる各種機器を開発・販売している会社で、自社製品の検証や販売時の研修などを行う目的でこのセンターを開設されたそうです。
記事にご協力いただく、新栄電子計測器(株)の成勢幸一郎 取締役
現在、PVテクニカルセンターには、京セラ(多結晶型)、ホンダソルテック(CIGS型)、シャープ(多結晶型)、三洋電機(HIT型)という4社の異なるソーラー・パネルを自社の屋上に並べて設置し、これらを切り替えながら、各種の評価を行えるようにしています。
PVテクニカルセンターに設置された各社のソーラー・パネル
PVテクニカルセンターは、「太陽光発電をより詳しく知りたい」「測定方法を知りたい」「測定のノウハウを知りたい」など、顧客からのさまざまなな要望に応える場所として、無料で提供している施設。また、自社の太陽電池テスターを評価する検証施設としても使用しているとのこと。写真右手前から、京セラ、ホンダソルテック、シャープ、三洋電機製の各パネル。写真中央は成勢さん。
PVテクニカルセンターに設置されたソーラー・パネル(その2)
パネルの設置方向は真南。同じ場所に同じ方向、角度でパネルが設置されているため、比較が行いやすい。
これらのソーラー・パネルからの配線は、いったん隣にある室内(計測室)に集約され、その後パワーコンディショナに接続されています。PVテクニカルセンターに設置されている各ソーラー・パネルのメーカーと出力、接続状態は次のようになっています。
PVテクニカルセンターの構成
各社のソーラー・パネルを切り替えながら、「計測点」の部分にテスターを当てて、発電能力などをテストする。
図の一番左にあるのが各社のソーラー・パネルです。それぞれ1kW程度の出力のパネルが設置されていますが、ホンダソルテックはやや少なく(0.75kW)、一番多いのは京セラ製のパネルです(1.488kW)。
ソーラー・パネルの配線は、パネルが配置された屋上のとなりにある計測ルームにまとめられています。図の「計測点」や「スイッチ」というのが計測ルームにあります。具体的には以下のような感じです。
計測ルームでパネルからの出力を計測しているところ
ソーラー・パネルからの配線は、いったん計測ルームの計測点(写真でテスターを当てているボックス)にまとめられている。
計測点
各社のパネルからの配線がここにまとめられており、どのパネルでも簡単に計測できるようになっている。
パネルからの電気をパワーコンディショナに送るかどうかを切り替えるスイッチ
計測しないときは、パネルで発電した電気をパワーコンディショナに送っている。
計測していないときは、スイッチをオンにして、シャープ製のパワーコンディショナに接続し、系統(電力会社の電線)に接続されています。実験などを行っていないときは、こうして電力を売電しているとのことです。
パワーコンディショナ
シャープ製5.5kWのモデルを利用し、実験をしていないときは、余剰電力を売電しているとのこと。
このようにPVテクニカルセンターの特徴は、各社のパネルがほぼ同一条件で設置されており、それらの出力状態を切り替えながら簡単に計測できるところです。太陽光発電の出力は、文字どおりお天気まかせなので、なかなか同一条件では比較ができないということがあります。この点PVテクニカルセンターでは、同じ場所に、同じ方角で、同じ傾斜で設置されているので、ほぼ同一条件での比較が簡単にできるのです。
ソーラー・パネルの出力状態は、新栄電子計測器が販売している太陽電池アレイテスター(下の写真)を使います。前の写真の計測点にテスターを当てるだけで、簡単にソーラー・パネルの各種データを取ることができます。
ソーラー・パネルの状態を検査する太陽電池アレイテスター
新栄電子計測器(株)が開発、販売するソーラー・パネル向け計測器の1つ。素早く簡単に計測できる。
ソーラー・パネルの計測では、パネルからの電気的な出力だけでなく、その時点での日射量(日差しの強さ)や、パネルの温度なども同時に計測する必要があります。太陽電池アレイテスターは、日射計とパネルの温度計を無線でテスターに送信して、パネルからの電気信号の計測と同時に、その時点での日射量や、パネルの温度を計測して、記録することができます。
ソーラー・パネルに取り付けた日射計
パネルからの電気的な信号と同時に、その時点での日射量も計測できる。少々見にくいが、日射計の下に見える配線が、パネル裏の温度センサーにつながっている。
パネルに貼り付けられた温度センサー
温度計をパネルの裏面に貼り付けることで、計測時点のパネルの温度を同時計測できる。
テスターと日射計、温度センサーの概要を図にすると次のようになります。
太陽電池アレイテスターによる計測
パネルの電気特性と同時に、日射量やパネルの温度も同時に記録できる。日射量やパネルの温度のデータは、無線でテスターに送られる。
第1回である今回は、さまざまな太陽光発電システムの実験を行う設備(PVテクニカルセンター)や、計測に使う機器(太陽電池アレイテスター)の概要をご紹介しました。さてさてそれでは、ソーラー・パネルの気になるこんなこと、あんなことをさっそく実験してみようじゃありませんか。
実験の第一弾として、次回は、「ソーラー・パネルの出力、本当にカタログどおりなの?」をお届けする予定です。
PVテクニカルセンター DATA | |
場所 | 神奈川県藤沢市遠藤2636 |
設置ソーラー・パネル | |
京セラ | 多結晶シリコン型(186W×8枚=1.488kW) |
ホンダソルテック | CIGS型(125W×6枚=0.75kW) |
シャープ | 多結晶シリコン型(163W×8枚=1.304kW) |
三洋 | HIT型(205W×5枚=1.025kW) |
その他の機器 | |
パワーコンディショナ | シャープ製(5.5kW) |
発電モニタ | シャープ製 |
(2011/6/7 公開)
2015年3月末をもちまして補助金情報の提供は終了しました。