ヒートポンプと呼ばれるしくみを使い、少ない電気エネルギーで効率的にお湯をわかせるようにしたシステム。ガスを使用しないオール電化住宅(→用語解説)では、このエコキュートを給湯設備として使うのが一般的です。
エコキュートの外観は次のようなものです。このようにエアコンの室外機のような形状をした「ヒートポンプ・ユニット」(写真左)と、わかしたお湯をためておく「貯湯タンク・ユニット」(写真右)の2つで構成されます。エコキュートでは、安価な深夜電力(→用語解説)を利用して、深夜のうちにまとめてお湯をわかし、貯湯タンク・ユニットにためておきます。タンクの容量にもよりますが、貯湯タンク・ユニットはけっこうな大きさになるため、導入には一定の設置スペースが必要になります。
エコキュートの広告などで「空気でお湯をわかす」などと説明されることがあります。少ないエネルギーで効率よくお湯をわかして環境にも優しい、という特徴をうたったものだと思われますが、これだけではなかなかピンときません。そこでここでは、エコキュートがどうやって「空気でお湯をわかす」のか、内部のしくみを簡単に説明します。
次の図は、エコキュートの内部を示したもので、図の左側がヒートポンプ・ユニット、右側が貯湯タンク・ユニットです。エコキュートは、外気から取り込んだ熱をポンプで圧縮してさらに高温にし、この熱を使ってお湯をわかし、貯湯タンクにお湯をためます。この様子を順に説明しましょう。
ヒートポンプ・ユニットが、空気熱交換機を通して外気の熱をヒートポンプ・ユニット内部の冷媒(エコキュートの場合は、CO2(二酸化炭素)ガスを利用しています)に取り込みます。
外気から取り出された「熱」が、ヒートポンプ内のCO2ガスによって運ばれます。
ヒートポンプ内にある圧縮機でCO2を圧縮します。すると、温度が上昇して高温になります(気体は圧縮すると温度が上がり、膨張させると温度が下がるという性質があります)。このとき得られる熱のエネルギーは、ポンプを駆動するのに必要な電気エネルギーの3倍以上になるとされています。つまり電気のエネルギー1に対し、熱のエネルギーが3以上発生するということです。このように、外気が持つ熱を利用してお湯をわかすため、「空気でお湯をわかす」といわれるわけです。また、電気エネルギーを効率よく熱に変えて利用できるため、環境に優しい給湯器などと呼ばれるのです。
圧縮機で高温になったCO2はヒートポンプ内の水熱交換機に送られ、ここで貯湯タンク・ユニットから送られてきた水(常温)に熱が移されます。これにより、水がお湯になります。
お湯をわかして熱を奪われたCO2は、ヒートポンプ内の膨張弁を通して再び空気熱交換機に送られ、再度外気から熱を取り込みます。
ヒートポンプ内の水熱交換機で温められたお湯は、貯湯タンクにたまります。安価な深夜電力が使える深夜のうちにお湯をタンクにためておきます。
貯湯タンクにたまったお湯を使います。貯湯タンクにお湯がなくなった場合でも、給水しながらお湯をわかして使うことも可能です。また、ここでは給湯だけを説明しましたが、エコキュートには浴槽の水を循環させて温め直す「追い炊き」ができる製品もあります。
エコキュートは電気でお湯をわかすので、電気代が高額になってしまうのではないかと心配になりますが、これまでの説明のように非常に効率よく電気エネルギーを熱エネルギーに変換できること、安価な深夜電力(電力会社のメニューにもよりますが、通常の昼間の1/3程度の電気料金)を利用してまとめてお湯をわかせるので、通常は導入前よりも光熱費が下がったという利用者が多いようです。
エコキュート+IHクッキング・ヒーターによるオール電化のメリットとして、「CO2排出が少なく環境に優しい」と宣伝されることがあります。オール電化住宅では火を使いませんから、直接的にはCO2を発生しません。またエコキュートは高効率の給湯器で、効率の低い給湯に比較すれば、環境に優しいのは事実でしょう。ただし、電気を作る際に火力発電などが使われている場合には、発電時にCO2が発生しています。その一方で、ガスを利用する給湯システムも技術改良が進んで効率が向上してきています。このため、オール電化はガスを使うよりCO2の発生が少ない、とは一概にはいえないようです。
(2010/1/20公開)
2015年3月末をもちまして補助金情報の提供は終了しました。