残念なことですが、太陽光発電システムの設置が増えるに従って、そうした事故も増えているのは事実です。
原因はさまざまですが、工事前の調査が不十分で適切な工事ができていなかったり、ずさんな工事や未熟な工事などで屋根を破損してしまったりなどの、いわゆる「施工ミス」によるものが増えているようです。
ひとくちに住宅の屋根といっても、形はさまざまですし、屋根の施工方法や屋根に使われている材料なども多くの種類があります。次は、日本家屋の伝統的な屋根材の1つである瓦の例と、最近の住宅で増えているスレート材の例です。
屋根の上に載せる太陽光発電モジュールの重量は、枚数にもよりますが300~400kgにもなります。特に築年数が経過した既築住宅では、これだけの重量物を屋根の上に載せて耐えられるかどうかを見極め、必要であれば補強工事などを行う必要があります。そしてモジュールの設置では、台風などでもモジュールが飛ばされないようにしっかり屋根に固定しなければなりません。これには、屋根の材質などに応じて、適切な固定用部品と施工方法を選択する必要があります。
通常、太陽光発電システムの設置担当者は、設置するパネルメーカーによる施工研修を受けています。しかし屋根の補強の必要性の判断や、設置する屋根の構造を正しく見極めて適切な工事を実施することや、さまざまな屋根形状や材質に適切に対応することは、けっして簡単ではありません。補助金や余剰電力の高額買い取りなどの施策により、太陽光発電システムの設置工事が急増しており、経験の浅い工事業者などが、不適切な工事を実施して事故が発生するケースがあるようです。
部分的な追加工事で対応できる雨漏りであればよいですが、場合によっては屋根の防水工事を全面的にやり直す必要に迫られる場合もあるでしょう。この場合は設置した発電モジュールを取り外し、屋根の防水工事をやり直し、再度モジュールを設置するという大工事になってしまいます。必然的に多額の追加費用がかかります。
大切なことは、トラブルを未然に防ぐことです。完全な予防法はありませんが、以下のような点に注意する必要があります。
第一の対策は、適切な工事を良心的に実施してもらえる設置工事業者を選ぶこと、万が一雨漏りなどの施工トラブルが発生したときに、きちんと対応してもらえる工事業者を選ぶことにつきます。逆に最も避けなければいけないのは、見積もりがいちばん安かった、などという理由だけで、工事業者のことをあまり調べずに契約してしまうことです。
まずは、実際に工事を担当する業者と直接しっかりとコンタクトをとり、会社の営業年数や規模(資本金や従業員数)、これまでの施工実績数などを確認しましょう。会社の規模が大きいからといって、施工ミスがないとか、トラブル時に誠意ある対応をとってもらえるとは限りませんが、何かあったときに会社がなくなっていた、というようなリスクは小さくなるはずです。この際注意が必要なのは、太陽光発電システムの販売を担当する営業窓口と、設置工事業者が別の会社というケースがあることです。施工するのはあくまで設置工事業者ですから、工事業者が営業窓口とは別の会社のときには、工事業者についてもしっかり確認します。
設置工事業者選びのポイントについては、次の記事が詳しいので参考にしてください。
工事の契約を結ぶ前に、「設置工事のミスが原因でトラブルが発生した場合は、だれの負担で補修するか」という点をあらかじめ確認しておきましょう。この際には口頭での確認だけでなく、文書に記録しておくようにします。
不幸にも雨漏りが発生してしまったら、工事業者に連絡して適切な補修をしてもらいます。業者がきちんと対応してくれないなど、紛争になった場合には、次の住宅リフォーム・紛争処理支援センターが無料で相談に乗ってくれます。
(2010/1/12 公開)
2015年3月末をもちまして補助金情報の提供は終了しました。