展示されている太陽光発電パネルなどを見ると、15cm×15cm程度の四角形の板が並べられていることがわかります(結晶系パネルの場合。CIS太陽電池やCIGS太陽電池の場合は、パネル全体が1枚に見えます)。この1枚の板はセル(→用語解説)と呼ばれます。種類が異なるパネルを見比べてみると、このセルが完全な四角形の場合と、四隅が欠けた八角形の2種類があることに気付きます。以下のような違いです。
四角形のセルの例
(写真提供:三菱電気)
四隅が欠けたセルの例
(写真提供:三洋電機)
四角形のものはよいとして、四隅を少しだけ切り取って八角形にしている理由は気になりますね。結論からいえば、これは本来丸い形をしたものを効率よくパネルに並べるために、正方形に近い形状になるように切ったためです。このようにしたほうがセルとセルの間のすき間を小さくして並べられるからです。
これらの違いの背景を知るには、セルがどうやって作られているかを知る必要があります。太陽電池セルの元となるウエハは、シリコンと呼ばれる原料をいったん溶かして、結晶化して固めた塊(インゴットと呼ばれます)を15cm×15cm程度に切り出し、薄くスライスしたものです。製造過程のおおまかな流れは、用語解説の「太陽電池」(→用語解説)を参照してください。
シリコン・インゴットの製造方法は、単結晶型と多結晶型のどちらを作るかでまったく異なります。このうち後者の多結晶シリコン・インゴットについては、別稿の「写真で見る:多結晶シリコンウエハができるまで」にて写真入りで詳しく説明しているので参照してください。このように多結晶シリコンのインゴットは、元々直方体なので、ウエハ(セルの前段階)も真四角になります。写真の「四角いセルの例」は、この多結晶シリコン・インゴットから作ったセルです。パネルに四角いセルが並んでいたら、それは多結晶型のセルだと考えてよいでしょう。
一方、単結晶シリコン・インゴットは、溶かしたシリコンからゆっくり回転させ、引き上げながら結晶化を進めて作るので、円柱状の形をしています。以下の写真は、単結晶のシリコン・インゴットを引き上げているところです。
単結晶シリコン・インゴット
単結晶シリコン・インゴットは円柱状の形状をしている。
(写真提供:Siltronic AG|Photo credit:Siltronic AG)
写真は大口径のシリコンチップ用のインゴットですが、単結晶型の太陽電池セルは、これより口径の小さなインゴットを作り、それを薄くスライスして作ります。丸いままスライスしてウエハ(セル)を作ることも可能ですが、丸い形状のままだと、最終的に複数のセルをパネルに並べるときに下図の上側のように大きなすき間ができてしまいます。いうまでもなく、隙間の部分(図のオレンジ色の部分)は発電しませんから、これではモジュールの面積あたりの発電効率が低下してしまいます。
丸いインゴットの周囲を切り取って、完全な四角形のウエハ(セル)を作ることもできますが、それではインゴットから取り出せるセルの面積が小さくなってしまいます。丸いインゴットからできるだけ面積の大きいウエハを切り取りながら、パネルに並べたときにも無駄なすき間が可能なかぎり小さくなるようにするために、四隅を切り取った八角形になったというわけです。図の下側は、四隅を切り取った八角形のセルを並べた様子を示しています。明らかにオレンジ色のすき間が小さくなっていることが分かります。
丸いウエハを並べた場合(上)と八角形のウエハを並べた場合(下)
丸いウエハを並べると、隙間が大きく開いてしまう。八角形のウエハなら、隙間を小さくして並べられる。
(2010/4/13 公開)
2015年3月末をもちまして補助金情報の提供は終了しました。