住宅取得時に太陽光発電システムを設置して、補助金と住宅ローン減税の両方を受けるとき、条件によって問題が生じる場合があります。ここでは、平成22年度の国の補助金(平成22年度住宅用太陽光発電導入支援対策費補助金)を前提にして説明します。
具体的な問題は「国の助成を二重に受益できない」という原則に抵触するケースがあることです。住宅ローン減税は、住宅取得者の税負担を一定期間軽減して、住宅取得を促すという国の助成政策です。一方の太陽光発電システムの設置時に受給できる補助金(以下、単に「補助金」と略します)も国の助成制度です。住宅ローン減税と補助金の両方を受けることは可能ですが、両者が「二重の受益」になってしまうケースはどちらか一方しか受けられません。わかりにくいので、具体的な例を使って説明しましょう。
たとえばいま、新築住宅を購入して、購入時に太陽光発電システムも設置するとしましょう。住宅のみの取得価格は3700万円、太陽光発電システムの設置費用は300万円(最大出力は5kWだとします)で、取得費用は全部で4000万円でした。自己資金(頭金)が400万円あったので、残りの3600万円を住宅ローンで借り入れました。今回は5kWの太陽光発電システムを設置したので、5kW分の国の補助金(7万円×5kW=35万円)を申請して受け取りました。また3600万円の住宅ローンに対して、住宅ローン減税の申告をしました。
この場合、住宅の購入金額全体(4000万円)から住宅ローン減税申告額(3600万円)を引いた残りの金額(400万円)が、太陽光発電システムの設置費用(300万円)よりも多いので、特に問題はありません。お金に色はついていないのでわかりにくいところですが、計算上は、自己資金(400万円)で太陽光発電システム(300万円)を設置して、不足する3600万円分を住宅ローンにしたと考えられますから、行政助成の二重受益にはなりません。住宅ローン減税も、補助金も、両方とも問題なく助成を受けることができます。なおここでは自己資金と説明しましたが、自己資金でなくても、住宅ローン減税対象外の別のローン(ソーラー・ローンなど)であれば同様に問題になりません。
問題のないケース
住宅の購入金額全体(4000万円)から住宅ローン減税申告額(3600万円)を引いた残りの金額(400万円)が、太陽光発電システムの設置費用(300万円)よりも多いので、問題なく住宅ローン減税と補助金の両方の助成を受けられる。
それでは次に、問題になるケースを見てみましょう。ほかの条件は前の例と同じとして、自己資金だけが400万円ではなく、200万円だった場合を考えてみます。当然ながら、住宅の取得費用は全部で4000万円ですから、この場合は不足する3800万円のローンを組むことになります。図にすると次のようになります。
行政助成の「二重受益」になってしまうケース
自己資金は200万円しかないので、住宅ローン減税を受けるローンの一部(100万円分)が、太陽光発電システムの購入にあてられることになる。これが二重受益になってしまう。
この場合、自己資金は200万円しかないので、太陽光発電システムの設置費用の一部(100万円分)は、住宅ローンで借り入れたお金が当てられたことになります。このケースで住宅ローン減税と補助金の双方の助成を受けようとすると、100万円分が助成の二重受益になってしまいます。つまり、住宅ローン減税という助成を受けるお金の一部が、太陽光発電システムの購入に当てられており、こちらでも補助金を受け取っている、ということです。通常は住宅ローン減税で受ける受益のほうが大きいので、3800万円分の住宅ローン減税を受けたければ、補助金のほうをあきらめることになるでしょう。意図的かどうかは別にして、このような二重受益が後から発覚した場合には、補助金の返還が求められたり、罰金が科せられたりする可能性があります。
上のようなケースで、住宅ローン減税と補助金の双方の助成を両方とも受ける方法はないのでしょうか? 方法はあります。具体的には、住宅ローン減税の申告金額を減らして、二重受益の状態を解消すればいいのです。前出のケースなら、住宅ローン減税の申告金額を3700万円にすれば、問題を回避できます。
二重受益を回避する方法
住宅ローンの一部、100万円分が二重受益になってしまうので、住宅ローン減税の申告金額(住宅取得価格)を100万円減らして3700万円にすれば問題を回避できる。
自己資金が少なく、住宅ローン(3800万円)の一部(100万円分)が太陽光発電システムの設置費用に当てられるのが二重受益になるのですから、この分を減らして(3700万円を住宅取得価格として)住宅ローン減税の申告をすれば、問題を回避できます。
この場合、補助金は受け取れますが、当然ながら、住宅ローン減税で受けられる利益のほうは減ることになります。したがって対策にあたっては、申告額を減らしてでも減税と補助金の双方を受け取るほうが有利なのかどうか、しっかり検討する必要があります。不明な点があるときには、管轄の税務署に確認するようにしてください。
[取材協力]
杉山会計事務所 杉山靖彦 税理士
http://www.ysk.gr.jp/
(2010/7/16 公開)
2015年3月末をもちまして補助金情報の提供は終了しました。