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2011年度の余剰電力の買取価格は6円安の42円/kWhに

経済産業省において、太陽光発電促進付加金(「太陽光サーチャージ」→ 用語解説)などについて審議している委員会(総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会・電気事業分科会買取制度小委員会)は、2011年1月25日に開催された第13回の審議会において、現在、48円/kWhで買い取りを行っている余剰電力の買取価格を、2011年度からは42円/kWhに引き下げる案を提示しました。これはまだ最終決定ではありませんが、ほぼこの条件で決まるものと思われます。

買取価格が引き下げられる理由として小委員会は、住宅用太陽光発電の設置件数が余剰電力の買取制度開始(2009年11月1日)以降に増加傾向にあることや、システムの平均価格が2011年12月の時点で56.1万円/kWと、1年前に比べて約5万円/kW値下がりしていることなどを挙げています。余剰電力の買取価格を42円/kWhに設定しても、モデルケースの試算では12年程度で回収可能であることから、制度設計時の「投資回収期間のめどは10~15年程度」という点とも整合性があるとしています(試算の詳細は後述)。

余剰電力の買取制度は、売電契約時の買取価格がその後10年間維持されます。ですから、すでに太陽光発電を開始している人は、2011年度から42円/kWhに引き下げられても、引き続き当初の48円/kWhで売電できます。一方、2011年度から新たに太陽光発電を開始した場合は、向こう10年間の売電単価は42円/kWhになります。

今回公表されたモデルケース

今回の審議会では、買取価格を42円/kWhにしたほか、各種の条件を現在の状況に合わせて変更したモデルケースが提示されました。非常に興味深い数字が入っていますので、ここで紹介しましょう。

2009、2010年度の試算モデル(以前の試算モデル)

同様の試算モデルは、以前にも提示されていました。今回の新しいモデルをご紹介する前に、以前(現行)のモデルを紹介しておきましょう。新旧の試算を比較することで、違いがよりはっきりするはずです。以下が2009年度、2010年度で考えられていたモデルです(新築の場合)。太陽光発電システムの出力は3.5kW、余剰電力の売電収入は10年で100万円とされ、10年で13万円の利益が出ると想定していました。

2009、2010年度の試算モデル(新築住宅に3.5kWのソーラーパネルを搭載した場合)

2009、2010年度の試算モデル(新築住宅に3.5kWのソーラーパネルを搭載した場合)
*1 太陽光発電システム導入のための支出金額は、平成21年1~3月に受理した補助金申請実績に基づく試算。システムのキロワット単価は約53万円として試算。システム設置にかかる金利、メンテナンス費用、設置後の修繕費などは考慮していない。
*2 補助金:1kWあたり7万円+住宅ローン減税(約19万円)。
*3 グリーン電力価値売却収入(自家消費分)については、1kWhあたり約5円として試算。証書発行事業者との個別契約などが別途必要。自治体補助の有無は自治体により異なるが、支援措置を講じている自治体(都道府県・市町村レベル)の補助額平均は1kW当たり約3.8万円(平成20年度)。
*4 売電比率:平均6割、発電効率:約12%として試算。


2011年度(今回)の試算モデル

今回提示された2011年度の試算モデルは次のとおりです。

2011年度の試算モデル(新築住宅に4kWのソーラーパネルを搭載した場合)

2011年度の試算モデル(新築住宅に4kWのソーラーパネルを搭載した場合)
*1 直近の補助金交付実績から試算。システムのキロワット単価は50万円と試算。システム設置にかかる金利、メンテナンス費用、設置後の修繕費などは考慮していない。
*2 補助金:1kWあたり4.8万円と仮定。
*3 自治体の2010年度平均補助金額、4万円/kWから算出。
*4 売電比率:平均6割、発電効率:約12%として試算。


結論からみれば、設置して10年では20万円ほど回収に足りず、これを回収するのにあと2年必要だということです。どうしてこうなるのか、以前の試算との違いを詳しく見てみましょう。

まずは太陽光発電システムの設置価格が、185万円から200万円と増えています。システムのキロワット単価は以前の53万円から50万円と低下していますが、搭載量が3.5kWから4.0kWと増えているため、総額が増加しています。

次に国の補助制度です。以前のモデルでは、家を新築することによる住宅ローン減税を含めていましたが、今回のモデルからはなくなっています。また補助金の単価が、現在の7万円/kWから4.8万円/kWと削減されています。

以前の試算では、グリーン電力価値(→用語解説)が計算に入っていましたが、今回のモデルからはなくなりました。残念ながら、グリーン電力価値を有効利用している人は少ないのが実情です。都道府県、市区町村からの補助は、2010年度の平均を計算し、キロワットあたり4万円が使われています。

今回の新しい試算では、10年間での電気料金の節約が、35万円→40万円と増えています。これは発電した電気の平均4割を自家で使用したとして、その電気料金を計算したものです。試算モデルの太陽光発電システムの搭載量が3.5kWから4.0kWと増えているため、単純に4割を使用するとしてしまうと、結果的に電気料金の節約分が増えることになります。2009、2010年度の試算モデルと同じ量の電気を使用すると仮定すれば、電気料金の節約分は35万円と減りますが、その分売電量は増えます。

以前のモデルには住宅ローン減税やグリーン電力価値などが入っていますから、単純には比較できませんが、結果は13万円の利益から20万円の不足ということですから、モデル上はかなり不利になったという印象を受けます。

場所にもよりますが、4kWのソーラーパネルを設置すれば、年間で3500kWh程度発電できます。試算では6割を売電するということですから、このケースでは年間で3500kWh×0.6=2100kWhを売電します。売電単価が48円/kWhなら2100kWh×48円/kWh=10万800円、一方単価が42円/kWhなら2100kWh×42円/kWh=8万8200円ですから、その差は1万2600円。10年間では10倍の12万6000円の差になります。小さくない金額でしょう。

2011年度から国からの補助金は4.8万円/kWに削減で調整中?

前述したとおり、今回の試算モデルでは、国の補助金が4.8万円/kWと、現在の7万円/kWから削減されていました。経済産業省から公開されている資料(関連リンクの「資料2 平成23年度の太陽光発電促進付加金単価及び太陽光発電買取価格等について」の10ページ目)にも試算モデルの注釈として、「平成23年度以降、これまでの7.0万円/kWから4.8万円/kWに引き下げ予定」と記述されています。まだ大きくは報道されていませんが、どうやら経済産業省では、この方向で調整を進めているようです。

仮に4kWのシステムだとすれば、現行制度では4kW×7万円=28万円の補助金がもらえるところが、4kW×4.8万円=19万2000円と、8万8000円の減額になります。普及にともなって太陽光発電システムの価格は低下傾向とはいえ、この差は小さくありません。

ここまで読んだ読者の中には、「そういうことなら何としても今年度(2010年度)内の条件で設置したい」と思った方がいるでしょう。すでに設置を具体的に検討しているなら、今年度内に設置したほうが、補助金にしても、売電単価にしても有利です。今年度末に向けた駆け込み需要が大幅に増えると思われますから、ソーラーパネルの供給状況や、設置工事業者のスケジュールなどによっては、希望のメーカー製品の設置が困難になったり、期限までの設置が難しくなったりするかもしれません。設置をお考えの方は、早めに行動されたほうがよいでしょう。

(2011/1/27 公開)

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