2011年12月4日から7日の3日間にわたり、千葉県幕張市の国際展示場(幕張メッセ)において太陽光発電システムに関する総合イベント「PVJapan 2011」が開催されました。当初、7月27日からの開催を予定していたものの、東日本大震災ならびに夏期の電力需給逼迫を考慮し日程が変更されたものです。
8月26日に日本でも非住宅向けの全量買取制度(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)が成立し、2012年7月から施行されることから、多くのパネル・メーカーが公共・産業用モジュールを展示、多くの来場者(施工業者やハウスメーカーなど)の関心を集めていました。また住宅用としては、建材一体型モジュールや外観を重視したモジュールなどの展示が目立ちました。ここでは主に住宅向けの製品やサービスを中心にPVJapan 2011の様子を紹介します(以下、メーカーの紹介順は社名の五十音順です)。
カナディアンソーラーは、セルの裏側に配線を行うバックコンタクト(→用語解説)方式を採用した産業・住宅用の「ELPS Module」を国内で初公開しました。バックコンタクト方式を採用することで、集光率を3%、発電量を6.3%高め、モジュール変換効率16.2%を実現しているとのことです。グリッド線は単純な横線ではなく、幾何学模様のきれいな配線となっているのが特徴です。ELPS Moduleは、まず産業向けとして提供され、その後、2012年中ごろまでに住宅向けとしての提供が開始されるということです。
カナディアンソーラーのブースには、ソーラー・パネルの背面にインバーターを内蔵し、直接交流出力が可能な「CommercialAC」が展示されており、多くの来場者が関心を集めていました。交流で直接出力されるため、パワーコンディショナが不要となり、施工も容易になるということでした。ただし、このソーラー・パネルは産業向けの製品になるということです。
またカナディアンソーラーは、パワーコンディショナのラインアップとして、初の屋外設置可能な「Z50-30ST2-JCS」を発表しました。パワーコンディショナには接続箱と昇圧器も内蔵しており、定格出力は3.0kWです。屋外設置可能型が追加されたことで、屋内にパワーコンディショナーの設置スペースがない場合でも対応できるようになりました。
京セラは、8月末と10月末にそれぞれ発表した屋根材一体型のソーラー・パネル「ヘイバーン」と台形と長方形のパネルをランアップした「エコノルーツ アドバンス」を展示していました。京セラというと、横長のソーラー・パネル「SAMRAI(サムライ)」が有名ですが、残念ながら今回は展示されていませんでした。
このほか、最大公称出力325Wの産業向けの大型パネルを展示されていました。メガソーラーなどでは設置枚数を少なくでき、施工コストの削減が可能になるということです。
これまでこうしたイベントでは、住宅用を中心に展示していたサンテックパワーですが、今回は公共・産業向けが目立つものとなっていました。産業用として、最大公称出力235Wと285Wの多結晶シリコン型のソーラー・パネルを2種類発表しました。
シャープは、バックコンタクト方式を採用したソーラー・パネル「ブラックソーラー」を中心に展示していました。モジュール変換効率16.5%という高い変換効率を実現しています。また賃貸アパートや産業用として、薄膜シリコン型のモジュールを展示していました。薄膜シリコン型は、変換効率が単結晶/多結晶型と比べて劣るものの、パネルの価格が安価なこと、温度が高くても発電量があまり低下しないことなどから、比較的大規模な発電設備に向いているということです。
このほか、コンセントに電力の計測機能を持つタップをはさむことで、簡単に電力の「見える化」を実現できるソリューションが提案されていました。タップは、無線で中継器にデータを送信し、中継器でデータを集約、タプレット端末や液晶テレビで電力使用量などを見える化できるということです。エアコンや冷蔵庫などの電力消費の大きな機器のコンセントにタップをはさむだけなので、設置が容易であるというメリットがあります。太陽光発電システムの発電量も併せて計測できるとのことでした。
ソーラーフロンティアは、現行の「SF150-K/SF145-K」と2012年発売予定の「SFL90-C/SFL90-RT-C」を展示していました。変換効率に対して、実発電量が多いことを説明するパネルなど、実績をアピールする内容となっていました。
長州産業は、モジュール変換効率15.1%、最大公称出力を223Wを実現した単結晶シリコン型モジュール「CS-223B13」を新製品として展示していました。また、建材一体型モジュール「CS-451E11/CS-55E11」を参考出品していました。
パナソニックは、HIT型と多結晶型のソーラー・パネルを展示していました。パナソニックというと、子会社の三洋電機が製造しているHIT型ソーラー・パネルというイメージがありますが、実は多結晶型の多結晶154シリーズも販売しています(多結晶型は他社からOEM提供を受けたものですが)。
これらのソーラー・パネルを屋根の野地板に直接取り付けられる「野地ピタFタイプ」を提案していました。多結晶型の多結晶154シリーズを約3kW分設置する場合、平板陶器瓦に対して、平板陶器瓦+野地ピタFタイプで屋根の重量を535kg軽減でき、耐震性が向上できるということです。野地板に直接取り付けるということで、新築または屋根のリフォーム時に設置することになりそうです。
ホンダソルテックは、モジュール変換効率13.5%を実現した新型CIGS薄膜太陽電池を展示していました。新しいモジュール封止構造を採用し、非発電面積を小さくするなどして、モジュール変換効率を向上しています。このモジュールは、2011年1月に「モジュール変換効率13.0以上で、2011年中に発売予定」としていたものですが、改良を加え変換効率を向上させることを優先したため、販売開始は2012年になるとのこと。
また、最大公称出力を現行モデルの130Wから140Wに向上させた「140W太陽電池モジュール」も展示していました。設計を見直して、非発電面積を小さくすることで、出力向上を実現したと説明しています。
東芝は、瓦の代わりに屋根に直接ソーラー・パネルの設置ができる「発電する屋根材」を展示していました。建材一体型のパネルとは異なり、アルミと強化ガラスでできた屋根材そのものとなっています。屋根全体がソーラー・パネルとなるため、建物との一体感もあり、デザイン性が高いのが特長ということです。現在、いくつかの住宅メーカーと提供について話し合っており、2012年中には販売できると述べていました。
三菱電機は、デザインを重視した「フルブラック単結晶モジュール」を初めて公開しました。ソーラー・パネルは、通常、白いバックシートの上にセルが並べられることから、セルとセルの間や単結晶型パネルの場合はセルの欠けた四隅が白くなり、ソーラー・パネルが屋根に載っていることが目立ってしまいます。フルブラック単結晶モジュールは、黒いバックシートを採用することで、歴史的に古い町並みが保存されている景観保護地区などでも屋根に載せることが可能なデザインとなったということです。
通常、バックシートを黒くしてしまうと、シートからの太陽光の反射がほとんどなくなり、変換効率が下がってしまいます。そこで、三菱電機ではセルの選別を行い、フルブラック単結晶モジュールでも、同社の単結晶無鉛はんだ太陽電池モジュールと同程度の公称最大出力200Wを確保できるようにしたということです。
YOCASOLは、2011年9月に販売を開始した住宅用の「PFQシリーズ」とともに、このソーラー・パネルを載せたカーポートの展示を行っていました。屋根に加えてカーポートにソーラー・パネルを載せることで、発電容量を増やすことが可能になるなど、カーポートの活用に注目が集まっています。YOCASOLでは、ソーラー・パネルのバックシートに透過シートを採用した明るいカーポートが提案されていました。YOCASOLでは、今後、国内の住宅用の販売も強化していくと述べていました。
総合燃料商社シナネンの子会社「太陽光サポートセンター」が、住宅用太陽光発電システムのメンテナンス・サービスを紹介していました。毎月の発電量を同社のWebサイトで記録することで、近隣のサービス契約者との発電量を比較、発電量に異常があった場合は施工業者に連絡するなどする「ソーラードクター」、太陽光発電に関する相談に答える「コールセンター・サービス」、設置後の1年目/5年目/9年目に点検とパネルの表面洗浄(シャボン玉石けんによる洗浄)を行う「点検サービス」を提供するということです。
メーカーの保証は10年以上あるため、設置時にこのサービスの契約を行うことで、不具合が見つかった場合、メーカーに無料で修理させてもらうことができます。保守契約料は7万3500円(10年分の一括払い)。施工業者/販売業者向けに提供を行うということですが、個人でも契約可能ということです。点検やメンテナンスなどに不安があるような場合は、このサービスの利用を検討してみるとよいでしょう。
(2011/12/20 更新)
2015年3月末をもちまして補助金情報の提供は終了しました。