2013年7月24日から26日の3日間にわたり、東京ビックサイト(東京国際展示場)において太陽光発電システムに関する総合イベント「PVJapan 2013」が開催されました。東日本大震災の影響で、2011年と2012年は12月に開催されていましたが、2013年度はそれまでと同様、7月末での開催となりました。
ソーラー・パネル・メーカーは、全体としてこじんまりした展示内容で、特に住宅用のソーラー・パネルの出展が2012年度に比べて少なくなっていました。再生可能エネルギーの固定価格買取制度が2012年7月に開始されて以来、業界の関心は住宅用よりも産業用に集まっているといってよいでしょう。
ここではPVJapan 2013の各社出展内容から新製品や、これから発売される予定の参考出品を中心に紹介します。
米国サンパワー社製のソーラー・パネルを国内住宅向けに販売してきた東芝ですが、2012年6月からは、サンパワー社製ではない、単結晶型セルを採用した廉価版の「住宅用太陽電池モジュール200W」を展開しています。今回、PVJapan 2013に合わせるように、同パネルの後継の標準タイプや正方形タイプ、台形タイプなどの製品を追加、新たに「Vシリーズ」として展開を開始しました。
これまでは標準タイプのみで、高変換効率のサンパワー社製「250W太陽電池モジュール」の影に隠れていたVシリーズですが、今後は狭い屋根には変換効率が高いサンパワー製、コストパフォーマンスを重視する人にはVシリーズと、2つのラインアップで推進していくということでした。また今回、正方形タイプや台形タイプなど、多彩な形状をラインアップすることで、寄棟屋根(→ 用語解説)などでも多くのソーラー・パネルが設置できるようになったとしています。
東芝のVシリーズは、いわば国内市場の売れ筋ラインであり、京セラやシャープ、三菱電機などの多くのベンダと競合する製品でもあります。コストパフォーマンス重視でパネルを選択したいユーザーは覚えておきましょう。
毎年のように新製品を出展しているカナディアンソーラーですが、今回もELPSシリーズに公称最大出力を高めた「CS6V-225MM(標準タイプ:225W)」と「CS6VH-110MMを(正方形タイプ:110W)」を追加するということです。出荷時期は9月以降を予定しているとのこと。
自社でシリコンからソーラー・パネルまでの一貫生産体制を構築した長州産業は、選別品(出力の高いセルのみを選んだもの)ながら、1枚で公称最大出力320.6Wを誇るパネルを展示していました。残念ながら歩留まりなどの問題から「あくまでも参考出品」であり、製品化の予定はないとのこと。ただ年々セルの出力は向上しているということで、現行品の公称最大出力260Wの「CS-260C11」の後継モデルとなる「CS-270C21」は出力270Wを実現しており、近々出荷を開始するということです。
住宅用としては、ブラックレーベルWdbシリーズの標準タイプと正方形タイプ、新製品のスリムタイプの3モデルを展示していました。変換効率が若干高いサンクリスタルWdシリーズ(フレームやバックシートが白色)もありますが、スリムタイプについてはブラックレーベルWdbシリーズのみの展開になります。ブラックレーベルWdbの方が、屋根との一体感があるデザインで人気が高いためということです。
また、販売開始を発表したばかりのNEC製のクラウド型HEMS・蓄電システムも展示されていました。蓄電システムについては、今後、NEC製以外も含めてラインアップを拡充する可能性があるとしていました。
HEMSについては国からの補助金が支給されるほか、神奈川県などのように太陽光発電システムだけでなくHEMSの同時設置が補助金支給の条件となっている自治体もあります。そのためか、太陽光発電システム+HEMS(+蓄電池)の提供を開始しているベンダが増えてきています。今後、太陽光発電システムの設置をきっかけとしてHEMSも導入し、家庭内のエネルギー管理を行う、というのがひとつのトレンドになるかもしれません。
三菱電機は、台形タイプや正方形タイプなど、標準タイプ以外をラインアップに加え、幅広い屋根形状に対応してきました。今年になって各社がラインアップに加えているスリムタイプを2012年4月にいち早く投入したのも三菱電機でした。
三菱電機の標準タイプの幅はセル5枚分、スリムタイプはセル4枚分となっています。三菱電機によれば、両者を組み合わせることで柔軟な幅への対応が可能になるとしています。たとえば、セル17枚分の幅の屋根の場合、通常は標準タイプを3列設置して、セル2枚分は設置できない領域となります。これに対し、標準タイプとスリムタイプを組み合わせると、標準タイプを1列、スリムタイプを3列とすることで、17枚分の幅すべてにソーラー・パネルの設置が可能になるわけです。このように標準タイプとスリムタイプを組み合わせることで、屋根の幅に合わせて隙間なくソーラー・パネルの設置が可能になります。
産業用には、単結晶シリコン型セルを2つに分割して変換効率を高めたパネルを出荷していましたが、住宅用への投入は当面ないということです。国からの補助金で施工費用を含むシステム価格の上限が制限されているため、高付加価値製品を投入するよりも、コストパフォーマンスが求められているためとの説明でした。
PV EXPO 2013でも展示した単結晶シリコンと薄膜シリコンを組み合わせた「ヘテロジャンクション・バックコンタクト構造」(パナソニックにHIT太陽電池に似た構造)のセルを展示していました。HIT太陽電池では、単結晶シリコン型セルの上下に薄膜シリコン層を形成し、透明電極を用いる構造を採用していますが、シャープの製品では、バックコンタクト構造を採用するということです。また展示の説明では、薄膜シリコン層は単結晶シリコンの下側のみに形成しているような説明になっていましたが、実際には下側か両面かについては特許の関係から明らかにしていないだけということでした。セル変換効率は24.2%と高い効率を誇っています。現在、製品化に向けた研究・開発も進めており、数年内に製品化したいということでした。
無線LANを利用して、タプレットやPCのブラウザで情報を表示可能とする無線LAN表示用計測ユニット「KP-WL」を参考出品していました。近々、OEM(相手先ブランド)での出荷を開始するということです。
(2013/8/8 公開)
2015年3月末をもちまして補助金情報の提供は終了しました。