太陽光発電システムを設置した当初は、うれしくて毎日のように発電モニタを眺めていたけど、しばらくしたらあまりチェックしなくなった。「ソーラー・パネルは故障知らずのメンテ不要」だというし、特に気にしなくても毎日ちゃんと発電しているみたいだから大丈夫……。
運よく何のトラブルもなければ、これでも問題はないでしょう。けれど万一トラブルが起こると、気づかぬうちに発電量が減って、何カ月も何年も損を続けたりするかもしれません。別稿の「ソーラー・パネルだって故障や不具合が起こります!」でご紹介したとおり、現実には、「故障知らず」といわれるソーラー・パネルでも少なからず故障が起こっています。
太陽光発電システムの異常を早期に知るには、毎月の発電量を記録して、変化を早めにキャッチすることです。とはいえ、発電量を記録した数字の羅列から、素人であるユーザーが的確に異常を見つけるのはそう簡単ではないでしょう。
そんなときに頼りになるサービスを行っている団体があります。それが今回ご紹介する「太陽光発電所ネットワーク」です。これは全国の太陽光発電システムのユーザーで構成されるNPO法人(特定非営利活動法人)で、設置したシステムに問題がないかチェックできる健康診断や、太陽光発電ユーザー同士の情報交換など、積極的に活動されています。英語名はPV Owner Netrowork, Japan(PVは“photovoltaic power generation”=「太陽光発電」の略)で、略してPV-Netと呼ばれています。今回は、PV-Netの事務局長である都筑(つづく)さんにお話をうかがいました。
PV-Netは、2003年5月に発足した団体で、現在はNPO法人として活動しています。会員数は全国約2300名。経験豊富な太陽光発電の大先輩たちから、最近になって太陽光発電を始めた初心者までが全国から参加しています。
PV-Netでは、太陽光発電システムを設置した住宅を「太陽光発電所」、そのオーナーを「発電所所長」と呼んでいます。入会金3000円で会員になることが可能で、次年度からは年会費3000円です(初年度は入会金のみ)。これで、Webからアクセスできる太陽光発電システムの健康診断サービスや、太陽光発電に関するさまざまな疑問に答えてもらえる相談窓口の利用、全国各地で開催されるユーザー同士の交流会などへの参加ができるようになります。また、年に3~4回程度発行される会報「PV-Net News」(写真)が送付されます。この会報には、太陽光発電をとりまく最新の動向や、PV-Netのさまざまな活動報告などが掲載されています。
PV-Netの大きな特徴は、ユーザー同士が自主的に参加して相互に情報交換したり、情報発信したりしているということです。急速に普及が進んだことから、インターネットなどを検索すれば、太陽光発電に関するさまざまな情報を見つけられるようになりました。しかしそれらの多くは、太陽光発電システム・メーカーが発信する情報や、設置工事業者が発信する情報です。これらも役に立ちますが、メーカーや工事業者は、あくまで「売る立場」で情報を発信しています。これに対しPV-Netは、あくまでもユーザー(消費者)の視点に立った情報発信、情報交換を行っています。前出のPV-Netのホームページにある「よくある質問-先輩発電所長からのアドバイス」を読めばわかりますが、聞こえのいいことばかりでなく、欠点や注意点などについても率直に説明してくれています。ユーザーにとっては心強い味方といえるでしょう。
PV-Netに参加する最大の利点は、設置したソーラー・パネルが問題など起こさず、順調に発電を続けているのかを診断してくれる「PV健康診断」を受けられることです。太陽光発電の発電量は天候に左右されるために、発電の大小だけから故障を見つけるのは難しいのですが、PV健康診断ならこれが容易になります。
具体的にPV健康診断では、ソーラー・パネルの設置条件と日射観測データから、期待できる推定発電量を算出し、これを実際の発電量と比較します。ソーラー・パネルに何らかの故障・不具合が起きて発電量が減れば、推定発電量と実際の発電量の差が大きくなるはずです。この差は「かい離度」と呼ばれ、かい離度が±10%程度であれば、おおむね健康と診断されます。一方、これ以上かい離度が大きい状態が継続したり、時間の経過とともにかい離度が増えていったりするようなら、故障の疑いが強くなるというわけです。毎月の発電量を入力するだけですから手間はかかりませんし、月単位で診断結果がわかるので、何か起こったら早期に発見できます。データの入力や診断結果の参照は、Webの会員専用ページから簡単にできます。
残念ながら、さまざまな理由から、PV健康診断が元にしている気象データの観測所が削減されているそうです。「簡単ではありませんが、不足する日照データについては、PV-Netで何とか収集することも考えています」と都筑さん。
ソーラー・パネルの故障・不具合が疑われる場合は、設置工事業者やメーカーに連絡して対応してもらうことになりますが、この際にもPV健康診断の診断結果があれば、スムースに対応してもらえるでしょう。
太陽光発電システムは高価な買い物ですが、長期間しっかり発電して、節電にも努めれば、元をとることはもちろん、その先は利益も出せます。しかしその大前提は、太陽光発電システムが正常にしっかり発電し続けてくれること。そのために、PV-NetのPV健康診断は本当に心強いサービスです。
なお、会報や地域交流会などを通じた会員同士のコミュニケーションも大きな魅力ですが、地域活動を強制されるわけではありません。定期的にPV健康診断を利用して、後は会報に目を通す程度という受け身の参加でもまったくかまいません。しかし何かあったときには、相談室など頼りになる窓口が使えます。
年会費がかかりますが、太陽光発電システムのユーザーなら、十分それに見合った価値があるでしょう。太陽光発電システムを設置したら、加入を検討してみてはいかがでしょうか。
PV-Net 事務局長 都筑 建(つづく・けん)さん
「ビジネスではなく、あくまでユーザーの立場から情報発信、サービス提供をしていきます」という都筑さん。
特定非営利活動法人
太陽光発電所ネットワーク(PV-Net)
〒113-0034
東京都文京区湯島1-9-10 湯島ビル 202
TEL:03-5805-3577
FAX:03-5805-3588
Web:http://www.greenenergy.jp/
メール:info@greenenergy.jp
(2010/7/13 更新)
2015年3月末をもちまして補助金情報の提供は終了しました。