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ソーラー・パネルだって故障や不具合が起こります!

太陽光発電システムの寿命(耐用年数)や、設置後のメンテナンスについて営業マンに聞いたり、インターネットでメーカーのホームページを調べたりすると、必ずといってよいほど次のフレーズが返ってきます。

ソーラー・パネルは故障・不具合知らずのメンテナンス・フリー。手をかけなくても20年以上使えますよ

ソーラー・パネルには磨耗を伴うような可動部がなく、非常に安定的なシリコン結晶でできている(一般的な結晶型の場合)、というのが理由になっています。

ほとんどのソーラー・パネル・メーカーは、パワーコンディショナ(→用語解説)には1年の保証しかつけないものの、パネルについては最低でも10年、長いところだと25年ものモジュール出力保証(→用語解説)をつけています。これだけ長い保証をつけられるのは、故障・不具合が少ないからだ、と多くの人は考えます。

こうして、太陽光発電システムに対しては、メーカーや設置工事業者に加え、消費者の間でも、次のような通説が広く共通認識となっています。

「パワーコンディショナの寿命は10年程度、一方パネルのほうはほとんど故障や不具合などなく、20~30年は特にメンテナンスしなくても使える」

どこを見渡してもこの説にあたるので、ほとんどの人が疑問を持つことなく受け入れてしまっています。しかし実際のところは、通説どおりとはいかないようなのです。

実際には、ソーラー・パネルにも故障や不具合の可能性があり、発電量のチェックや点検などを実施しないと、知らず知らずのうちに大損をしてしまう場合もあることがわかりました。今回は、産業技術総合研究所(以下、産総研)でソーラー・パネルを中心とする太陽光発電システムの品質や故障・不具合の実態について調査・研究をされている加藤和彦さんに、ソーラー・パネルの故障・不具合実態や、故障・不具合を早期発見するための方法などについてうかがいました。

太陽光発電システム故障・不具合の実際(産総研の例)

何はともあれ、ソーラー・パネルの故障・不具合例について具体的に紹介しましょう。

加藤さんが勤める茨城県つくば市にある産総研では、最新エネルギー技術の実証や評価を目的として、いまから約6年前の2004年4月にソーラー・パネル・メーカー各社の住宅用パネルを設置したそうです。出力は全部で1MW弱と大規模ですが、機器はすべて住宅用のシステム(住宅用システム210台)で構成され、国内の主なメーカーの製品を幅広く網羅して設置しています。「メガ・ソーラタウン」と呼ばれているそうです。

産総研のソーラー・システム

産総研のソーラー・システム
これはメガ・ソーラタウンの一部。

5年間で発生したソーラー・パネルの交換数

まずは故障や不具合がないといわれるソーラー・パネルについて、2004年の運転開始から2009年までの5年間で発生したパネル交換数を見てみましょう。これはメーカーの点検で何らかの不具合が見つかり、交換にいたったパネルの数をまとめたものです。

設置システム 設置ソーラー・パネル
メーカー 設置台数 交換発生数 交換発生割合 設置枚数 交換枚数 交換割合
A社 61 26 43% 1752 41 2.3%
B社 53 23 43% 1272 40 3.1%
C社 39 3 8% 936 4 0.4%
D社 26 3 12% 832 4 0.5%
E社 15 8 53% 405 18 4.4%
F社 12 1 8% 288 1 0.3%
G社 4 3 75% 160 4 2.5%
210 67 32% 5645 112 2.0%

ソーラー・パネルの交換数(産総研内メガ・ソーラータウン)
設置から5年間で発生したパネルの交換数をメーカー別にまとめた結果。

表の右側、「設置ソーラー・パネル」が、メーカー別の設置パネル数と交換枚数を調査した結果です。交換発生の割合は最大のE社で405枚中18枚の4.4%、最小はF社で288枚中1枚の0.3%でした。この部分だけに注目すると、それほどたいした割合ではないような気がします。これをグラフにすると次のようになります。

ソーラー・パネルの交換数(産総研内メガ・ソーラータウン)

ソーラー・パネルの交換数(産総研内メガ・ソーラータウン)

しかし次に、表の左側にある「設置システム」のところに注目してみましょう。これは単純なパネルの交換数ではなく、産総研メガ・ソーラータウン内に設置した210台のシステム(住宅用システム)のうち、何台のシステムで交換が発生したのかを調査した結果です。ユーザーはシステム単位で設備を購入するわけですから、こちらのほうが気になるところでしょう。

結果は、210台のうち、3割を超える67台で交換が発生していました。

システム単位の交換発生割合(産総研内メガ・ソーラータウン)

システム単位の交換発生割合(産総研内メガ・ソーラータウン)

驚くべきことに、10台設置したら、そのうちの3台で交換が発生したという結果です。繰り返しになりますが、これは設置から5年目の結果です。

5年間で発生したパワーコンディショナの交換数

次は、パワーコンディショナについても見てみましょう。以下は、同じく設置から5年の間に交換されたパワーコンディショナの数です。なおここでいう「交換」は部品の一部交換も含んでいます。

メーカー 設置台数 交換台数 交換比率
A社 61 15 25%
C社 39 0 0%
D社 26 4 15%
F社 12 0 0%
G社 4 0 0%
H社 68 0 0%

パワーコンディショナの交換数(産総研内メガ・ソーラータウン)
同じく設置から5年間で発生したパワーコンディショナの交換数(部品交換を含む)。
※A~G社までは前記パネル交換数のメーカーと同一。B社、E社はパワーコンデョショナを製造しておらず、H社製を使用している。

数字だとわかりにくいので、こちらもグラフにしてみました。

パワーコンディショナの交換数(部品交換を含む)

パワーコンディショナの交換数(部品交換を含む)

ソーラー・パネルほどは長持ちしないといわれるパワーコンディショナですが、パネルよりも交換が少ないという結果で、6社中4社では交換は発生していません。ただし、A社(25%)、D社(15%)と、比較的交換率の高いメーカーもあります。

太陽光発電システム故障・不具合の実際(一般ユーザーでの調査結果)

故障・不具合知らずのはずのソーラー・パネルに、以外に多くの故障や不具合が起こっているのでびっくりさせられます。けれどいまの結果は、産総研に同時期に設置された同一モデルの製品のものでした。加藤さんは、太陽光発電システムの一般利用者で構成されるNPO法人 太陽光発電所ネットワーク(以下PV-Net →ホームページ)の協力を得て、一般ユーザーの元に設置された257件の太陽光発電システムに対しても同様の調査を実施しました(調査実施は2006~2008年)。実際にユーザーのところに設置されたものなので、使用年数などはばらばらです。最も古いもので10年程度から、新しいものでは設置まもなくのものまでが調査対象になっています。

先ほどと同様に、まずはソーラー・パネルについて、メーカー別に不具合が発生した数をまとめてみましょう。次のようになりました。

メーカー 調査台数 不具合発生数 不具合発生率
5年以内 10年以内 10年以上
ア社 130台 7 17 1 25 19%
イ社 43台 0 0 0 0 0%
ウ社 26台 4 0 0 4 15%
エ社 19台 0 5 0 5 26%
その他 39台 0 1 1 2 5%

ソーラー・パネルの不具合発生数(一般ユーザーに設置されたシステム)

ソーラー・パネルの不具合発生数(グラフ)

ソーラー・パネルの不具合発生数(グラフ)

次にパワーコンディショナについて見てみましょう。パワーコンディショナに不具合が発生し、交換、修理した数は以下のとおりです。

メーカー 調査台数 不具合発生数 不具合発生率
5年以内 10年以内 10年以上
ア社 130台 26 14 0 40 31%
イ社 43台 7 3 1 11 26%
ウ社 26台 4 2 0 6 23%
エ社 19台 0 0 0 0 0%
その他 39台 1 2 1 4 10%

パワー・コンディショナの不具合発生数(一般ユーザーに設置されたシステム)

パワーコンディショナの不具合発生数(グラフ)

パワーコンディショナの不具合発生数(グラフ)

やはり、ソーラー・パネルにしろ、パワーコンディショナにしろ、かなりの故障・不具合が発生しています。太陽光発電システムは「故障・不具合知らず」ではなく、メーカーによるバラつきはあるものの、一定の割合で故障や不具合が起こりうると考えたほうがよさそうです。考えてみれば、太陽光発電システムにしたところで、他の家電製品などと同じ工業製品なのですから、当然といえば当然のことでしょう。

ただ少し気になるのは、産総研のソーラー・パネルの故障・不具合率が高いことです。調査対象の製品や数は両者で異なりますから、単純には比較できませんが、産総研のほうは設置から5年しか経っていないのに、交換されたシステムが非常に多くなっています。産総研は、たまたま出来の悪い製品ばかりをつかまされたのでしょうか? 実際はそうではないようです。これには、太陽光発電システムの運用や検査に潜む問題があります。

(2010/7/9 更新)

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