電線を巻いたコイルに電気を流すことで磁力線を発生させ、その磁力線により金属製の鍋やフライパンに渦電流を発生させて、鍋自体が熱を発するようにした調理機器。ガスコンロの代わりに使用することができます。
火を使わずに調理できるので火災の危険性が小さく、不完全燃焼による有毒ガスの事故もなく安全であること、電気ですべてコントロールできるので、細かな温度調節やタイマー設定などが簡単なこと、鍋を置く面は完全な平面なため調理後の掃除が簡単なことなどの利点があります。一方、IHクッキング・ヒーター対応の鍋でなければ使えないこと、鍋をヒーター上面から離すと熱が発生しなくなるため、いわゆる「鍋振り」などの調理法がガスコンロと同じようにはいかず、工夫が必要になることなどの欠点があります。ガスを使わないオール電化住宅(→用語解説)では、通常はキッチンコンロにこのIHクッキング・ヒーターを使います。
IHクッキング・ヒーターがどのようなしくみで鍋やフライパンを熱くできるのか、順を追って説明しましょう。
IHクッキング・ヒーターの内部には、銅線を巻いたコイルが入っています。まず、このコイルに電流を流します。
導線に電流が流れると、その周囲に磁力が発生します。これは電磁石のしくみと同じです。この原理にしたがって、IHクッキング・ヒーター内部にあるコイルに電流を流すと、その周囲に磁力線が発生します。
IHクッキング・ヒーターの上に金属でできた鍋やフライパンを置くと、発生した磁力線が金属部分に当たります。
鍋やフライパンの金属部分に磁力線が当たると、その部分に渦電流(うずでんりゅう)と呼ばれる電気の流れが発生します。電気抵抗があるところに電流が流れると熱が発生します。鍋やフライパンの金属部分には電気抵抗があるため、渦電流が流れると熱が発生します。この熱によって鍋やフライパンが熱せられます。
鍋やフライパンの電気抵抗が大きいほど、同じ渦電流でも大きな熱が発生します。このため、例えば銅やアルミニウムのように電気抵抗が極端に低い金属性の鍋や、非常に薄い金属でできた鍋では、うまく熱せられない場合があります。また、底面が平らでないもの、底面サイズが極端に小さかったり大きかったりする鍋も使えないことがあります。基本的に、IHクッキング・ヒーターで使える鍋類は、「IHクッキング・ヒーター対応」を明記したものに限られます。ただし、オール電化住宅などの増加により、最近では、市販されている鍋類の多くが対応をうたっています。
エコキュート(→用語解説)+IHクッキング・ヒーターによるオール電化のメリットとして、「CO2排出が少なく環境に優しい」と宣伝されることがあります。オール電化住宅では火を使いませんから、直接的にはCO2を発生しません。またエコキュートは高効率の給湯器で、効率の低い給湯に比較すれば、環境に優しいのは事実でしょう。ただし、電気を作る際に火力発電などが使われている場合には、発電時にCO2が発生しています。その一方で、ガスを利用する給湯システムも技術改良が進んで効率が向上してきています。このため、オール電化はガスを使うよりCO2の発生が少ない、とは一概にはいえないようです。
(2010/1/20公開)
2015年3月末をもちまして補助金情報の提供は終了しました。