住宅向け太陽光発電で、それまでは利用されていなかった環境価値(CO2を排出しないクリーンな電力を作ったという価値)を有効活用するため、国が設置した国内クレジット運営事業の名称。CO2を排出しないクリーンな太陽光発電によって、排出削減されたとみなされるCO2の量(クレジット)をとりまとめ、CO2排出削減活動を行う企業などに売却します。グリーン・リンケージ倶楽部(太陽光発電)が取りまとめて売却する国内クレジットの売却益は国庫に入ります。
2011年4月から開始された、2011年度(平成23年度)の太陽光発電設置に対する国の補助金(平成23年度 住宅用太陽光発電導入支援対策費補助金)では、新たに国内クレジット事業やグリーン電力発電事業などへの参加表明が補助金申請の条件になりました。それまでは、太陽光発電によって生み出された環境価値(CO2排出削減価値)がきちんと集計されておらず、無駄になっている場合がありました。この問題を解決して、住宅向け太陽光発電による環境価値を有効活用することを目的とした措置です。
従来から、太陽光発電のグリーン電力価値を活用することは可能でしたが、そのしくみや利用方法などは必ずしも周知されておらず、多くの太陽光発電ユーザーは活用していないのが現状です。グリーン電力は「CO2を排出せずに作られたクリーンな電力(単位はkWh)」、一方クレジットのほうは「排出を削減したCO2の量(単位はt)」と直接的には比較できませんが、環境価値としての出所は同じもので、価値を重複して計数したり利用したりはできません。
従来グリーン電力価値を利用するには、自分自身でグリーン電力証書を発行している機関に申し込む必要があったり、太陽光発電によって作った電気の量を正確に計測するために、総発電電力計(→用語解説)を設置する必要があったりと、手続きが煩雑だったことも、利用を阻害する原因になっていました。
そこで国は、補助金申請に合わせて、より簡単に国内クレジットの利用を申請できるように、運営機関を用意しました。これがグリーン・リンケージ倶楽部(太陽光発電)です。環境価値利用を補助金申請の条件にすれば、個人で設置するほぼすべての太陽光発電ユーザーがクレジットを活用できるようになります。将来は太陽光発電以外の自然エネルギー利用についても事業を行う予定があるからか、利用規約などを見ると「グリーン・リンケージ倶楽部(太陽光発電)」と、必ず(太陽光発電)つきで表記されています。
グリーン・リンケージ倶楽部(太陽光発電)の特徴は次のとおりです。
グリーン・リンケージ倶楽部(太陽光発電)の特徴は、手続きや運用が非常に簡単なことです。2011年度の補助金申請書に選択項目が用意されており、ここにチェックするだけで入会の意思表明ができます。
通常のグリーン電力価値利用では、実際にどれだけ太陽光発電で電気を作ったかを正確に計測するため、総発電電力計を設置する必要がありましたし、発電実績の報告は各ユーザーがそれぞれ行う必要がありました。これに対しグリーン・リンケージ倶楽部(太陽光発電)では、発電実績の計測にパワーコンディショナの簡易表示を利用できます。また実績報告の必要があるのは、抽選で選出されたごく一部のモニタ・ユーザーだけで、多くのユーザーは実績報告の義務がありません。モニタに選ばれたユーザーは、年に1回、実績報告が必要です。J-PEC(→用語解説)の説明によれば、モニタ・ユーザーの人数は、全国で1000人程度だとしています。CO2の排出削減の全体量については、モニタ・ユーザーの調査結果から、計算で推計するものと思われます。
このように手続きや運用は非常に簡単ですが、クレジットの売却益は個人ではなく、国庫に入ります。
環境価値の売却益を自分で受け取りたい場合には、グリーン・リンケージ倶楽部(太陽光発電)以外の排出削減事業者(グリーン電力証書発行機関など)を自分で選び、申請する必要があります。補助金の申請書には、グリーン・リンケージ倶楽部(太陽光発電)以外の排出削減事業者を選択するための項目もあります(運営者一覧については、以下の参考リンクにある事業者一覧を参照)。
ただしこの場合は、総発電電力計を設置し、自分自身で実績報告を行わなければなりません。太陽光発電システムを新規で設置するなら、総発電電力計の機器費用だけで、追加工事費はほとんどかからないはずです。以前より個人向けのグリーン電力証書を発行しているPV-NET(太陽光発電所ネットワーク)によれば、3kW程度のソーラー・パネルを設置した家なら、年間で平均1万円程度のグリーン電力価値の売却益が得られているとのことです。
グリーン・リンケージ倶楽部(太陽光発電)と、他の排出削減事業者への重複申請はできません。しかしグリーン・リンケージ倶楽部(太陽光発電)の会員資格は最長でも2013年3月31日までとのことなので、これ以後の分については、自分で排出削減事業者に申請して、環境価値の売却益を得ることが可能でしょう。総発電電力計を後から追加するには工事に高額な費用がかかるので、グリーン・リンケージ倶楽部にするか、別の排出削減事業者にするかにかかわらず、太陽光発電システムをこれから新規で設置するときには、総発電電力計も併せて設置しておくのがよいでしょう。
(2011/5/25 公開)
2015年3月末をもちまして補助金情報の提供は終了しました。