福島第一原子力発電所の事故の影響で、定期点検で停止した原発の再稼働が困難になっており、代わりに石油などを使った火力発電が増えています。発電にかかる直接的なコストは、石油などを使った火力発電のほうが原子力発電よりも高いため、電力会社各社は、電気料金の値上げを検討中です。東京電力は、まずは大口の企業向けの電気料金を2割程度アップするとしています。家庭向けはまだ未定ですが、早期の値上げを考えているようです。
現在、家庭向けの電気料金は、おおよそ1kWhあたり24円程度です。仮にこれが2割アップになるとすれば、29円/kWh程度になる計算です。今後の原油価格などの動向によっては、さらに値上がりが続く可能性もあります。
ご質問は、電気料金が値上がりしたときに、太陽光発電の価値はどう変わるのか? ということですね。電気の値段が上がるわけですから、それを作り出す太陽光発電の価値も上がることになります。特に、昼間の電気使用量が多い家庭ほど、経済的なメリットが大きくなります。どうしてそうなるのか、以下では具体的に見ていきましょう。
2011年度から太陽光発電を始めたユーザーは、余剰電力を1kWhあたり42円で売電できます。余剰電力とは、太陽光発電で作った電気から、まずは自分の家で電気を使い、それで残った(余った)電気です。以下の図では、説明を簡単にするために、家ではまったく電気を使っておらず、太陽光発電で作った電気はそのまま売電しているとしています。1kWhの余剰電力を売電すれば、42円を収入として受け取れます。ですからこの場合、太陽光発電で作った電気は、1kWhあたり42円の価値があることになります。
次に太陽光発電がない通常の場合を考えてみます。この場合、必要な電気はすべて電力会社から買うことになります。電気料金の単価は、電力契約の種類や、使用量に応じて少し変わるのですが、一般的な従量電灯契約では、1kWhあたり24円程度です。
説明するまでもありませんが、この場合は1kWhの電気は24円の価値があることになります。
今度は、太陽光発電があって、ここで作った電気を自分の家で使うケースを見てみましょう。使う電気をすべて太陽光発電でまかなった場合には、電力会社から電気(24円/kWh)を買わなくて済むわけですから、この場合の電気の価値は1kWhあたり24円です(下図の上側)。
さてここで、電気料金値上がりしたとしましょう。仮に約2割高くなって、1kWhあたり30円になったとします。同じく、太陽光発電のおかげで電力会社から電気を買わないですむわけですが、今度は電気料金の単価が24円/kWh→30円/kWhに値上がりしたのですから、この場合の電気の価値は1kWhあたり30円ということになります(下図の下側)。
太陽光発電で作った電気を、もっぱら余剰電力として売電しているような場合には、昼間については電気料金の値上がりの影響はほとんどありません(電気を使わないのですから当然です)。しかし昼間に電気を使う場合は、太陽光発電で自分で作った電気があれば、その分だけ電気を買わなくてすむので、電気代が高くなればなるだけ、太陽光発電で作った電気の価値があがります。
これらを具体的にいえば、「共働きで子供も学校なので、昼間は家にほとんど人がいない」というような家庭なら、太陽光発電で作った電気はほとんど売電することになるでしょう。この場合昼間については、太陽光発電の有無と、電気料金の値上がりは、直接的にはあまり関係がありません。
一方、専業主婦の家庭や、お年寄りのご家族が同居している場合、ペットが家にいる場合などは、昼間に少なからず電気を消費します。この場合に太陽光発電があれば、値上がりした電気を買わないで済みますから、電気代が値上がりするほど、太陽光発電で節約できる電気代は増えます。
もちろん太陽光発電ができるのは昼間だけですから、夜に使う電気については、前出のどちらの場合であれ、電気料金の単価があがれば、その分だけ電気料金は値上がりします。
最初は夫婦共働きで昼間は不在という家だったとしても、将来的にはご両親と同居する可能性もあるでしょう。太陽光発電システムは長期に使えるものですから、購入を検討するときには、将来の生活設計も考える必要があります。
(2012/1/10 公開)
2015年3月末をもちまして補助金情報の提供は終了しました。