ケースによってそうなる場合がありますので、ソーラー・パネルと住宅用バッテリ(蓄電池)を同時に設置するときには注意が必要です。
夏の電力不足への備えや、万一の災害時の備えとして消費者の関心が高まったこと、普及に伴って価格が下がってきたこと、住宅メーカーなどが販売に力を入れ始めたことなどから、住宅にバッテリの設置を検討する人が増えています。停電でも電気が使える、太陽光発電できない夜間でもバッテリの電気が使えるなど、バッテリを住宅に置くと、電気の使い方に幅広いバリエーションが生まれ、災害対応や電気料金の低減などに活かせます。詳しくは別稿(「家にバッテリ(蓄電池)を置くとどんな利点がありますか?」にまとめているので参照してください)。
結論からいうと、ソーラー・パネルとバッテリの両方を住宅に設置した場合、ケースによってはW(ダブル)発電とみなされます。もともとW発電(→用語解説)は、ガスから電気を作るエコウィルやエネファームと、ソーラー・パネルを併設することで、ガスから発電した電力を利用することで、太陽光発電による電力をより多く売電できてしまうこと、場合によってはガスから発電した電力までも高額で売電できてしまうことから、太陽光発電単独の場合よりも売電単価が下げられています。たとえば2012年度(平成24年度)の例なら、太陽光発電単独なら42円/kWhのところが、W発電では34円/kWhになってしまうのです。
ここで、バッテリと太陽光発電を併用することの何が問題なのか、確認しておきましょう。典型的なケースは以下のような状況です。まずは電気料金の安い深夜時間にバッテリに電気を貯めておくとします。昼間、自宅で使う電気は夜のうちにバッテリに充電した電気を使い、太陽光発電した電気はすべて売電します。実際にはここまできっぱり分けられるわけではないでしょうが、電気に色はついていないので、どの電気がどこから来たものかはわかりません。結果としてこのような状態が発生する可能性があります。
この場合、家で使っている電気は、安い深夜電力をバッテリに貯めた電気です。バッテリがなければ、太陽光発電した電気から使うところ、バッテリがあるので安い電気を使えるのです。一方、太陽光発電した電気はまるまる売電しています。バッテリがなければ、発電した電気の一部は自家消費していたはずです。
つまりこのケースでは、安い深夜電力を、高値で売電できるのと同じになってしまうのです。電力会社にもよりますが、深夜電力は10円/kWh程度で、売電単価は42円/kWh(2012年度)ですから、利ザヤは30円/kWh以上もあることになります。売電で支払われるお金は、全国民から徴収したお金なのですから、こんなことを許してしまってはたまりません。
そこでこのような場合には、バッテリに貯めた電気も、エネファームと同様に発電した電気とみなして、W発電として、売電単価を下げようということになっています。2012年度のW発電の売電単価は34円/kWhです。
最初からソーラー・パネルとバッテリを併設する場合は業者から説明があると思いますが、注意が必要なのは、すでにソーラー・パネルが設置されている住宅に、後からバッテリを追加設置するような場合でしょう。ユーザー自身も気が付かず、業者もきちんと対応できなかったとすると、意に反して売電単価が下げられてしまう可能性があります。
電気自動車(Electric Vehicle:EV)やPHV(Plugin Hybrid Vehicle)の自家用普及が進んでいます。まだまだ一般的にはなっていませんが、EVやPHVに搭載されているバッテリを、住宅でも使えるようにした製品が発売され始めています。これはVtoH(Vehicle to Home)と呼ばれ、見かけ上は住宅内にバッテリを置くのと同じような状態になります。
この場合も、次に述べるような特別なしくみがなければ、太陽光発電とセットにした場合には、W発電とみなされて売電単価が下げられてしまいます。
実際には、バッテリとソーラー・パネルを併設しても、W発電ではなく通常の売電単価のままにする方法もあります。宅内にインテリジェントな電力モニタを設置し、ソーラー・パネルの発電状況や家での電力消費の状況に応じて、バッテリの放電を管理し、先に述べたような問題状況を起こさないようにする方法です。
先の問題をひと言でいえば、「余剰電力の売電と同時に、バッテリの放電を行っている」ということです。したがって電力状況をモニタして、売電とバッテリの放電が同時に起こらないようにすればよいのです。余剰電力があって売電するときには、次のようにバッテリの放電を止めます。これなら、安価な深夜電力を売っていることにはなりません。
一方、余剰電力がないときには、バッテリを放電しても問題はありません。売電はしていないからです。
つまり日中、太陽光発電が行われ、余剰電力があるときはバッテリは使わず、早朝や夜間(深夜電力時間帯前)など、太陽光発電による発電が少ない、またはまったくない時間帯の電気需要を安価な深夜夜間帯にバッテリに充電した電力を利用するという形式です。
実際、パナソニックが販売している「住宅用 創蓄連携システム」など、このようなインテリジェントな電力管理を行える製品も出てきています。機器はやや高額になるかもしれませんが、このようなしくみを取り入れれば、売電単価は通常のままにできます。ソーラー・パネルとバッテリ(EV/PHVのVtoH)を併設するときには、このような構成が可能になるかどうか、確認するとよいでしょう。
(2012/7/9 公開)
2015年3月末をもちまして補助金情報の提供は終了しました。