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よくある質問

家にバッテリ(蓄電池)を置くとどんな利点がありますか?

東日本大震災が発生する以前、電気は「好きなときに好きなだけ使える」もので、電力不足や不意の停電などは、もはや過去の心配事と多くの人が考えていました。しかし震災で被災地の一部では長期間の停電を余儀なくされたり、その後の原発事故では、関東地方などで電力不足による計画停電が実施されたりしました。原発事故の影響はいまなお続いており、電力不足の危機は全国に波及しています。

消費者心理は震災前から大きく変わって、万一の災害対策を進めたり、できるだけ外部からのエネルギー利用に依存しない生活を心がけたりする人が増えているそうです。その1つとして注目されているのが太陽光発電です。太陽光発電では、自宅の屋根に載せたソーラー・パネルで自家発電ができ、停電時でも自家発電した電気があればこれを利用できますし、電力会社から買う電気を減らしたり、売電して電力不足回避の社会貢献をしたりできるからです。

しかし現在の太陽光発電では、発電した電気を貯めておいて後で使うということはできません。このため日射がない夜は発電ができず、夜に使う電気は電力会社から購入するしかありません。

これに対し住宅にバッテリ(蓄電池)を置いて、ここに電気を貯められるようにして、生活に役立てたらどうかと考えるユーザーも増えています。メーカーもこれに呼応して、住宅向けバッテリの新製品などを次々と発表し始めました。自宅にバッテリを置いてうまく使えば、万一の災害により強く、より電力会社に依存しない生活ができそうな気がします。利点がたくさんあるのは事実ですが、住宅でのバッテリ利用は、現時点では問題点もたくさんあるのが実情です。ここでは住宅向けバッテリの利用について整理してみましょう。

太陽光発電+バッテリのある生活とは?

まずは太陽光発電システムと、バッテリの両方を備えた住宅での生活がどんなふうになるのか見てみましょう。

昼間:太陽光発電の電気を利用。余りがあればバッテリに貯める

昼間、太陽光発電できるときは、屋根のソーラー・パネルで作った電気を家で使ったり、バッテリに貯めたりします。太陽光発電だけで足りなければ、不足する電気を電力会社から買います。

ソーラー・パネルで発電できる昼間

ソーラー・パネルで発電できる昼間
ソーラー・パネルで発電した電気を使ったり、バッテリに貯めたりする。

夜間:バッテリの電気を利用。不足分は電力会社から購入

夕食時間やその後の団らんの時間帯は、けっこう電気を使うでしょう。この時間帯は、主にバッテリに貯めた電気を使います。バッテリで不足する場合は電力会社から電気を買います。

太陽光発電できない夜間

太陽光発電できない夜間
夕食どき、その後の団らんで必要な電気は、バッテリから使ったり、不足したら電力会社から買ったりします。

深夜:安価な夜間電力をバッテリに貯める

みんなが寝静まる深夜は、電気はあまり使いません(エコキュートなどがない場合)。安い夜間電力(→用語解説)を電力会社から買って、これをバッテリに充電しておきます。

安価な夜間電力が使える深夜

安価な夜間電力が使える深夜
みんなが寝静まる深夜は、安価な夜間電力をバッテリに貯めておく。

住宅用バッテリ設置の利点と問題点

住宅用バッテリを設置する利点や問題点として、一般的にいわれていることは次のようなことです。

利点

(1)停電時も電気が使える
(2)電気料金を削減できる
(3)太陽光発電した電気を夜も使える(より自立した生活ができる)
(4)ピークカットなどができ、電力不足に対応できる

問題点

(5)値段が高い
(6)大きな設置スペースが必要
(7)太陽光発電の売電の制度とミスマッチがある
(8)いわゆる「電気ロンダリング」をどう回避するか

(1)は改めて説明するまでもないでしょう。バッテリに貯めた電気があれば、停電時でもそれを使えます。

(2)は、上でも述べた安価な夜間電力の活用を考えてのことです。単純には、昼間よりも安い夜間電力(昼間は24円/kWh程度、夜間電力は9円/kWh程度)をバッテリに貯めておいて、それを昼間に使います。

(3)も想像しやすいですね。現在、太陽光発電で電気が余ったときには、余剰電力として売電するわけですが、これを売電せずにバッテリに貯めておきます。そして太陽光発電ができない夜に貯めた電気を使います。売電もしないが、できるだけ電気を買わず、自立した生活ができるということです。

(4)電力不足が招く最大の問題は、電力消費が集中する時間帯(ピーク時間帯)に電力供給が追い付かなくなり、不測の停電が発生してしまうことです。ですから使う電気の総量は変わらなくても、電力供給に余裕がある時間帯にバッテリに電気を貯めておいて、ピーク時間帯にこれを使うようにすれば、電力不足を回避できます。

一方最大の問題は、(5)のバッテリ価格です。時間を追って値下がりしてきていますが、1kWhあたりで数十万円と高額で、ある程度生活に必要な電気をバッテリから供給するとなると、数百万円程度は必要になります。バッテリの寿命は一般にそれほど長くないため、ソーラー・パネルのように長期で回収するということが困難です。さらに容量にもよりますが、設置スペースも小さくありません(10kWhともなれば、ちょっとしたクローゼットくらいの大きさになります)。(7)と(8)については説明が必要なので、後で詳しく解説しましょう。

現在販売されている住宅用バッテリの多くは緊急時用

「太陽光発電+バッテリがある生活」で紹介したのは、太陽光発電した電気や電力会社から買う電気、バッテリに貯めた電気を、状況に応じて臨機応変に切り替えて、バッテリを常時使う形式でした。しかし現時点で販売されているバッテリの多くは、このように常時運用できるものではなく、「電気を貯めておいて、いざ(災害時など)というときに緊急避難的に使うもの」です。このタイプのバッテリは、普段は電気を貯めておくだけで、何もなければ貯めた電気は使いません。停電したときには、配線などを切り替えて、このバッテリから電気を使います。常時運用型の製品がまだ少ない理由は、常時運用するにはある程度の容量(数kWh~10kWh)が必要で高額になってしまうこと、状況に応じて電気の使い方を切り替える設備(システム)にもお金がかかるためです。

しかし常時運用型のシステム製品も発売されるようになってきました。その1つは日本電気が2011年7月に発売したもので、6kWhと大容量であるにもかかわらず、システム価格は100万円程度といわれています。今後はこうした製品も増えていくでしょう。

太陽光発電した電気は、貯めるより売ったほうが得

先の説明では、昼間にソーラー・パネルで発電した電気をバッテリに貯めていました。しかしご承知のとおり、現在は太陽光発電の余剰電力を高額(48円~42円/kWh)で売電できるしくみがありますから、余剰電力があるときには蓄電などせず、売電したほうが経済的には有利です。高額な太陽光発電システムの初期投資を回収することを考えても、余剰電力を売電しない手はありません。これが問題点の(7)で示した「売電制度とのミスマッチ」です。太陽光発電した電気を貯めて夜に使えば、電力会社に依存しない自立した生活が送れますが、現在の制度では、経済的な観点からはあり得ない話なのです。

安価な夜間電力を高額で売る「電気ロンダリング」

現在のしくみで売電できるのは、太陽光発電した電気の余剰電力だけです。けれども電気に色はついていないので、どの電気が太陽光発電されたもので、どの電気がバッテリのものかは見分けがつきません。このため、バッテリを悪用すれば、安価な夜間電力を貯めておいて、昼間はその電気を使うことにして、太陽光発電した電気はすべて余剰電力として高額売電することが可能になってしまいます。このような悪用は、マネー・ロンダリング(資金洗浄)にならって、電気ロンダリングなどと呼ばれることがあるようです。これが問題点の(8)です。

電気ロンダリングの例

電気ロンダリングの例
昼間はバッテリから電気を使うようにして、太陽光発電した電気はすべて売電してしまう。実質的に、安価な夜間電力を、高額で売電している形になる。

先の日本電気の製品を含め、大手メーカーの製品ではこのような不正はできないものと思いますが、技術的には可能です。余剰電力の売電にかかる費用は、国民が直接的に負担しているわけですから、このような不正はあってはなりません。

実用で普及するのはまだ先

これまで見てきたように、住宅用バッテリは、緊急時の補助電源として使う用途以外は、価格にせよ、制度の問題にせよ、まだ広く利用できる段階にはきていません。しかし順調に太陽光発電システムの設置件数が増えて、電圧上昇問題(→関連記事)が発生したり、スマートグリッドが普及して、よりダイナミックな電力管理が可能になったりすれば、バッテリの必要性は大きくなってくるでしょう。

特に、これから電気自動車の普及が進むと、量産効果によってバッテリ価格は大幅に低下するといわれています。電気自動車用のバッテリをそのまま住宅用に利用するという研究も進んでいます。まだまだこれからの製品ですが、今後に期待したいところです。

(2011/8/11 公開)

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