ガスを使って効率よく給湯と発電を行う家庭用燃料電池システム「エネファーム(→ 用語解説) 」の新製品が4月1日からパナソニックと東京ガスから販売されます。
エネファームは、都市ガスから取り出した水素を空気中の酸素と化学反応させて発電し、その際に出る熱を無駄にせず給湯や暖房に利用する機器です。家庭で発電してすぐ使うので送電ロスがないうえ、発電時の排熱を家庭で不可欠な給湯などに利用できることから、年間の光熱費を約5~6万円節約できるとされます。
エネファームは、2009年5月に第一世代が一般に販売され、今回の新製品は第二世代にあたります。今回の新製品では、新技術の採用や設計の見直しなどにより、現行製品から性能が約10%向上し、小型・軽量化、低価格化が実現されました。価格は、現行品よりも約70万円安価な276万1500円です。
さらに耐久時間が現行の4万時間から5万時間に向上されています。5万時間は、仮に24時間連続運転すれば5.7年ですが、エネファームは貯湯が完了すると運転が自動的に停止するので、これより長期の耐久性を期待できますが、実際の耐用期間は使い方により変化します。パナソニックの資料では、メンテナンスサポート期間を10年としています。
現行製品では、燃料電池ユニットと貯湯ユニットが別々にわかれており、設置に大きなスペース(3.9平方メートル)が必要でした。この点、新製品では燃料電池ユニットを縦長にレイアウト変更し、貯湯ユニットと連結して一体設置できるようになり、約半分のスペース(2平方メール)で設置可能になっています(分離設置も可能)。新製品の発電出力は750W(従来版は1kW)に低減されるとともに、家庭での利用に合わせて最低出力が250W(従来版は300W)に変更されました。
エネファームで発電した電力は、家で消費するだけで、売電はできません。太陽光発電システムが併設されている、いわゆるW発電(→ 用語解説)の場合、太陽光発電システムによる発電と合わせた売電が可能ですが、この場合、売電価格は太陽光発電だけの場合の48円/kWhから39円/kWhに、9円安くなってしまいます(2010年度の場合)。2011年度からは、これが太陽光発電で42円/kWh、W発電で34円/kWhに低減される方向で検討されています。東京ガスや大阪ガスなどは、低減額に相当する補助を独自に行っていますが、2011年3月31日が申し込み締め切りとなっており、2011年4月1日以降に設置したユーザーへの補助が継続されるかどうかは不明です。
エネファームの設置については、太陽光発電システムと同様、国や地方自治体から補助金が支給されることがあります。2010年度の国からの補助金受付はすでに終了していますが、最大130万円が支給されていました。また地方自治体によっては、独自に補助金を支給しているところもあります。2011年度も引き続き、同条件での補助金が期待できるとすれば、150万円程度(施工費用除く)で設置できることになります。
今回の新製品では、従来の普及ネックだった価格、設置スペースなどが大幅に改善されました。しかし仮に年間の光熱費削減が6万円で、10年間稼働したとしても、設置による金銭的なメリットは60万円ということになり、設置費用をまかなうレベルにはなっていません。消費者から幅広い支持を得るには、さらに明確な購入メリットをアピールできる必要がありそうです。
(2011/2/10 公開)
2015年3月末をもちまして補助金情報の提供は終了しました。