日本には、太陽光発電システムのメーカーが多数あります。歴史的に、太陽光発電の技術開発は日本のメーカーが中心となって進めてきたからです。いうまでもなく、太陽光発電システムを設置するときには、太陽光発電モジュールやそのほかの機器をこれらのメーカーから買うことになるのですが、そもそもどんなメーカーがあるのか、メーカーによってどのような違いがあるのか、あまり知られていません。
ここでは、日本国内で太陽光発電システムを販売している主要なメーカーをリストアップして、それぞれの特徴をまとめます。なお本記事では、さる2009年6月に千葉県の幕張メッセで開催された太陽光発電関連の業界イベント「PV Japan 2009」の取材結果も含めています。取材の際、各メーカーのブースに立ち寄り、可能な場合は担当者に直接質問しました。その結果も合わせて掲載します。 (メーカーの掲載順は社名の50音順です)
化成品や機能性樹脂などの化学製品を幅広く製造・販売する大手メーカーのカネカ(旧 鐘淵化学工業)が、太陽光発電システムを販売しています。
カネカの太陽電池の特徴は、一般的な多結晶シリコンではなく、薄膜シリコンの上にアモルファス・シリコン(薄膜シリコンとは違った波長の光を電気に変えられる)を層状に重ねたハイブリッド型の太陽電池であることです。ほかに薄膜型太陽電池としては、後で述べる昭和シェルソーラーのSolacis(CIS太陽電池)やホンダソルテックの製品(CIGS太陽電池)がありますが、シリコン薄膜製品を主力として個人住宅向けに販売している大手はカネカだけでしょう。
一般に薄膜型太陽電池は、結晶型の太陽電池と比較すると、変換効率(→用語解説)が低いといわれます。このため屋根の狭い日本の個人住宅向けには不利とされていましたが、高温で変換効率が大きく低下する結晶型に比べ、薄膜型は高温時の効率低下が小さく、設置する地域の気候にもよりますが、年間を通した発電量では結晶型との違いは小さいともいわれます。
太陽電池開発では長い歴史を持つ京セラ。ハイブリッド車のトヨタ プリウスの一部モデルの屋根に搭載されているのも京セラ製の太陽電池です。スーパーのイオンとも提携して、個人住宅向けの太陽光発電システム販売を強化しています。
住宅用太陽光発電システムの主力製品「SAMURAI」は、長短大きさの違う2種類の太陽電池モジュール(62W/46W)を組み合わせることで、無駄なくより多くの太陽電池を設置できるという特長があります。そのため、都市部の小さな屋根や、日本独特の複雑な形状の屋根スペースの無駄を極めて少なくでき、より多くの太陽電池を設置できるとともに、高いデザイン性を備えたレイアウトを実現しています。
業界で初めて住宅用太陽光発電システムを発売した京セラでは、お客様により長く安心してお使いいただくための製品やサービスを提供できるよう、独自の販売チャネルを展開しています。イオン株式会社と業務提携し、イオンショッピングセンター(SC)に、京セラソーラー販売店などの出店を行っていきます。大手流通グループと全面的に協力関係を構築し全国展開を行っていくことで、お客様により身近で気軽に相談できる場を設けることができるようになります。
太陽光発電システムをお客様により長く安心してお使いいただくために、製品品質はもちろんのこと、販売・施工・アフターサービスにおいても、品質の高いサービスを提供できるよう、地域に密着した総合的なサポート体制を整えています。現在、全国各地に広がる京セラソーラーフランチャイズ店は、全国で65店舗(2009年6月現在)を擁し、今後、2010年3月末をめどに100店舗体制へと拡大していく予定です。
サンテックパワーは、中国で創業された太陽光発電システム・メーカーです。世界での自然エネルギー需要の急増を追い風に、ここ数年で急速に事業を拡大してきており、日本の個人住宅向けにも販売強化を図っています。
サンテックパワー製品の特徴は、充実した長期保証です。システム全体では10年の保証が、モジュールの出力については25年の保証がついてきます。太陽光発電システムは長く使うものなので、保証が充実しているのは安心ですね。
三洋電機が販売するHIT型太陽電池は、単独でも変換効率の高い単結晶シリコンウエハに加え、アモルファスの薄膜シリコン層を追加することで、量産レベルでの最高変換効率を実現しています。モジュールを設置するために、あまり広い面積を確保できない場合でも、変換効率が高ければ、より多く発電できます。屋根が狭くて十分な出力が得られないのでは? という不安をお持ちの人は、検討してみる価値があるでしょう。
三洋電機独自のHIT太陽電池により、設置面積あたり世界No.1を実現しています。HIT太陽電池は、発電ロスの少ない構造で、大幅に発電ロスを抑える高出力の構造です。発電性能も大幅アップしました。また、省スペース化、軽量化を実現して、いままで設置できなかった屋根への設置も可能になりました。
今後も、お客様により良い商品をお届けするため、HIT太陽電池の性能をアップしていきます。
太陽光発電は、環境にも家計にも貢献しますので、ぜひHIT太陽電池の導入をご検討下さい! 太陽光発電を上手に活用すれば、地球温暖化の一因といわれているCO2や毎日の光熱費を大幅に削減できます。平均的な一世帯の家庭から排出される温室効果ガスの約30%が削減できる場合もあります。また、同時に電気代の大幅な節約も期待できます。オール電化と太陽光発電を組み合わせれば、発電した電気をさらに有効に使え、約80%と大幅な光熱費の削減が期待できます(*詳細は三洋電機の解説ページ)。
TVコマーシャルなどもでもおなじみのシャープの太陽光発電システム。ここ数年、世界市場では海外メーカーに追い上げられているとはいえ、導入実績は高く安心できるメーカーの1つです。国内メーカー全般にいえることですが、日本の個人住宅のさまざまなニーズに応えられる製品ラインアップの充実度が特長でしょう。
住宅用太陽光発電システム向けには、狭い屋根や複雑な形状の屋根への設置面積を高める「ルーフィット設計システム」や、瓦屋根住宅の景観を損ねずに設置できる「瓦一体型モジュール」を発売しています。さらに、自宅の太陽光発電システムの運転状況や発電診断レポートなどをテレビやパソコン、携帯電話からいつでも確認できる「Webモニタリングサービス」など、太陽光発電ライフを多彩に楽しめる商品をご提案しています。
太陽光発電システムの設置費用などから計算する「発電コスト」を、電力会社から購入する電力料金と同等まで下げる「グリッドパリティの実現」が、普及拡大に向けた鍵といわれています。この目標に向け、太陽電池の変換効率の向上や生産コストの低減に全力を挙げています。また、太陽電池メーカーだけで可能なコストダウンには限界があり、関係するさまざまな企業と力を合わせ、トータルのコストダウンを進めています。
創業者の早川徳次は、テレビなどの電気製品を製造する一方、電気を作ることを夢見て、1959年に太陽光発電の開発に着手しました。以来50年、1900カ所以上の灯台や160基以上の人工衛星など、過酷な用途の実績で信頼と技術を蓄積し、2008年に当社の累計生産量は世界の約1/5を占めるまでに至りました。将来的には、材料からメンテナンスまで太陽光発電のバリューチェーンすべてを手がけることを目指しています。
昭和シェルソーラーの太陽電池は、CIS型と呼ばれる薄膜タイプです(→用語解説)。カネカの場合と同様、結晶シリコン型の太陽電池と比較すると、変換効率があまり高くないことが欠点だといわれてきましたが、変換効率は着実に向上されてきています。また結晶型の太陽電池では、モジュールの一部に影がさすと、影がさしていない部分も含めて、モジュール全体の出力が低下してしまうという欠点がありますが、この点CIS型太陽電池モジュールは、影がさしても全体には影響しないことを特長としてうたっています。
個人住宅向けとしての実績は結晶型に比較するとまだ少ないので、慎重に検討する必要がありますが、実力は十分にあると感じました。
ホンダソルテックは、いわずと知れた大手自動車メーカー、ホンダの関連会社となる太陽光発電システム・メーカーです。ホンダソルテックの太陽電池は、CIGS薄膜太陽電池(→用語解説)と呼ばれるもので、昭和シェルソーラーのCISに加えガリウムが使われています。太陽電池としての特性は昭和シェルソーラーのCIS薄膜に近く、影がさした場合の影響が結晶型モジュールよりも小さいということです。
三菱電機のブースでは、多結晶型シリコン・セルの表面に特殊な加工を施すことで、光の反射によるロスを低減させ、非常に高い変換効率(セル変換効率18.6%)を実現するというものが展示されていました。こちらはまだ研究段階で、一般に販売されているわけではありませんが、将来の変換効率向上にひと役買う技術になると期待されます。
さらに三菱電機は、モジュールだけでなく、モジュールで発電された直流電流を家庭で使える交流電流に変換するパワーコンディショナ(→用語解説)の変換効率も非常に高いのが特長です。三菱電機が公表している97.5%という変換効率は、業界最高水準です。モジュールの設置面積が狭いときなどには、有力な選択肢になるでしょう。
当社製品は、人工衛星開発で培ってきた耐久性技術が活かされた高信頼性が特長です。加えて、10年の機器保証で安心感をプラスしています。また大出力太陽電池モジュールと、業界No.1電力変換効率のパワーコンディショナの組み合わせにより、業界トップクラスのシステム出力を実現しています*。さらに、太陽光発電のうれしさを広げる発電モニター「エコガイドTV」をご提案します。家庭のテレビで、発電・消費電力量、電力量収支などを確認できます。
(注 *:2009年2月現在、三菱電機調べ。PV-PN40GのJIS C8961で規定する定格負荷効率。国内住宅用パワーコンディショナの電力変換効率において)
三菱電機は、より環境にやさしい循環型社会実現のため「環境計画」を推進しています。その核となるのが、「エコプロダクツ」「エコファクトリー」「エコロジスティクス」という3つのキーワードです。今後も、製品、製造、物流のエコロジー化を考え、いっそう環境負荷低減に取り組んでまいります。
三菱太陽光発電のWebコミュニティー「ダイヤモンドソーラー倶楽部」もスタートしました。「エコガイドTV」を利用し、データ管理や情報交換、ゲーム感覚コンテンツなどお楽しみいただくことができます。
以上、国内の主要な太陽光発電メーカーの特徴、PV Japan 2009での取材結果をまとめました。ひとくちに太陽光発電システムといっても、メーカーによって原料が違ったり、製造方式が違ったりしますし、それに応じてシステムの特徴も変わります。どれがご自身の設置条件に適しているのか判断するには、最終的には、施工業者などの専門家の意見を聞く必要があるでしょう。しかし専門家と円滑に相談を進めるためにも、ある程度勉強して知識を持っていると心強いものです。各メーカーは、いずれもホームページで自社製品の特徴を紹介していますから、ぜひそちらもあわせて参照してみてください。
(2010/7/23 更新)
2015年3月末をもちまして補助金情報の提供は終了しました。