この太陽生活ドットコムのサイトを公開して2年。ずっと不思議に思っていることがあります。それは「パワーコンディショナ」の記事に対して非常に人気があることです。パワーコンディショナとは、ソーラー・パネルで作った直流の電気を、家庭で使える交流の電気に変換するもので、太陽光発電システムには不可欠の機器です。とはいえ、通常はパネル・メーカーの純正品を使うので、選択の余地はあまりありません。またユーザーがパワーコンディショナのはたらきを勉強して、使い方を工夫する必要があるのかといえば、そういうわけでもありません。どうしてパワーコンディショナの記事がそれほど読まれるのか、編集部でも理由がよくわからないでいます。
今回はそのパワーコンディショナについて説明します。パワーコンディショナをインターネットで調べると、情報はけっこう見つかるのですが、技術者向けのものが多いようです。ここでは、専門家や技術者でない普通のユーザーでもわかるように、できるだけ簡単に説明したいと思います。
以下は、パワーコンディショナの内部構成を図にしたものです。図の左上にあるのがソーラー・パネルです。冒頭で述べたとおり、パワーコンディショナの主要な機能は、ソーラー・パネルが発電した直流の電気を100Vの交流に変換して、家庭の電気製品で使えるようにすることです。しかし実際には、パワーコンディショナには、ソーラー・パネルからできるだけたくさん電気を取り出せるようにしたり、システムを安全に運用したりするために、さまざまな機能が組み込まれています。なお、図は家庭用として代表的なパワーコンディショナの構成を示したもので、メーカーによって構成が異なる場合もあることをお断りしておきます。
パワーコンディショナの構成
ソーラー・パネルからの直流の電気を交流に変換するだけでなく、ほかにもいくつか重要な機能を兼ね備えている。これは代表的な構成。メーカーによっては、異なる構成のものもある。
まず、ソーラー・パネルで発電された直流の電気は、この「ソーラー・パネル効率制御部」に送られます。ソーラー・パネルは、太陽の光を受けると電気を発生します。雲がかかったり、雲が晴れたりすると、それに応じてソーラー・パネルから発生する電気は変化します。いうまでもなく太陽光発電ユーザーは、できるだけ多くの電力を作りたいと思っているわけですが、これにはソーラー・パネルが発生する電気を、最も良い条件で取り出せるようにする必要があります。これを行っているのが図の「最大電力点の追従・制御」です。これを理解するには、少々技術的な話をしなければなりません。こちらは別ページの「[コラム解説]ソーラー・パネルの発電量を最大化する、とは?」にまとめました。電気のことはよくわからないという方は、できるだけ多くの電気を作るためには、ソーラー・パネルの状態を監視して、電気の取り出し方を工夫する必要があるのだと考えておいてください。
いうまでもなく、太陽光発電は太陽の光がさす昼間しかできませんから、パワーコンデョショナも夜間は動作する必要がありません。そこでパワーコンディショナには、朝にソーラー・パネルが光を受けて電気を作り出すと、それを検知して自動的に自分自身を起動し、夜になってパネルからの出力を取り出せなくなったら自動停止する機能が組み込まれています。これが図の「自動起動・停止」の機能です。
ソーラー・パネルが作り出した直流の電気を、家庭の電気製品で使える100Vの交流の電気に変換する部分です。前述したとおり、一般的にパワーコンディショナの機能といえば、この直流→交流変換を指すことが多いです。この変換効率が高ければ、太陽光発電した電気を効率よく使えますが、逆に変換効率が低いと、無駄になる電気が増えてしまいます。
太陽光発電した電気を自宅で使い、余りがあるときには、余剰電力として売電することができます。具体的には、電気を外の電線に戻して、周囲の家などで使ってもらうわけです。これは逆潮流(→用語解説)とか系統連系(→用語解説)とか呼ばれています。
正しく動いているなら問題はありませんが、外の電線に電気を送り出すわけですから、万一トラブルがあると、自分の家だけでなく、周囲の家も巻き込んでしまう恐れがあります。このような事故を防ぐためにパワーコンディショナに組み込まれているのが系統連系保護機能です。パワーコンディショナがなんらかの異常を発生したときには、パワーコンディショナの出力を遮断して、家の中にある電気製品や系統をトラブルから保護します。
パワーコンディショナには、思ったよりもいろいろなはたらきがあることがわかりました。いくらソーラー・パネルの変換効率が高くても、直流→交流変換時の効率が悪くては、使える電力がパワーコンディショナで無駄になってしまいます。通常、パワーコンディショナはソーラー・パネルと同一メーカーの純正品を選択するのが一般的ですが、システムはトータルでの性能が重要ですので、メーカー選定時には、ソーラー・パネルばかりでなく、パワーコンディショナについても機能や性能を確認するようにしましょう。
(2011/9/5 公開)
2015年3月末をもちまして補助金情報の提供は終了しました。