太陽生活ニュース

2012年1月25日(水) 11時15分 公開

ニュース解説:見えてきたEV・PHV普及の課題と可能性

経済産業省は、EV(電気自動車)やPHV(プラグイン・ハイブリッド車)の普及に取り組む都府県を「EV・PHVタウン」として選定し、これら都府県の取り組みをまとめた事例集「EV・PHVタウン構想ベストプラクティス集II」を公表した。

EV・PHVタウンとしては、2009年3月に第1期として8都府県(愛知県、青森県、神奈川県、京都府、東京都、長崎県、新潟県、福井県)が選定され、2010年11月には第2期として10府県(大阪府、岡山県、沖縄県、岐阜県、熊本県、埼玉県、佐賀県、静岡県、栃木県、鳥取県)が追加、現在では18都府県がさまざまなEV・PHVの普及に向けた取り組みを行なっている。

2010年8月時点では、EV・PHVの台数は3000台弱であったのに対し、現在ではすでに1万台以上、急速充電器も200台強から800台強と、増加傾向にある。一方で、取り組みが進んできたからこその新たな気付きや情報が、集まってきているという。経済産業省は、これらの都府県での取り組みをモデル・ケースとして、得られたさまざまな情報を活用しながら、普及啓発や将来的な課題解決、新産業の可能性の追求などに努めるとしている。事例集では、これらの新たな気付きや情報などのほか、経済産業省や各自治体の取り組みをまとめている。これを見れば、いま日本国内で、EV/PHVを取り巻く環境がどのようになっているのかがわかる。

ここでは事例集から、EV/PHV普及の課題と可能性に関して興味深い記述に注目してご紹介しよう。

ガソリン車とは異なる注意点

EV・PHVは、燃料費が安い、ガソリンスタンドに行かなくてもよい(自宅/自社で充電できる)、乗り心地がよい、トルクが大きく加速性能が高いなどのメリットがある。また、8割のユーザーが1日の平均走行距離が40km以下であるため、EVの航続距離(ガソリン車の数分の1程度)でも、多くのユーザーにとってはさほど支障がないという。しかしその一方でEVユーザーは、急速充電器の使い方を知っておく必要があることはもちろん、例外的な長距離利用においては、急速充電器の設置場所を強く意識する必要があるなど、利用において従来車と大きく異なる注意点がある。

EV・PHVに対する優遇策

EV/PHVに対しては、さまざまな優遇策が実施されており、優先スペース(EV/PHVが優先して駐車できるスペース。多くの場合、充電設備が用意されている)の設置や公共施設利用料金割引、駐車場割引、高速道路料金の割引などが行われている。13のEV・PHVタウンでは、車両購入に対して補助金を提供しているほか、複数のEV/PHVタウンが自動車税(地方税分)の軽減策を実施している。このようにEV/PHVに対しては、普及を後押しするためのさまざまな施策が行われている。

課題は充電インフラ

一方でいくつかの課題についてもまとめられている。もっとも身近な課題は、充電インフラについてだ。EVやPHVへの充電は、自宅(自社)で夜間電力を活用して行うことが基本となるため、プライベート用の充電環境を整備することが重要になる。充電インフラには、100V/200Vのコンセント、200Vのコンセント・ポール型充電器、急速充電器などの種類があり、設置場所や充電時間、設置費用などに応じて、EV/PHV購入者や民間企業、自治体が整備している。プライベート用に設置する充電設備は、設置費用の安さから考えて100V/200Vのコンセント(普通充電器)が基本となる。

なお200V用のコンセントには、従来型(タイプA:丸型20A)と新型(タイプB:平型20A)の2種類があり、初期の三菱自動車「i-MiEV」や富士重工業「プラグインステラ」などは従来型のタイプAを採用しているということだ。将来的には、国内大手自動車メーカーのコンセント形状は、すべてタイプBになるとのことだが、付属のケーブルでは充電できないコンセントがある点は留意しておく必要がありそうだ。パブリック充電(民間企業や自治体が設置している充電器)の場合には、どちらの型のコンセントを設置しているか、利用者に分かりやすく周知する工夫があるとしている。

充電コンセントの形状

充電コンセントの形状
2010年11月現在の200V用コンセント形状。その後発売された三菱「ミニキャブMiEV」や、トヨタ「プリウスPHV」はタイプB対応。(図提供:EV・PHVタウン構想ベストプラクティス集II)


マンションや賃貸駐車場では、車両所有者が充電設備を設置できないため、意志決定に一定の手続きが必要となる。またマンションに多い機械式駐車場への充電設備の設置は、戸建などへの設置に比べてコストが高く、マンション管理組合の理解を得られる考え方の整理が必要としている。愛知県や静岡県などでは、マンション・デベロッパーに新築マンションへの充電設備の設置を働きかけ、一部で充電設備付きのマンションの販売が始まっている。神奈川県では、「基礎充電インフラ整備研究会」を設立、マンションなどに充電設備を設置する際の諸課題を整理するための情報交換を行なっているということだ。

急速充電設備については、主要幹線道路沿いの集客施設の利用率が高く、こうした利便性の高い場所には、自治体が働きかけなくても民間で自主的に充電設備を設置するケースが出てきている。そこで自主的な設置が進まない、かつ移動の要所となりうる場所にいかに設置していくかがポイントになると課題を挙げている。また、現在はEVの方がPHVより普及しているので、急速充電設備の方が注目されているが、PHVの一般発売により今後はパブリック普通充電設備のニーズが高まる可能性があると見ている。さらに今後、EVの普及が進み、急速充電器の「充電待ち」が発生することが懸念される。充電用の駐車スペースに充電以外の車両が停車しないような工夫や、充電が終わった車両に移動してもらう工夫も必要だ。このほかパブリック充電の課金方法に関する課題もまとめられている。

この事例集は、EV/PHVの現状を包括的に知ることができる便利な資料だ。

《太陽生活ドットコム 小林》

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