太陽光発電では、太陽の光から電気を作り出して利用できるようにします。発電時に別のエネルギーを使うわけではありませんし、CO2も排出しません。つまり太陽からタダで降ってくる光のエネルギーを有用活用できる電気に代えてくれるわけですから、稼働時だけに注目すれば環境にやさしいといってよいでしょう。
しかし太陽光発電システムを製造するときには、エネルギーを使っていますし、CO2も排出しています。太陽光発電はエコだったとしても、この製造時に使うエネルギーや、製造時に発生するCO2を、太陽光発電の稼働によって回収できるのでなければ、全体として見ればエコとはいえません。
これらを測る指標として、エネルギー・ペイバック・タイム(→用語解説、以下EPT)とCO2ペイバック・タイム(→用語解説、以下CO2PT)の2つがあります。まずはこの指標の意味について簡単に説明しておきましょう。
下の図を見てください。グラフの縦軸は、エネルギー量です。そして左側の棒グラフは、太陽光発電システムの製造に必要だったエネルギーの量を表しています。
製造された太陽光発電システムを設置して稼働を始めると、太陽光から電気のエネルギーを生み出してくれます。こうして生み出されるエネルギーで、製造時のエネルギーを回収していきます。右側の棒グラフは、1年目、2年目……と稼働して作り出すエネルギーの量を表しています。
下のグラフでは、X年目に回収エネルギーが製造時のエネルギーを超える様子を示しています。つまりX年目よりも長く太陽光発電システムが使えれば、製造時以上のエネルギーを作り出せることになります。逆に、X年目以前にシステムが故障して発電できなくなったら、製造時のエネルギーは回収できません。
エネルギー・ペイバック・タイムの考え方
このように、どれくらいの期間で、製造時にかかったエネルギーを回収できるかを表したものがEPT(エネルギー・ペイバック・タイム)です。CO2PTのほうは、EPTのエネルギーをCO2に置き換えたものです。つまり、製造時に発生するCO2を、どれくらいの期間で回収できるかを示します。
ここで問題は、太陽光発電システムのEPTやCO2PTがどれくらいなのかということです。一般に太陽光発電システムの寿命は、10年~20年程度はあるとされています。EPTやCO2PTがこれよりも大幅に長ければ太陽光発電システムはエコではないことになります。
しかし独立行政法人 産業技術総合研究所 太陽光発電研究センターが2007年に発表した資料(→資料)によれば、太陽光発電システムのEPTとCO2PTはそれぞれ以下のようになっているとあります。
太陽光発電システムのエネルギー・ペイバック・タイム
太陽光発電システムのCO2ペイバック・タイム
このように、最もEPT/CO2PTが長い多結晶シリコン型太陽電池を採用したシステムでもEPT/CO2PTは約2年/約2.7年です。薄膜シリコン型(→用語解説)や、CIS型太陽電池(→用語解説)では、いずれも1年前後とさらに短期間です。
太陽光発電システムといえども数年で壊れるものもあるので、一概にはいえませんが、一般論として10年以上継続的に発電すると仮定すれば、太陽光発電システムはエネルギーの面でも、CO2排出抑制の面でも十分にエコだといってよいでしょう。
(2010/8/6 公開)
2015年3月末をもちまして補助金情報の提供は終了しました。