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よくある質問

同じ多結晶シリコン型なのにメーカーによって変換効率が違うのはなぜですか?

住宅向けに販売されるソーラー・パネルの主流は、多結晶シリコン型太陽電池(→用語解説)です。どのように作るかは、多結晶シリコンウェハの製造工程を写真で紹介した以下の記事が参考になるでしょう。

具体的にどのメーカーが多結晶シリコン型のソーラー・パネルを販売しているかは、以下の記事にある一覧表をご確認くだくさい(表中の「セル種類」の項目)。

この表にもあるとおり、同じシリコン結晶を利用するソーラー・パネルには、単結晶シリコン型もあります。あくまでも一般論ですが、単結晶型は多結晶型よりも変換効率に優れるといわれます。表中の「変換効率(→用語解説)」の値(または「出力/面積」の値)が大きいほど変換性能は高いことになります(HIT型も内部では単結晶シリコンを使っています。→用語解説)。

同じ多結晶型同士でも、変換効率が製品によって異なっていますね。同じ製造方法なのに、どうしてこのような違いが生まれるのでしょうか、その背景についてご説明します。

「セル変換効率」と「モジュール変換効率」

変換効率が大きければ、同じ日照で同じ面積でも、より多くの電気を作れますから、ソーラー・パネルを選択する際の重要なポイントになります。ただ、ひとくちに「変換効率」といっても、「セル変換効率」と「モジュール変換効率」の2種類があります。カタログなどではこれらが適宜使い分けられていますので注意してください。セルとモジュールの関係は次のとおりです。

セルとモジュールの関係

セルとモジュールの関係
複数のセルを並べて、1枚のモジュール(ソーラー・パネル)を作る。

セルというのは、ソーラー・パネルを構成する1つの部品で、通常ソーラー・パネルはこの絵のように、複数のセルを組み合わせて作ります。消費者向けには、わかりやすさから「ソーラー・パネル」と呼ばれることが多いですが、技術者向けの文書などでは「モジュール」と呼ばれています。これらは同じものだと思っていて差し支えありません。

「セル変換効率」は、単体のセルだけを取り出して、その変換効率を算出したものです。一方の「モジュール変換効率」は、ソーラー・パネルになった状態での変換効率です。セルを単体で屋根にのせるわけではないので、消費者の視点では、「モジュール変換効率」のほうに注目すべきでしょう。

セルを組み合わせてモジュールを作るのなら、セル変換効率もモジュール変換効率も同じでは? という疑問を持ったかたもいるでしょう。しかし通常のパネルでは、セルとセルの間にわずかな隙間がありますから、確実にこの分は変換効率が落ちます。メーカーがカタログで「世界最高水準のセル変換効率」などとセル変換効率のほうを取り上げるのは、そのほうがより有利な数字を表記できるというのが理由の1つでしょう。セルの変換効率が、モジュールの変換効率にも大きく影響するわけですが、モジュールを製造する過程にも工夫の余地があるのです。以下では、もっとも影響の大きいセル変換効率に注目して説明を進めます。

セル変換効率を左右する要素

さて、「同じ多結晶セルなのに変換効率が違うのはなぜか?」という本題に移りましょう。一番影響が大きいのは、「結晶品質が製品によって違う」ことです。つまり同じ「多結晶」でも、品質のよい多結晶と、そうでない多結晶があるということです。そもそも「多結晶」とは何でしょうか?

コンピュータ・チップなどに使われるシリコン結晶は、「単結晶」です。単結晶シリコンは、シリコン原子(Si)が規則正しく並んだ構造をしています。模式的に絵にすると次のような感じです。都合上、ここでは2次元のシリコン配列を描きましたが、実際には、3次元的にこうした規則正しい配列でシリコン原子が並んで、全体が1つの大きな結晶になっています。

単結晶シリコン

単結晶シリコン
シリコン原子(Si)が規則正しく並んでいる。

このように結晶配列が規則正しいと、電子が結晶内部をより移動しやすくなります。一般論として、単結晶シリコン型の太陽電池のほうが、多結晶シリコン型太陽電池より効率が高いといわれるのはこのためです。

変換効率の点では有利な単結晶シリコンですが、製造コストが高いという問題があります。そこで開発されたのが、多結晶型です。多結晶型は、部分的にはシリコン原子が規則正しい配列をしていますが、単結晶のように完全ではありません。複数の単結晶のブロックが、つぎはぎになっているのです。図にすると次のような感じです。

多結晶シリコン

多結晶シリコン
部分的には単結晶と同じように規則正しく並んでいるが、完全ではなく、単結晶のブロックがつぎはぎになっている。

つぎはぎになっている部分は電子が移動しにくく、それにより変換効率が少し低下しますが、実用上は問題のないレベルであるとともに、単結晶と比較すると大幅に製造コストを下げられることから、多くのメーカーのソーラー・パネルに多結晶シリコンが使われているというわけです。

同じつぎはぎの多結晶シリコンでも、内部の単結晶ブロックが大きければ大きいほど、つまり、つぎはぎが少ないほど、性能は向上します。逆に単結晶のブロックが小さければ、それだけつぎはぎが増えるので性能は下がります。結晶品質のよしあしとはこういうことです。

多結晶シリコン・ウェハを製造するメーカーの関係者に聞いたところでは、「結晶品質を高めるにはさまざまなノウハウがある。当社は3年間試行錯誤を繰り返して、品質を大幅に向上させることに成功した」ということでした。ある種職人芸というか、そういう部分が結晶作りにはあるようです。

もっともセル変換効率に影響を及ぼすのは結晶品質ですが、これ以外にも、電線をセルの裏側に配置して表面積を増やしたバックコンタクト・セル(→用語解説)とか、セルの表面に特殊な加工を施して変換効率をあげたセルなどがあります。これらもセル変換効率に影響を及ぼします。

変換効率だけに振り回されない製品選びを

まとめると、同じ「多結晶シリコン」であっても、結晶品質が製品によって異なるため、メーカーや製品によって変換効率が異なってくる。そのほかセル内部の電線の配線方法とか、表面処理などによってもセルの変換効率が変わる場合がある。またパネル(モジュール)を作る段階でも、セルの配置やパネルのデザインによってムダな面積が大きいと、モジュール変換効率が下がる、ということです。

気になる変換効率ですが、カタログ値は温度などを一定の条件に算出したもので、実際に屋根にのせた場合の効率とは必ずしも一致しません。製品選びでは、カタログの性能に振り回されすぎないようにご注意ください。

(2010/9/10 公開)

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