太陽生活 > Special > 賃貸アパート・オーナーのための太陽光発電入門 2013年春改訂版(2/2)

賃貸アパート向け選択できる3つの方式

全量買取が選択できるようになった現在、賃貸アパート向けの太陽光発電システムでは、以下の3つから設置方法を選択できます。それぞれに特徴があり、設置の目的など条件次第でどれを選択するかは変わりますが、後で述べるように、買取期間が長く有利なことから、「全量配線」が選ばれるケースが急増しているということです。

賃貸アパートに太陽光発電システムを設置する方式には、各戸連系(かくこれんけい)と共用連系(きょうようれんけい)、全量配線(ぜんりょうはいせん)という3種類があります。

10kW未満 10kW以上
各戸連系 共用連系 全量配線
買取方式 余剰買取 余剰買取 全量買取
買取期間 10年 10年 20年
国の補助金 ×

賃貸アパート向けの太陽光発電システム設置方式

入居者にメリットがある「各戸連系」

各戸連系とは、屋根に設置したソーラー・パネルを各部屋に接続して、入居者が太陽光発電の恩恵に浴せるようにする方式です。パワーコンディショナ(→用語解説)も各部屋に設置して、各戸がそれぞれ独立して電力会社と系統連系します。図にあるとおり、特定のパネルは特定の部屋に接続される形式になります。

各戸連系の設置方式

各戸連系の設置方式
屋根に設置されたソーラー・パネルは、各戸に設置されたパワーコンディショナに接続され、各戸がそれぞれ電力会社と系統連系をする。賃貸アパートへの設置ではあるが、4戸がそれぞれ独立して太陽光発電、系統連系するので、構成としては通常の住宅への設置に近い。この場合、賃貸アパートの入居者が太陽光発電の恩恵を受ける。

ソーラー・パネルで発電された電気は、パネルが接続された各戸のパワーコンディショナにそれぞれ送られ、各戸で入居者が使います。そして余剰電力が出れば、売電もできます。系統連系しているのは入居者ですから、売電収入は入居者が受け取ります。賃貸アパートへの設置ではありますが、この方式は、見かけ上の構成は、通常の個人住宅に設置して、各個人が系統連系するのに近い接続形式です。

賃貸アパートの設備ですから、設置費用を負担するのはオーナーですが、太陽光発電で電気代が安くなったり、売電収入を得たりできるのは入居者で、オーナーには直接的なメリットはありません。入居者側からすれば、そんなうまい話があるのかと思ってしまいますが、最近は賃貸住宅の空室も増えており、空室対策を理由に、この方式を選択するオーナーもいるそうです。

ただしこの方式には、いくつかの難点があります。

  •  ソーラー・パネルを各戸に分けてしまうので、一戸あたりの出力はどうしても小さくなってしまう。一戸あたりにすると、電気代の節約効果や売電メリットはあまり大きくない。
  •  一戸あたりの出力は小さくても、パワーコンディショナは各戸に必要で、配線工事も複雑になるので、キロワットあたりの工事単価は高くなりがち。
  •  新築ならよいが、既築物件ではすでに居住者がいるので、各戸への配線工事が伴う設置工事は簡単でない。

尾上さんによれば、「ハウスメーカーの新築物件などではこの方式を採用する例もありますが、既築物件への設置では、この方式が選ばれることはほとんどありません」とのことでした。残念ながら数は少ないようですが、賃貸アパートでも入居者が太陽光発電できて、売電もできる物件もあるんだそうです。興味がある方は、対応物件を探してみてはどうでしょうか。

国の補助金もあり、発電したほとんどの電気を売電できる「共用連系」

一方の共用連系では、ソーラー・パネルのすべてをオーナーが所有するパワーコンディショナに接続し、電力会社との系統連系はオーナー自身が行います。ソーラー・パネルで発電した電気は、ごく一部が共用設備などで使われる以外は、ほとんどを余剰電力として売電できます。売電単価は、通常の住宅向けと同じです。この場合、売電収入はすべてオーナーのものになります。設置するときには、国の補助金ももらえます。ただし、設置できるソーラー・パネルの最大出力は10kW未満までです。

共用連系の設置方式

共用連系の設置方式
ソーラー・パネルは、すべてオーナーが所有するパワーコンディショナに接続され、オーナー自身が電力会社と系統連系する。太陽光発電した電気は、一部共用設備(共用部分の電灯など)で使われるが、ほとんどは余剰電力として売電できる。

いま最も人気がある「全量配線」

全量買取制度が開始されて以来、最も人気があるのはこの「全量配線」だそうです。尾上さんによれば理由は単純で、「設置時の補助金はもらえないし、設置費用は高額になりますが、10kW以上という大出力のパネルを設置してたくさん発電できて、しかもそれを全量、20年間売電できるので、長い目で見れば経済的な利点が大きいから」だそうです。

全量配線の設置方式

全量配線の設置方式
この場合は10kW以上のパネルを設置する必要がある。補助金はないが、発電した電気を全量、20年間売電できるので経済的な利点が大きい。

しかし日本エコシステムの独自調査によれば、賃貸アパートの屋根に設置できるソーラー・パネルの平均出力は8.9kW程度で、10kWに足りません。このような場合、変換効率の高いパネル(同じ大きさでも出力の大きなパネル)を選択して10kW以上にする方法もありますが、パネル単価が高くなってしまうので、なかなか見合いません。そこで日本エコシステムでは、新たに屋根付きのカーポート(駐車場)を作り、そこにもパネル(3kW程度)を置いて、10kW以上にするプランなどを提供したところ人気だったそうです。「カーポートだけ見ると割に合いませんが、住宅屋根と合算で10kW以上にすれば全量配線を選択できるようになります。カーポートが入居者向けサービスにもなり、オーナーさんには好評でした」とのこと。

(2013/6/18 公開)

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