太陽生活 > Special > 賃貸アパート・オーナーのための太陽光発電入門 2013年春改訂版(1/2)

日本の太陽光発電といえば、補助金政策などの方針もあり、当初は個人住宅向けが主流でした。そんな中で、国からの補助金の適用範囲が広がった2010年4月以降、賃貸アパートやマンションでも注目度が高まり、屋根や屋上にソーラー・パネルを設置するところが現れ始めました。

本記事の初版が公開されたのは、こうした流れが出始めた2011年2月で、早くから賃貸アパート向けの太陽光発電システムの設置に取り組んでおり、豊富な設置実績を持つ株式会社日本エコシステムを取材し、主に「住宅向けの設置と、賃貸アパート向け設置の違い」を中心にまとめました。この当時は、賃貸アパート向けの設置といっても、補助金にせよ売電にせよ、条件は住宅向けと同等で、「住宅向け設置の拡大版として、どうやって賃貸アパート設置を実現するか」というのが主眼でした。あくまで個人住宅向けに準じるため、最大出力は10kW未満でなければならないという「上限」もありました。

しかしこの状況は、2012年7月に開始された再生可能エネルギーの固定価格買取制度によって一変しました。この制度は、工場や病院・学校などといった施設に設置される大出力のものや、発電自体を事業とする大規模な太陽光発電所(いわゆるメガ・ソーラー)などにも適用される支援策で、太陽光発電を10kW以上設置する場合の2012年7月の開始当初の条件は、発電したすべての電気を全量、住宅向けと同じ42円/kW(税込み)で売電でき、しかもこの条件で売電できる期間が住宅向けの2倍にあたる20年という、思い切った内容でした(以下、10kW以上の買取については、全量買取制)。

この買取制度開始以来、個人住宅よりも広い屋根を持つ賃貸アパートでの設置は、「10kWシステム未満を設置して住宅向け条件を適用する」から、「10kWシステム以上を設置して、産業用条件を適用する」に大きく方向転換しました。

そこで今回は、賃貸アパート向けの太陽光発電システムの設置に詳しい株式会社日本エコシステムの尾上(おのうえ)さんに再びお話しを伺い、賃貸アパート向け太陽光発電の最新動向を反映させて記事を更新しました。

住宅向けと産業用太陽光発電の違い

最初に、今回の話題の中心となる産業用太陽光発電について簡単にまとめておきましょう。全量買取制は、住宅よりも大規模な産業向け太陽光発電システムにも適用される買取制度です。

出力 10kW未満
(主に住宅向け太陽光発電)
10kW以上
(産業用太陽光発電)
買取方式 余剰買取 全量買取
電力買取期間 10年間 20年間
国の設置補助金 ×
買取価格(2012年度) 42円/kW 42円/kW
買取価格(2013年度) 38円/kW 37.8円/kW

住宅向け太陽光発電と産業用太陽光発電の違い

「余剰電力買取制(→用語解説)」です。これに対し、太陽光発電したすべての電気を売電できるのが「全量買取制(→用語解説)」です。

両者で大きく違う点の1つが買取期間です。10kWシステム未満が10年であるのに対し、10kWシステム以上は20年と、長期にわたって買取が保証されています。ただし、設置時の国の補助金は、10kWシステム以上にはありません。

住宅向けと賃貸アパート向け設置で何が違うのか?

本記事で対象とする賃貸アパート向けの太陽光発電システムの設置とは、たとえば次のようなものです。写真は、2階建て、一棟14戸の賃貸アパートの屋根に約14kWのソーラー・パネルを設置した例です。

賃貸アパートへの太陽光発電システムの設置例

賃貸アパートへの太陽光発電システムの設置例
賃貸アパートは屋根が大きいため、大出力のソーラー・パネルを搭載しやすい。 (写真提供:日本エコシステム)

一見すると、住宅向けの設置と大して変わらないようにも思えますが、大きく事情が異なる部分もあります。太陽光発電システムを設置するとき、通常の個人住宅向けと、賃貸アパート向けでは何が異なるのでしょうか? 住宅向けと比較した賃貸アパート向け設置の利点と欠点・注意点について以下にまとめてみましょう。

利点 欠点・注意点
住宅向けと比較すると屋根が大きく、大出力のソーラー・パネルを設置できるため、より多く発電できる。 住宅向けの太陽光発電システム製品をそのまま使えない場合や、特別な工事が必要な場合がある。
大出力のパネルを設置できるため、キロワットあたりの設置工事の単価を下げられる。 メーカー保証外の工事を設置工事店の判断で行ってしまうケースがある。最悪の場合、メーカー保証を受けられない可能性がある。
太陽光発電した電気のほとんどを売電して収益化できる(共用連系、全量配線の場合(後述))。 屋根裏が簡単に見えないなど、設置にあたって賃貸アパート独特の事情がある(既築物件に設置する場合)。

賃貸アパート向け太陽光発電システム設置の利点と欠点・注意点

上の写真からもわかるとおり、賃貸アパートの屋根は個人住宅よりも大きいので、より大出力のソーラー・パネルを設置して、たくさん発電し、売電収入を得ることができます。「屋根が大きいから大出力のパネルが置ける」などはわかりやすいですが、追加説明が必要な単語や、項目もありますね。それらについて、次ページから詳しく見ていくことにしましょう。

(2013/6/18 公開)

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