太陽光発電システムの設置コストは、新築住宅に設置する場合と既築住宅に設置する場合では大きく違いますし、屋根の大きさや形状、必要な補強工事などによっても変わってきます。また発電量についても、地域による日照条件の違いなどによって異なってきます。このため、最終的に購入にいくらかかって、回収に何年かかるかはケース・バイ・ケースであり、一概にいくらとはいえません。
以上を踏まえたうえで、ここでは目安として、経済産業省の試算を紹介します。国は、10年程度で設置コストを回収できることが普及のガイドラインと考えており、太陽光発電システム購入に対し、さまざまな支援策を実施、検討しています。1つは、すでに開始されている補助金です。国をはじめ、都道府県や市区町村の中にも、個別に補助金を提供したり、設置する際の資金として固定・低利な融資をするなどの支援策を実施しているところがあります。
さらに国は、向こう10年間、太陽光発電による余剰電力を、高額(当初は2倍程度)で買い取る法案を可決し、今年末から実施する予定です(→関連記事)。余剰電力を高値で売れるようにすることで、太陽光発電システムへの投資回収期間を短縮することを狙っています。
さて、では以下で、現行制度と新制度(高額買い取り策実施後)のそれぞれについて、経済産業省の試算の内容について具体的に見ていましょう。なお経済産業省の試算によれば、住宅1戸当たりに設置される太陽光発電システムの出力の平均値は3.5kW程度で、これを搭載する場合、新築住宅への設置で185万円、既築住宅への設置で225万円としています(→関連記事)。
まずは、新築住宅に太陽光発電システムを設置する場合について見てみます。以下は、新築住宅に3.5kW出力の太陽光発電システムを185万円で設置する場合で、現行の余剰電力買い取り価格(24円/kWh)で10年後の収支を試算したものです。諸条件についてはグラフの下に記載しました。これらの条件のうち、*2の「補助金」以外の部分は、以下すべてのグラフで共通です。
この試算では、国からの補助金と減税措置で43万円のコスト回収、グリーン電力証書(→用語解説)の取得や地方自治体の補助金分として20万円のコスト回収、10年分の電気料金の節約が35万円、余剰電力の10年分の売却益が50万円となっています(価格はいずれも概算)。これらのコスト回収を減算しても、まだ37万円の負担残があります。つまり現行の余剰電力買い取り制度下では、10年経っても費用を回収できないことになります。実際には、太陽光発電システムは10年以上使えますから、10年以降も電気料金の節約分や余剰電力の売電収入が見込めるので、十数年後には費用回収が可能でしょう。
それでは、余剰電力を高額(48円/kWh)で買い取るという新制度になるとどうでしょうか。当然ながらこの場合は、前記グラフの売電収入が50万円から倍額の100万円になります。グラフは以下のとおりです。
このように、余剰電力の高額買い取り制度下では、10年後には13万円の利益が出る計算になります。繰り返しになりますが、これはあくまで試算であって、実際の工事費は各家庭で変わりますし、自治体によっては補助金がない場合もあります。また、電気料金の節約や売電収入などの努力目標も入っているので、このとおりになるとは限りません。とはいえ、新築に設置する場合で、新制度下では、10年程度で設置費用を回収できる見込みが相応にあるとはいえます。
次は既築住宅に太陽光発電システムを設置する場合を見てみましょう。既築住宅への設置では、屋根の補強工事が必要になる場合があるなど、新築からさらに不確定な要因が入ります。こちらもあくまで目安のための概算です。
前述のとおり、3.5kWのシステムを既築住宅に設置するコストは225万円と仮定しています。現行制度下での試算は以下のとおりです。
新築の場合と異なり、住宅ローン減税は受けられませんが、この試算では、省エネ改修による減税措置として23万円を見込み、国の補助金と合わせたコスト回収を47万円と見込んでいます。これ以外の諸条件は新築の場合と同様です。
それ以外のコスト回収が変わりませんから、当然ながら、初期の設置費用が高くなる分、10年後の負担残も新築の場合より大きくなります。約73万円が回収できない計算です。
余剰電力の高額買い取りが実施された新制度下では、10年間の売電価格が50万円から100万円に増えますが、それでも23万円の負担が残ります。
経済産業省は、10年以後の売電収入、電気料の節約により、最長でも15年程度でコスト回収ができるとしています。
(2009/8/21 公開)
2015年3月末をもちまして補助金情報の提供は終了しました。