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行政刷新会議、平成22年度予算の事業仕分けで、住宅向け太陽光発電システムの設置補助金予算を「見送り」判定

11月27日に実施された政府行政刷新会議の事業仕分けにおいて、ワーキンググループは、経済産業省が要求していた平成22年度の「住宅用太陽光発電導入支援対策費補助金」予算(要求額412億円)に対し、「来年度予算計上見送り」の判定を行いました。

まだ最終的な決定ではありませんが、最終的にこの判定どおりに予算計上が見送られると、現在国が支給している住宅向け太陽光発電システム設置補助金(1kWあたり7万円、10kW未満)は2010年3月末で終了し、2010年4月以降は補助金がなくなります。ここでは、行政刷新会議が公開している事業仕分けの評価コメントをもとに、仕分けの内容をお知らせします。

太陽光発電システム普及の重要性は認識

鳩山総理が国連で発表し、事実上の国際公約となった地球温暖化ガスの削減目標(2020年までに1990年比25%削減。以下「CO2 25%削減目標」)を達成するために、太陽光発電システムのさらなる普及促進が必要であること自体は、どのコメントを見ても共通認識となっているようです。しかし、現在の補助金制度の問題点として、以下のようなポイントが挙げられています。

  • 旧自民党政権時代に中途半端に策定された施策である。
  • 新政権下でのCO2 25%削減目標に対する国家戦略がまだ策定されていない。
  • 補助金支給事業の委託先である太陽光発電協会に27億円の業務運営費が流れており、この業務委託費は大幅に縮減する必要がある。

設置補助金から太陽光発電の全量買い取りによる支援策への移行を支持

多くのコメントで共通しているのは、現在の設置時の補助金を支給する代わりに、太陽光発電されたすべての電気を、好条件の固定価格で買い取ることにより、太陽光発電に対する経済的なメリットを提供し、普及を促そうという考えです。コメント中にある「フィードイン・タリフ」とは、欧州各国などで導入された自然エネルギーの固定価格買取制度のことで、ここでは太陽光発電された電力を固定価格で全量買い取る制度(→用語解説)のことを指しているものと思われます。

現時点でも、太陽光発電による余剰電力(→用語解説)を売電できます。特に2009年11月1日からは、この際の余剰電力の買取価格を、それ以前の24円/kWhから、48円/kWhに倍増させる施策が開始されたばかりです(→関連記事)。ただしここで売電できるのはあくまで「余剰電力」であって、太陽光発電された電力全体ではありません。余剰電力は、

  余剰電力=現在太陽光発電している電力(①) - 現在消費している電力(②)

によって求められます。したがって太陽光発電していても、自家消費分がそれより多ければ、余剰電力は発生しません。

これに対し、全量買取制になると、②の消費電力とは無関係に、太陽光発電した①のすべての電力を売却できます。買取価格が通常の電気代よりも高額だとすると、どれだけ電気を自家消費しても(買電していても)、太陽光発電をしていれば、一定の利益が得られることになります。もちろん、自家消費を削減して買電を減らせば、より利益は大きくなります。

太陽光発電システムの設置時の補助金はなくすが、その分を現在の余剰電力の買取よりも有利な全量買い取り制度を導入することで、初期費用は増えても、長い目で見た場合の利益を増やして、太陽光発電システムの普及自体は減速させないようにする、というのが今回の仕分けの基本的な考えだと思われます。

いずれにせよ、支援策は国民負担に

長い目で見て設置補助金と変わらないような支援を継続するのなら、補助金をやめても国の支出は変わらないのではないか、と考える方がいるかもしれません。しかしそれは正しくありません。

現在、国が支給している設置時の補助金は、国の予算、つまり税金から支払われています(冒頭で述べたとおり、平成22年度の要求額は412億円)。これに対し、現在の余剰電力の買取は、国の予算ではなく、全国民に電気代の一部として薄く広く課金して徴収したお金が使われています(これは太陽光サーチャージ(→用語解説)と呼ばれています)。先ごろ民主党の管直人副総理・国家戦略担当相が、太陽光発電システムの強力な普及策として全量買い取り制度の早期導入の意気込みを語った際、「国は1円も使わない施策」とコメントしていましたが、その理由はこれです。

したがって設置時補助金を取りやめれば、国の予算は削減できる一方で、全量買取制度を導入しても、国の予算は影響を受けません。太陽光発電の普及を妨げないようにしながら「国の予算を減らす」という意味では、確かに有効な方法かもしれません。

しかし国の予算の元となる私たちの税金にせよ、電気代に追加される太陽光サーチャージにしろ、国民の財布をあてにしている点ではまったく変わりません。電気を使わずに文明的な生活をすることは事実上困難であり、太陽光サーチャージにしても、国民から見れば支払いを避けられない出費だからです。

現在の1kWあたり48円の余剰電力買取に対し、国民負担は1世帯1カ月あたり30~100円程度とされていますが、全量買取制度に移行すれば、この負担がさらに増えることは間違いありません。結果として、電気代は高額になります。もしそうなれば、例えばオール電化住宅など、エネルギー源のすべてを電気に依存している世帯は、より大きな負担を強いられることになるでしょう。こうした点はしっかり踏まえて、今後の議論のゆくえを見守る必要があります。

経済産業省は12月末の予算編成に向け出直し

事業仕分けの評価コメントのまとめを見ると、「12月末の予算編成までにさらに議論・精査し、必要なら出し直すように」と締めくくられています。つまり現在の要求内容では「見送り」と決定されたものの、内容をもう一度練り直して提出すれば、復活の可能性があることをにおわせています。経済産業省は、復活に向けて要求を出し直すことになるでしょう。太陽光発電システムの設置を検討されている方にとっては、目の離せない動向です。本サイトでも、追加情報があり次第、継続的にみなさんにお伝えしていく予定です。

なお経済産業省は、今回の件を含め、予算事業に関するパブリックコメントを募集しています。今回の仕分けの結果について意見がある方は、そちらにコメントを送信できます。

(2009/11/30 公開)

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