光(ひかり)博士:
本業は太陽光発電システムの研究だが、世の中に太陽光発電を普及させるために、初心者を対象とした太陽光発電の教室を開いている。
緑(みどり)ソーラー:
一男一女を持つ専業主婦。クリーンで家計も助かると聞き、太陽光発電に興味を持った。わからないことだらけなので、光博士の教室に勉強しにやってきた。
ここは太陽光発電の普及を進める光(ひかり)博士の研究室。太陽光発電についてわかりやすく教えてくれる教室があると知り、興味を持ったソーラーママがやってきた。
ごめんください。緑(みどり)ソーラーと申します。太陽光発電について教えてくれる教室というのはここですか?
ああ、電話をもらった緑ソーラーさんね。さあどうぞ。ワシの名は光(ひかり)。太陽光発電の普及が私の仕事じゃ。わからないことがあれば遠慮なく聞きなさい。
はい、光博士。
ではさっそくですけど、太陽光発電を家につけるにはいくらかかるんですか?
いきなりそこからかい……。それじゃ反対に尋ねるが、いま冷蔵庫はいくらするんじゃ?
そんなの簡単にいくらって答えられませんよ、博士。大きさもいろいろだし、ドアがいくつあるとか、勝手に氷ができるとか、どんな家族が、どこで、どんなふうに使うか教えてくれなきゃ。
そりゃそうじゃな。太陽光発電もそれと同じじゃ。太陽光発電がおおよそどんなもので、何が必要なのか。どんな種類があって、それぞれ何が違うのか、おおまかにでも知らないと、自分で考えられないし、値段を聞いてもそれが安いのか高いのか、判断できんじゃろう。ここはひとつ少し辛抱して、勉強せにゃいかん。
うーん、そうですか…。
少し以前から、環境問題などで自然エネルギー利用は注目されておったんじゃが、2011年3月11日に起こった東日本大震災と、その影響による原子力発電所の重大事故が大きな転機になって、太陽光発電が注目されるようになったのはご存じじゃな?
もちろんです! 原発事故は本当に怖かった……。難しいことはよくわからないけど、やっぱり小さい子どもを持つ親として、原発はなくなってほしいというのが正直な気持ちです。安全な太陽光発電で作った電気で生活できるなら、こんなうれしいことはありません。
うむ。エネルギー問題というのはそう簡単にはいかんのじゃが、原発依存を見直す大きなきっかけになったことは確かじゃな。
すぐにでも太陽光発電を始めよう、とも思ったけど、聞けばけっこうなお値段がするらしいし、家計を預かる主婦としてはやっぱり慎重になっちゃいます。
安い買い物ではないが、国や市区町村などが太陽光発電を始める人に補助金を出したりしておる。補助金の額は住んでいる地域によるんじゃが、太陽光発電を始めると電気代も安くなるし、勉強してうまく使えば、長い目で見れば家計も得になるんじゃ。
えっ、家計にお得? それじゃあがんばらなくちゃ!
では、さっそく説明を始めるとしよう。
太陽光発電というのは、太陽の光のエネルギーで電気エネルギーを作ることじゃ。明るいところだと電池いらずで使える電卓は知っとるね。原理はあれと同じ。あれをもっと大がかりにして、冷蔵庫も洗濯機もエアコンも動かしてしまおうというのが太陽光発電じゃ。
太陽の光にエアコンを動かすようなエネルギーがあるんですか?
確かに直感的には分かりにくいじゃろうな。だが、ある試算によれば、地球に降り注ぐ太陽光エネルギーの1時間分で、世界で使うエネルギーの1年分をまかなえるといわれておる。
ええーっ! たった1時間で世界の1年分、ですか?
まぁ、もちろんこれは計算上のことで、現実はそう簡単な話ではない。ただ、太陽光はそれくらい大きなエネルギーを持っているということじゃ。
ふうーん。太陽ってスゴイんですね!
難しい話はさておき、まずは実物を見てみよう。ほれ、これがソーラーパネルと呼ばれるもんじゃ。これを屋根に置いて、そこに太陽の光が当たると電気ができるというわけじゃ。
へえー。よく見ると、小さな正方形の板が並んでいるんですね。ひとつ分は一辺15cmくらいかなぁ。
うむ。それはセル(cell)と呼ばれておる。ソーラーパネルには、このセルがいくつか並べられているんじゃ。ちなみに、いま見ているセルは正方形じゃが、形や大きさはメーカーによっていろいろじゃよ。
博士、セルを近くで見ると青黒くて、まだら模様が入ってますね。
そう。まだら模様はシリコンという原料の結晶じゃ。詳しくはおいおい説明するとして、簡単にいうと、シリコンという原料をいったん溶かして、ゆっくり冷やして結晶にしたものを四角く、薄く切ったものがセルなんじゃ。
ふーん。セルの表面を見ると、何やら銀色の線が入ってますね?
それは、太陽光発電で作られた電気が流れる電線じゃ。発電された電気はここに集められて、家の中に送られるんじゃ。
なーるほど。
そうかあ、このソーラーパネルを屋根に置けば、電気代がダタになるんですね!
ちょ、ちょっと待ちなさい。そう簡単ではないんじゃ。ソーラーパネルだけではだめなんじゃな。太陽光発電に対応した家の模式図を見ながら説明しよう。
ソーラーパネルを屋根に置けば発電はできるが、それだけでは家にある家電製品では使えんのじゃ。太陽光発電でできる電気は直流という種類なんじゃが、家のコンセントには交流という種類の電気がきていて、家電製品は交流の電気を使うようにできておるんじゃよ。
直流? 交流?
うむ。技術的な話はさておき、発電所で作った電気を家庭まで送るときに、交流のほうが都合がいいんじゃ。だが太陽光発電モジュールでできる電気は直流なんじゃな。幸い、ちょっとした機器で直流から交流に変換することができる。この変換をしてくれるのが「パワーコンディショナ」と呼ばれるものじゃ。ちょうど、ソーラーさんの家にもある電気のブレーカー・ボックスみたいな形をしたもんじゃよ。
パワーコンディショナ、ですか。
それから、これは必須というわけではないが、いまの発電状況を確認したいじゃろ。それには「電力モニタ」が必要になる。ほれ、電力モニタはこんな感じじゃ。まずはシャープさんの例。これを部屋の中の見やすい場所に置く。
そしてこちらが京セラさんの例。
「発電」というのがいま太陽光発電している電気で、「消費」というのが家でいま使っている電気、「売電」が電力会社に売っている電気じゃ。三洋電機さんの例なら、いま発電している電気が4.9kWで、家で使っている電気が3.7kW、すると発電のほうが消費より1.2kW多いから(4.9-3.7=1.2)、このあまった電気を電力会社に売っているということじゃな。
ふーん。ところでケーダブリュ「kW」ってのは何ですか?
ああそうね。これはキロワットということで、キロは1000だから1000W(ワット)ということ。ワットは電球の明るさで知っているね。少し説明すると、ワットとは、発生する電気の量を表す単位じゃ。たとえば1kW(=1000W)なら、100Wの電球を10個点けることができるぐらいの電気ということ。それからシャープさんの場合は、モニタの上の方に「kWh」という表記があるじゃろう。これはワットに時間をかけたもので、たとえば1kWhなら、1kWの電力を1時間発生したということじゃな。
うーん……。
まあよい。この数字が大きいほど、発電したり、使ったりしている電気が多いということじゃ。これがあれば、いまの消費電力量と発電量がすぐにわかる。電気の無駄遣いも手に取るようにわかるということじゃ。
なーるほど。
細かくいえばほかにもあるが、おおよそこんなところじゃな、必要な機材は。ソーラーパネルを屋根に乗せて、パワーコンディショナにつないで、発電モニタをつなぐ。これらの機器一式をまとめて「太陽光発電システム」と呼ぶこともあるぞ。まずは第一歩として、太陽光発電システムの全体的な構成を説明した。今日のところはこの辺にして、続きは次回にしよう。
博士、ありがとうございました!
(2012/10/15 更新)
2015年3月末をもちまして補助金情報の提供は終了しました。