光(ひかり)博士:
本業は太陽光発電システムの研究だが、世の中に太陽光発電を普及させるために、初心者を対象とした太陽光発電の教室を開いている。
緑(みどり)ソーラー(ソーラーママ):
一男一女を持つ専業主婦。クリーンで家計も助かると聞き、太陽光発電に興味津々。わからないことだらけなので、光博士の教室に勉強しにやってきた。
太陽光発電システムは高いけど、設置するときには国などからけっこうな金額の補助金がもらえます。今回は、この気になる補助金のお話。お金の話には敏感なソーラママ。はてさて、どうなることやら。
ご注意:以下の記事は2009年12月に執筆されたものです。補助金という話題の性格から、時間経過とともに状況が大きく変わる可能性があります。ご注意ください。
博士! ソーラーです! 今日は何を教えてくれるんですか?
ソーラーさん。えーと、今日は補助金の説明しようと思っておる。
あっ、それなら知っていますよ。いま、太陽光発電システムを設置すると、国から補助金が出るんですよね! 補助金のこと、詳しく知りたいと思ってたんです!
太陽光発電システムは安くない買い物。少しでも安く手に入れたいというのは庶民の願いじゃろう。さっそく今日の授業を始めよう!
で、いったいいくらもらえるんですか?
予想どおりの反応じゃなぁ。これが簡単じゃないんじゃよ。まずは補助金の基本について整理しておこう。
えっ、いくらもらえるか簡単にはわからないんですか?
うむ。自宅のある住所によって、もらえる補助金の額はけっこう違うんじゃ。
ええっ! 全国一律同じってわけじゃないんですか!?
そうじゃ。太陽光発電システムを個人の住宅に設置するとき、まずは国の補助金がもらえる。国の補助金じゃから、これは全国どこでも同じじゃ。詳しくは後で説明するが、設置する太陽光発電モジュールの出力1kWあたり7万円じゃな(2009年12月現在実施中の国の補助金)。
まあっ大変! えーと、設置できるモジュールは屋根の大きさなどの条件でまちまちでしょうけど、全国平均では3.5kWくらいでしたっけ。だとすると、3.5kW×7万円で24万5000円ですか。けっこうもらえるんじゃないですか。で、住所によって違うっていうのはどういうことですか?
もらえる補助金は国からだけでなく、都道府県や市区町村もある。
あらあらあらっ、都道府県からも、市区町村からも別々にもらえるんですか。ステキッ!
太陽光発電システムの設置補助金
全国一律同じ条件(出力キロワット×7万円)でもらえる国の補助金に加え、都道府県や市区町村からもそれぞれ補助金がもらえる。ただし、補助金があるかどうかや、支給条件などは自治体によりばらばら。
ソーラーさん、早くもヒートアップ気味じゃな。まあ落ち着いて。ソーラーさんがいったとおり、運がよければ、国からも、都道府県からも、市区町村からも別々に補助金がもらえる場合がある。このことを「3階建ての補助金」などと呼ぶ人もおるようじゃ。じゃが残念ながら、すべての都道府県や市区町村が補助金を支給しているわけではないんじゃなぁ。また仮に支給していたとしても、条件はそれぞれの自治体によってばらばらなんじゃ。
まぁそれは残念。でも、支給している自治体は多いんでしょ?
そうじゃなぁ。温暖化防止に役立つということで、太陽光発電に対する意識はだいぶ高まっているから、補助金を支給する自治体は少なくはない。しかし「多く」かといえば、そうとはいえんな。新しく補助金の支給を開始したり、予算がいっぱいになって受付を終了したりするところもあるから、はっきりとはいえんが、本当に3階建てで3カ所から補助金をもらえる地域はそう多くはないな。
うーん、そうでしたか。ところで博士、「補助金の受付が途中で終わる」ってどういうことですか?
国にせよ、都道府県や市区町村にせよ、補助金は国や都道府県、市区町村の各行政機関がそれぞれ予算をとって、そこから支給している。じゃから予算を使いきったら、基本的に補助金の受付は終了になってしまうんじゃ。
ええっ!? それじゃ早い物勝ちってことですか!?
もう少しソフトにいえば、先着順ということじゃな。自治体の中には、一定期間で応募を受け付けてから、抽選で支給先を決めるというところもあるようじゃが、これは例外で、ほとんどは先着順じゃな。
それじゃあグズグズしていられないじゃないですか。どれくらいで受付終了になっちゃうんですか!?
それもいろいろじゃ。十分な予算をつけて、途中で終了することなく、募集期間に希望するすべての人に支給できる場合もあるし、募集開始直後に、あっという間に予算いっぱいになって終了してしまう場合もある。
えええっ! あっという間ですか!?
たとえば岡山県は2009年7月1日に補助金の受け付けを開始したんじゃが、7月14日には応募が予算枠を超えたということで、受け付けを終了したな。
岡山県の補助金募集ページ
岡山県は、2009年7月1日から補助金の募集を開始したが、応募が殺到して、2週間後の14日は受付終了になった。これは2009年12月現在の岡山県の募集ページ。
た、たった2週間ですか……。
さらに予算枠が小さい市区町村の場合は、もっと短期間で終了してしまうケースもあるようじゃ。
……博士、だんだん不安になってきました。ところで博士、岡山県は7月1日から募集を開始したって話ですけど、自治体のようなお役所が何か新しいことを始めるのは、年度はじめの4月じゃないんですか?
これはいいところに目をつけたな。ソーラーさんがいうとおり、年度はじめというケースも多いが、期の途中でも、予算をつけて、補助金の受付を開始する自治体もあるぞ。
えっ、補助金がなかったり、終了しちゃったりしていても、新しく始まることもあるんですか!?
そうじゃ。補助金の開始をタイムリーに知るのは簡単ではないが、次回になるが後でその方法について教えよう。また国、都道府県、市区町村からそれぞれいくら補助金をもらえるか、簡単な調べ方も次回に説明するぞ。
ぜひお願いします!
さて、ひとくちに補助金といっても、いくつかのパターンがある。
そんなにいろんな種類があるんですか?
細かい金額などはまちまちじゃが、おおまかなパターンはいくつかしかない。いちばん多いのは、設置する発電モジュールの出力数に応じて補助金を支給するというもの。さっき話した、国の補助金(出力キロワット×7万円)というのがこのパターンじゃな。現在の国の補助金の場合はキロワットあたり7万円じゃが、この単価は自治体によって違うぞ。以下は、キロワット7万円、10万円のケースで、それぞれ3kWのモジュールを載せた場合の例じゃ。
キロワット数×単価で算出する補助金の計算例
たくさんモジュールを載せれば載せるほど、補助金もたくさんもらえるってことですね。たとえばキロワット当たり7万円で10kW載せれば、70万円ですか、フフフ……。
こらこら、何を妄想の世界に入っておるのじゃ。当然じゃが、ほとんどの場合、上限が決まっておる。国の補助金の場合は、10kW未満じゃ。
ああ……、そりゃそうですよね……。
それに、屋根の大きさも限られているからのう。まあ日本の個人の家で、10kW分ものモジュールを載せられるところはあまりないじゃろうな。
そうかぁ……。
どこだか忘れたが、実際、上限なしで支給するという自治体を見かけたことがある。
えええっ! 青天井で補助金がもらえるんですか!
そう。わしも気になって自治体に電話して聞いたら、「制度としての制限はありませんが、家の屋根に載せられるモジュールの大きさは知れているので特に問題はありません」との回答じゃった。まあこんな自治体はほとんどないが。
へえー、そんなところもあるんですか。
あ、それから、国の補助金は、出力の上限だけじゃなく、キロワットあたりの工事費は70万円までという制限もかけている。これは、設置費用の目安をわかりやすくするのが目的のようじゃ。
なーるほど。あまり高い工事だと、国の補助金はもらえないってことですね。
うむ。悪質な業者の中には、「これは特別に高いモジュールで、キロワットあたりの工事費は70万円以下にはならないから、国の補助金は受けられない」なんてことをいうものもおるようじゃが、現在、個人住宅用に販売されているモジュールを設置するなら、よほど高額なモジュールを選ばないかぎり、キロワットあたりの工事費が70万円を超えるということはほとんどない。もしそんなことをいわれたら、その業者には注意の目を向けた方がいいじゃろう。
そんな悪い業者がいるんですか。気をつけます!
ごくごく一部じゃと思うが、そういう業者がいることは事実じゃ。注意が肝要じゃな。
わかりました、博士。で、ほかにはどんなパターンがあるんですか?
数は多くないが、出力数などとは無関係に固定金額を支給するケース(1件あたり5万円固定など)や、総工事費の一部(数パーセントなど)を支給するというケースがあるな。
へぇー、いろいろなんですね。よく調べなくちゃ。
さあさあ、補助金の勉強は始まったばかりじゃが、申請の手順とか、補助金額の便利な調べ方とか、この先も長いから、今日はここらあたりまでとするかの。
はぁーい、博士、わかりました。また次回よろしくお願いしまーす。
2015年3月末をもちまして補助金情報の提供は終了しました。