光(ひかり)博士:
本業は太陽光発電システムの研究だが、世の中に太陽光発電を普及させるために、初心者を対象とした太陽光発電の教室を開いている。
緑(みどり)ソーラー:
一男一女を持つ専業主婦。クリーンで家計も助かると聞き、太陽光発電に興味を持った。わからないことだらけなので、光博士の教室に勉強しにやってきた。
太陽光発電の勉強を始めたソーラーママ。太陽光発電は、自然にやさしいだけじゃなく、家計にもやさしいとわかり少々興奮気味。太陽光発電の普及を進める光(ひかり)博士の研究室に第2限目の授業を受けにやってきた。
博士、こんにちは! 緑ソーラーです。太陽光発電で家計が助かるなんて本当にステキ! がんばって勉強しなくちゃ!
ソーラーさんも含めて、奥様方がいちばん気になるところは、太陽光発電を始めて電気代がどう変わるかじゃろう。今回はそこのところを少し詳しくやろう。
博士、わかってるじゃないですか。家計のやりくりは本当に大変なんですから。ぜひ詳しく教えてください。
うむ。じゃあ太陽光発電はひとまず置いておいて、ソーラーさんちの1日の電気の消費量を想像でグラフにしてみよう。横軸は時間、縦軸は電気の消費量じゃ。縦の値が大きくなるほど、電気をいっぱい使っているということになる。ソーラーさんは専業主婦で、小学生のお子さんが2人とご主人の4人家族じゃったな。であれば、こんな感じじゃろうな。
うーん。なんでグラフがこんなに変化するんでしょうか?
ソーラーさんはグラフが苦手かな? では、ソーラーさんの行動をグラフに描き入れてみよう。
はっ、博士! 何で私の私生活を知ってるんですか!
あのねぇ、これはあくまで典型的な例ね。ざっといえば、朝は朝食の準備に始まってお洗濯、ご主人とお子さんが会社や学校に行った後は一人じゃから電気の消費はぐっと減って、夕食、一家団らんの時間にまた増えるということじゃ。どの家もこんなもんじゃろう。
そ、そうですか(汗)。でもお昼寝は毎日じゃありませんから。
はいはい。
さて、それでは次は太陽光発電について考えてみよう。どれだけ太陽光発電できるかは、お天気にもよるし、日照時間も関係するから季節によっても変わるんじゃが、晴天の1日だったとすると、発電量は次のような感じになるじゃろう。
なーるほど。日差しが強い午後2時くらいにピークがあって、一番発電できるんですね。
そう。まず大事なことは、太陽が出ていない夜はいっさい発電できないということ。あたり前なんじゃが、案外と「夜は発電できないんですか?」なんて驚かれることも、ままあるんじゃよなぁ。
そりゃそうですよね。太陽光発電システムを設置しても、夜に使う電気は電力会社から買わないといけないんでしたよね。
そうじゃ。現在の太陽光発電システムには蓄電、つまり電気を貯めておく機能はないからのぅ。
ところで、この例は晴れですが、曇りや雨だったらどうなるんですか? やっぱり夜と同じで発電できなくなっちゃうんでしょうか?
いやいや。曇りや雨でも、よほど暗くなければ多少は発電できるぞ。ただしもちろん、晴れの日に比べれば圧倒的に少なくなるがな。
そうですか。私はたまには雨も嫌いじゃないけど、太陽光発電システムをつけたら、毎日晴れてほしいって思うようになるんでしょうね。
さて、では、いままでに見てきた消費電力のグラフと、太陽光発電のグラフの2つを重ねてみよう。
うわぁ、だんだん理科の授業みたいになってきましたね。
まあ簡単じゃから安心して。ところでソーラーさん、このグラフを見て、どんなことがいえるかな?
うーん、そうですねぇ。午前6時にグラフの点が重なっていますね。そして午前9時すぎにグラフの上下関係が逆転して、消費電力より太陽光発電の電力が大きくなっています。午後6時ちょっと前までこれが続いていますね。
よくできました。つまり、午前0時から午前9時すぎまでは消費電力が太陽光発電された電力より大きいか等しい。午前9時すぎから午後6時前まではこれが逆転して、太陽光発電された電力のほうが大きい。この後はまた逆転して、消費電力のほうが大きくなる、というわけじゃ。この関係が分かりやすくなるように、2つのグラフの差に線を入れてみよう。
赤い線は消費のほうが多いことを、青い線は太陽光発電のほうが多いことを表しているんですね。
そうそう、その調子。ではここで太陽光発電の大事なポイントを説明しよう。
なんでしょうか?
太陽光発電された電気は、全部電力会社に売るのではなく、まずは自分の家で使う分が消費されるということじゃ。
自分で育てた野菜は、売っちゃう前に、まず家族で食べるってことですね。
うーんと…、まあそんなもんじゃ。太陽光発電システムを設置すると、発電した電気を電力会社に売れるようになると前回説明したが、このとき売れるのは、発電した電気全部ではなく、まずは家で消費して、それでも余ったものを売れるということじゃ。このように余った電気を余剰電力ともいう。
えーと、つまり、上のグラフでいえば、青い線の部分になりますか……。逆に、赤い線は太陽光発電では足りない電気だから、不足する電気ということですね。
そのとおり! そして線の長さが長いほど、たくさんの余剰電力、不足電力があるということじゃ。では最後に、上のグラフの余剰電力、不足電力のグラフの配置をちょっと変えてみよう。
赤い線の不足電力は電力会社から買わなければいけないから買電、青い線のほうは反対に電力会社に売るから売電ともいわれる。読み方は両方とも「ばいでん」で紛らわしいので、買電のほうは「かいでん」という場合もあるぞ。
なーるほど。青い線の数がなるべく増えて、長さもできるだけ長いとそれだけたくさん売電できるってことすね!
そう。この例じゃと、ソーラーさんがお昼寝をしている午後3時ごろが一番多いのぅ。発電量は多いのに、お昼寝して消費電力のほうは少ないってことじゃな。
いやだ博士ったら。でも家計が助かるなら、どんどん昼寝しちゃいますわっ!(笑)
うむ。じゃがそれはまんざら冗談でもないぞ。太陽光発電の普及を進めるために、売電の単価は、買電の単価よりも高めに設定されておる。同じ量の電気でも、買う値段より売る値段のほうが高いということじゃ。
えっ! 買うより売るほうが高い!? そりゃどんどん売らなくちゃ!
売電の単価は、太陽光発電システムを設置した年度で変わるんじゃが、とにかく太陽光発電ができる昼間は電気を節約して、できるだけ余剰電力を増やせば増やすほどトクなのは間違いがない。昼間は図書館に出かけるとか、太陽光発電仲間の家に日替わりで集まってお茶するとか、太陽光発電が新しい生活スタイルをもたらすかもしれんのぅ。
なーるほどねぇ。太陽光発電仲間でお茶して、楽しく時間が過ごせて、電気もたくさん売れるなんてステキですね。ところで博士、売った電気は、外の電線に戻すってことでしょうか?
そうじゃな。
その電気って、その後どうなっちゃうんですか? 発電所まで戻っていくんですか?
いやいや、そうじゃなくて、ご近所の家で使ってもらうことになる。
へぇ、自分が作った電気を、ご近所に使ってもらって、エコに貢献できるってことですね。なんだかうれしいですね。
うむ。せっかく降り注いでいる太陽のエネルギーじゃから、生かさないと損じゃな。
最後に、よく質問される点を1つ説明しておこう。今日説明したとおり、1日のうちでも、時間帯によって買電したり、売電したりするわけじゃが、この買電と売電のメーターは別々なんじゃな。したがって、たとえば1カ月に1万円分の買電があって、同時に1万円分の売電があったとして、差引ゼロで電気代の請求がないかといえば、そうではないんじゃ。買電した1万円分の電気代は通常どおりに電力会社から請求されて、売電した1万円は指定した銀行に別途電力会社から振り込まれるんじゃよ。
ふーん。面倒だから相殺してくれればいいのに。ま、でも実質的には電気代がタダになるってことだからいいわねっ!
そうじゃな。ま、売電分の口座は貯金用ということにして、できるだけ昼間は節電して、毎月の振り込み額を楽しみにするというのもいいじゃろう。
博士、それはいいアイデアですね。楽しく節電できて、へそくりも増えるなんてステキ!
さあ、それじゃあ今日のところはこの辺にしようか。
はーい。博士、次回もよろしくお願いしまーす。
(2013/1/15 更新)
2015年3月末をもちまして補助金情報の提供は終了しました。