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教えて!太陽光発電

第12時限目 「停電でも電気が使える」太陽光発電

光(ひかり)博士:
本業は太陽光発電システムの研究だが、世の中に太陽光発電を普及させるために、初心者を対象とした太陽光発電の教室を開いている。

緑(みどり)ソーラー(ソーラーママ):
一男一女を持つ専業主婦。クリーンで家計も助かると聞き、太陽光発電に興味津々。わからないことだらけなので、光博士の教室に勉強しにやってきた。

は、博士! こんにちは! この前の大地震、大丈夫でしたか?

この研究室にはモノが多くてのぅ。後片づけが大変じゃったわ。

それはそれは。でも、普段からもっと整理整頓しておけばいいんじゃないですか?

オホン! 研究者というのはじゃな、いろいろと忙しいのじゃよ…。

まぁ、それはともかく、片づけ程度で済んだならよかったです。

そうじゃな。東北各地でたくさんの人がお亡くなりになったり、家や仕事を失ったりして困っている人たちが大勢いらっしゃる。それに比べれば、片づけくらいなんのそのじゃ。じゃが、地震後の津波で起こった福島第一原子力発電所の事故は、まだ安全確保の先が見えんのう。

ああ、そうですね。難しいことはわかりませんけど、原子力ってやっぱり怖いなぁ……。それはそうと、電力不足で計画停電が実施されたときは大変でした。電気はいつでも、好きなだけ使えるものと思っていましたから……。

うむ。当たり前に頼っていたものがなくなると、愕然とするもんじゃよ。

本当ですね。停電でテレビが観られなくなるいうんで、乾電池式のラジオを引っ張り出してきたり、照明用のロウソクを用意したりと、てんやわんやでした。

じゃが、子供たちには、いい勉強になったかもしれんのう。

そうですね。うちの子供たちも、電気が足りなくなることもあるとわかって、無駄な電気を使わないように、節電にいっそう励むようになりました。

けがの功名、ってやつじゃな。

停電しても電気が使える太陽光発電

そこで博士に質問があるんです。

ほう、何かな?

停電のとき、太陽光発電システムを設置した家はどうなるのかなと思って。

ふむふむ。

この前ショッピングモールに行ったら、「停電でも電気が使える太陽光発電」って宣伝していて、人だかりができてました。

そうか。停電や、原発に依存しない自然エネルギー活用などで、太陽光発電はますます注目を浴びておるようじゃな。まあよいことじゃ。

ただ、なんか誤解している人もいるんじゃないかなぁ、と思いました。「停電でも使える」といっても、それは昼間だけの話ですよね。

うむ。勉強の成果が出ておるな。

ソーラー・パネルは、太陽の光が当たっているときしか発電できないし、電気を貯めておくこともできないから、夜に停電した場合は、太陽光発電がない家とまったく同じですよね?

そうじゃ。夜に停電したら、家は真っ暗、ロウソクの火や懐中電灯を頼りにせにゃならん。太陽光発電システムがあっても、なくても、状況はまったく変わらんな。

そうですよね。でも、停電したのが昼間で、ソーラー・パネルに日光があたっているときは、宣伝どおりに、停電でも電気が使えるのかなと思いますけど。

ふむふむ。もう少し具体的にいうと、どうなると思うのかな?

えーと、太陽の光が屋根のソーラー・パネルに当たれば、電気を作れるわけですから、停電しても自分の家で作ったこの電気を使えますよね。

そういうことになるな。

ということは、太陽光発電していないまわりの家は、みんな停電で電気が使えなくて困っていても、太陽光発電している家は、普通に電気を使い続けられるってことでしょうか?

うーむ、気持ちはわかるが、それはちょっと違うんじゃな。

えっ、じゃ宣伝文句はウソってことでしょうか? 停電すると、太陽光発電した電気も使えないんですか?

それもちょっと違う。使えることは使えるんじゃが、そのためには特別な操作が必要なのと、使える電気の量は制限されるんじゃよ。

特別な操作? なんですか、それは?

ちょっとわかりにくいな。どういうことなのか、少し詳しく説明しよう。

太陽光発電システムがある家で停電が起こると……

まずは次の絵を見てもらおうか。これは、屋根にソーラーパネルをのせた家の模式図じゃ。

太陽光発電システムの構成

太陽光発電システムの構成
屋根のソーラーパネルで作られた直流の電気が、パワーコンディショナで交流に変換されて、家の中の電気製品で使えるようになる。

はい、これまでの何度か同じような図で説明してくれましたね。

うむ。復習をかねて、ソーラーさん、どうやって太陽光発電システムが動くのか、説明してくれるかな?

はい。まず、太陽の光が屋根のソーラー・パネルにあたると、光のエネルギーが電気に変換されるんですよね。

そうじゃな。

このときソーラー・パネルで作られる電気は直流という種類で、そのままでは家の電気製品では使えない。家の電気製品は交流という種類の電気を使うようにできているから、ソーラー・パネルでできた直流の電気を交流に変換しないといけません。それを受け持つのがパワーコンディショナ(→用語解説)でしたよね。

そう。パワーコンディショナからは交流の電気が出てくるから、それを家の中にあるテレビやらエアコンやらで使えるというわけじゃ。

それくらい私だってちゃんと覚えてますよ。

まあまあ、そうムッとせずに。さて、そこで停電じゃ。

はい。停電になったって、ソーラー・パネルから電気が作られてくるんですから、当然使えますよね。

そりゃそうなんじゃが、パワーコンディショナがなければ、家の電気製品では使えないんじゃよな?

そうですけど、太陽光発電システムを設置した家には必ずあるから問題ないじゃないですか。

ここで考えてほしいのは、そのパワーコンディショナも電気で動く電気製品だということじゃ。

あっ!

いくらソーラー・パネルで電気を作っていても、直流から交流に変換するパワーコンディショナ自体もコンセントからとった交流の電気を使って動いているんじゃ。じゃから停電になって、コンセントからの電気がこなくなると、パワーコンディショナが止まってしまう。

停電時の太陽光発電システム

停電時の太陽光発電システム
停電すると、パワーコンディショナも止まってしまうので、太陽光発電した電気があってもそのままでは使えない。

それじゃあ、ソーラー・パネルがいくら発電してくれていても、その電気を家では使えないってことですか?

難しいことはここではいわんが、パワーコンディショナは、屋根のソーラー・パネルから一番効率よく電気を取り出せるような調整機能がある。電気がないと、動くことができんのじゃ。

ちょ、ちょっと待ってくださいよ! それじゃあ太陽光発電システムがあって、昼間太陽が出ているときでも、停電になったら電気はぜんぜん使えないってことになるじゃないですか。

停電時でも太陽光発電した電気を使えるようにする「自立運転モード」

そうなんじゃが、そこで活躍するのが、パワーコンディショナの「自立運転モード」というものじゃ。

自立運転モード? な、なんですか、それは?

外部からの電力供給がなくても、つまり停電のときでも、ソーラー・パネルからの直流の電気を交流に変換できるようにする、パワーコンディショナの動作モードなんじゃ。

なあんだ、やっぱり停電でも使えるんですね。はー、よかった。あっ、そのモードにするのに、さっきいった特別な操作っていうのが必要になるんですか?

そのとおり!

でも、そんなの操作なんかしなくても、停電になったら自動的に切り替わってくれればいいのに。

残念ながらそうはいかんのじゃ。

まあいいです。それじゃあ、停電したら、パワーコンディショナのスイッチか何かを切り替えて、「自立運転モード」というのにすれば、ソーラー・パネルで作った電気を使って、普通に電気が使えるようになるんですね。

それが違うんじゃな。

まだ何かあるんですか?

自立運転モードのときに使える電気が供給されるのは、パワーコンディショナにある「自立運転用コンセント」と呼ばれる特別なコンセントからだけなんじゃ。

えっ! そんなコンセントがついてるんですか?

そうじゃ。たいていは、パワーコンディショナの側面にある場合が多い。じゃがパワーコンディショナを屋外に設置するようなタイプの場合は、家の中まで配線して、壁に自立運転用コンセントが配置されている場合もある。普段は必要ないものじゃから意識しないかもしれんが、太陽光発電システムを設置している人は、どこにそのコンセントがあるか、一度確かめておくとよいじゃろう。わからなかったら、設置工事を行った業者に問い合ておく必要があるな。

へぇ、そんなものがあるんですか。そこからしか電気が使えないとなると、家じゅうの電気製品をそれにつなぎ変えないといけないんですね?

そこでもう1つ、大事なことがある。自立運転モードで使える電気の量は、最大でも1500Wまでということじゃ。これはパワーコンディショナの制限じゃから、ソーラー・パネルの容量がどれだけあっても、どれだけ天気がよくて、1500W以上発電していたとしても、使える電気は1500Wまでなんじゃ。もちろん、これより発電量が少ない場合は、発電した分しか使えん。そりゃ当然じゃがな。

うーん、1500Wってことは、100Wの電球15個分ってことですね。1500Wで、実際どんなことができるんですか?

そうじゃな。まず、よほどの大画面でもないかぎり、液晶テレビは観られるじゃろう。特に非常時だとすると、テレビが観られるのは心強いもんじゃな。それから携帯電話の充電なんかはもちろんできるし、電気ポットとか炊飯器、電子レンジも大丈夫じゃろう。

パワーコンディショナを自立運転モードにすれば、電気が使えるようになる

パワーコンディショナを自立運転モードにすれば、電気が使えるようになる
パワーコンディショナを自立運転モードにすれば、専用コンセントから最大1500wまでの電気が使える(ただし十分な発電がある場合)。

ふーん。なんでもかんでも、ってわけにはいかないけど、食事の支度くらいはできるってことか。じゃあできないことは?

洗濯機や掃除機はけっこう電気を使うから、使える場合と使えない場合があるようじゃな。それから、エアコンについては継続的に使うのは難しいじゃろう。

そうかあ。真夏や真冬で、冷房や暖房が必要なときは困りますね。

それから、デスクトップパソコンを使うのは要注意。なにせ太陽光発電の電気を使っているわけじゃから、発電量は刻々と変わって不安定なもんじゃ。突然、くもって発電量が下がると、パソコンの電源が落ちてしまうこともある。

ああなるほど。でもなんでパソコンだけは要注意なんですか?

ほかの電気製品は、電気が不安定でも、極端な話、動きが止まるだけで、電気が戻ればまた使えるようになるものが多い。じゃがパソコンは、ハードディスクにデータを書き込んでいるときに急に止まると、ハードディスクの中身を壊してしまうこともある。最悪の場合はパソコンが立ち上がらなくなってしまうかもしれん。

うわぁ、それは困りますね。

ま、バッテリがついているノートパソコンなら大丈夫じゃがな。

なるほど。

それから、複数の電気製品を自立運転用コンセントに同時につないで使うことはできるが、それらで使う電気の総量が最大で1500Wまでに制限されるぞ。

そりゃ私だってわかりますよ。

具体的な自立運転モードの切り替え方については、次の記事を読んでもらいたい。

停電が回復したら、必ず自立運転モードから通常のモードに戻す必要があるから忘れないように。

停電したら売電はどうなる?

博士、停電のときは自立運転モードにすれば、1500Wまでは太陽光発電した電気を使えるってことはわかりました。この電気、使わないで余りがでたら売電できるんですか? ご近所も停電で困っているでしょうし、少しでも売電してご近所で使ってもらえるならいいんですけど…。

それが、自立運転モードにしたときは、売電はできんのじゃよ。余りの電気があっても、それは使えんのじゃ。

ええっ、それはもったいない! じゃあなんとしても1500Wかっちり使わせてもらわないと、ね!

そういうもんでもないと思うが…。まあ使えるもんは使ったほうがいいじゃろうな。

そりゃそうですよ! 大切な電気を無駄に捨てるなんて、許されませんわっ!

まあまあそう熱くならずに。今日の話をまとめると、太陽光発電システムがあって、昼間晴れているなら、停電してもソーラー・パネルで発電した電気が使える。ただしそれには自立運転モードという特別なモードに手動で切り替える必要があって、電気を使いたい電気製品は自立運転用コンセントという特別なコンセントにつなぎかえる必要がある。そして、使える電気は最大で1500Wまで、ということじゃ。

切り替えとか、最大1500Wとか、制限もあるけど、工夫して使えば、いろんなことができそうです。太陽光発電、緊急時とか災害時にも役立ちそうですね。

そうじゃな。

勉強になりました、博士! それじゃあ夕食の買い物があるんで、今日はこれで! さようなら!

はいはい、気を付けて。

(2011/5/29 公開)



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