太陽生活 > 教えて!太陽光発電 > 第5時限目 発電モジュール、メーカーによって何が違うの? その1(2/2)

教えて!太陽光発電

発電セルのタイプ。主流は歴史ある結晶型

ひと口に発電モジュールといっても、作り方や使う原料などによって、いくつかの種類がある。セルのタイプというのはそのことじゃ。「セル」というのは、モジュールを構成する1つの部品じゃったな。ちょっと難しい話になるが、タイプによって特徴がけっこう違うから説明するぞ。

はいっ! がんばります!

現在、住宅用として販売されているセルの作りを分類すると次のようになる。

セルの分類
国内で住宅用として販売されているセルの種類とメーカー。

まずは結晶型じゃ。これはシリコンという原料を溶かして、原子の結晶構造をできるだけきれいに並べながら冷やして固めたものを、薄く切ってセルにしたものじゃ。

原子の結晶構造? きれいに並べる?

太陽光発電ができるセルを作るには、シリコンという眼には見えない小さな原子をできるだけ規則正しく並べる必要がある。簡単にいえば、この配列が規則正しいほど、さっき説明した変換効率を高くできるんじゃ。

博士、ね、眠くなってきちゃいました……。

しっかりするんじゃ! この結晶の作り方が2種類あってな、1つがより規則正しい配列にする「単結晶型」、単結晶ほどではないが、ある程度規則正しい配列にするのが「多結晶型」じゃ。原料は同じシリコンじゃが、単結晶と多結晶では作り方が違う。単結晶を作る費用は多結晶よりも高い。その代わり、単結晶で作ったセルは多結晶よりもシリコン原子の配列が規則正しく、変換効率が高いんじゃ。

結晶には値段は高いけど品質がよりいいものと、値段はそこそこだけど品質もまあまあというものがあるってことですか?

よしよし、そういうことじゃ。図に示したとおり、ほとんどのメーカーの製品は、多結晶シリコンを使っている。次は多結晶型のセルの写真じゃ。青い部分に模様が入っとるじゃろう。この模様は多結晶型シリコンの特徴じゃ。

多結晶型太陽電池セル
写真提供:三菱電機

一方、住宅向けで単結晶シリコンを使っているのはサンテックパワーと三洋電機じゃ。

そうですね。でも三洋電機のほうは、ただの単結晶型じゃなくて、HIT型ってなってますね。これは何ですか?

HITというのは、三洋電機の独自技術の名前じゃ。単結晶をベースに、さらに特殊な処理を加えることで変換効率を高めておる。HITは英語の略なんじゃが、難しいのでここではあえていわない。HIT型は、量産レベルとしては世界最高水準の変換効率を誇っている。モジュールの変換効率は三洋のHIT太陽電池で16.4~17%なのに対して、ほかの多結晶シリコンを使ったモジュールの変換効率は12~14%程度じゃ。まあその分、値段は少々高くなるようだがの。ほれ、これがHIT型セルの写真じゃ。上の多結晶セルに比べると、模様も見えないし、色も黒っぽいな。

三洋電機のHIT太陽電池セル
写真提供:三洋電機

ふうん。三洋電機のHIT太陽電池は、値段が高いけど変換効率も高いということか。ところで、多結晶型の製品を売るメーカーが多いようですが、これらはどれもあまり違いはないんですか?

同じ多結晶型でも、メーカーごとに、独自の表面加工や電極の付け方などを工夫して、変換効率を高めたりしておる。

えーと、単結晶ほどではないにせよ、同じ多結晶型でも、メーカーによって変換効率に差があるってことですね!

そのとおり。まあいずれにせよ、現在市販されている住宅向けの太陽電池は、ほとんどがこの単結晶型か多結晶型のいずれかじゃな。

これから期待の薄膜型

ほとんどが結晶型なら、「薄膜型」なんて知らなくてもいいんじゃないですか?

それがそうはいかんのじゃなぁ。以前、薄膜型は結晶型に比べると変換効率が低く、あまり大きな面積がとれない住宅用の発電モジュールとしては不向きとされてきた。しかし最近は、メーカーの努力によって、だいぶ改善されてきておる。まだ結晶型には及ばないものの、使い方によっては十分対抗できる場合もあるんじゃ。

うーん、そうですか。それじゃあ勉強しますか…。

ちょっと疲れてきたかな? もうひとがんばりじゃ! 「セルの分類」の図にあるとおり、薄膜型は使う原料によって、シリコン薄膜と、化合物薄膜の2つがある。

原料が違うんですか。シリコンってのは結晶型と同じものですよね。

そう。ただし製造方法がまったく違う。結晶型は、シリコンを溶かして固めて、いったん塊(かたまり)にして、そこから薄い板状のウェハを切り出すわけじゃが、この過程で多くのシリコンが使われない端材(はざい)になったり、切りくずとしてゴミになってしまったりするんじゃ。木を製材すると端材やら、おがくずやらがでるじゃろ。あれと同じことじゃ。

無駄が多いってことですか。

そのとおり。薄膜シリコン太陽電池は、原料シリコンをできるだけ少なく、無駄なく使って、できるだけ安く太陽電池を作るために開発されたんじゃよ。薄膜シリコン太陽電池は、基盤となるガラス面にシリコンを含むガスを吹き付けて、非常に薄いシリコン層を作る。層の厚みは結晶型の100分の1ともいわれておるな。

ひゃ、100分の1ですか!?

そう。そして、シリコン以外の原料を使うのが化合物薄膜じゃ。比較的最近になって実用化が進んだもので、原料には銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、セレン(Se)という元素を組み合わせて使う。ガリウムを使うものと使わないものがあって、元素記号の頭文字をとって、CIS太陽電池/CIGS太陽電池と呼ばれておる。いずれも、ガラスなどの基盤に、シリコンではなくて、化合物の膜を作るというものじゃ。CIS太陽電池は昭和シェルソーラーが、CIGS太陽電池はホンダソルテックがそれぞれ住宅向けに販売しておる。たとえばこれは、ホンダソルテックが販売しているCIGS薄膜型モジュールじゃ。

ホンダソルテックのCIGS薄膜型太陽光発電モジュール

(写真提供:ホンダソルテック)

うーん、難しい話はよく分かりませんが、薄膜型は、シリコン原料がほんの少ししか必要でなかったり、まったくいらなかったりするということですね。だとすると、値段もずいぶんお安くなるのかしら。もう結晶型の時代は終わりってこと?

そういう簡単な話ではないんじゃなぁ。さっきいったとおり、薄膜型の欠点は、結晶型に比べると変換効率が低いことじゃ。メーカーによっても違うが、おおよそ、モジュールの変換効率は10%前後じゃな。

あらあら、そうなんですか。

ただし、結晶型は高温に弱くて、高温になると変換効率が落ちる。対して薄膜型は、高温でも効率低下は小さいといわれる。じゃから暑い地方などでは、1年を通じてみれば、結晶型でも薄膜型でも、どちらも遜色なく発電できるという話を聞いたこともあるぞ。

うーん、何がなんだかわからなくなってきました。

そうじゃなぁ。じゃあここで、いままでの話を表にまとめてみよう。

セルタイプ シリコン使用量 変換効率 高温時の発電効率
単結晶型 多い
HIT型 多い ◎◎
多結晶型 多い
シリコン薄膜型 少ない
化合物薄膜型 使わない

セルタイプとモジュールの特徴

ふー。今日はいつになく内容が濃いですねぇ。しかも、まだ道半ばじゃないですか。肝心の値段の違いをまだ聞いていませんし。

そうじゃな。じゃがわしもちょっと疲れた。のどもからからじゃ。今日はこのへんで終わりにして、一緒にお茶でもどうかな?

いいですねー! そうしましょう、そうしましょう!

ちょっとひときティータイム:倍額買取がいよいよスタート!

んー、勉強の後の一杯のお茶は最高ですね、博士! それにしても、今日はこれまでになく濃い授業でした。ちょっと消化不良気味です…。

まあまあ、ゆっくり復習すれば理解できるじゃろう。ずずずー、あっ、熱っ!

ところで博士、民主党が選挙で勝って、地球温暖化ガスの排出削減目標を大幅にアップしたそうですね!

ふむ。地球温暖化ガスの排出水準を、2020年には1990年比で25%削減するというあれじゃな。鳩山総理は国連でも大々的に発表して、もう後には引けんのう。立派な目標じゃが、実現のハードルはかなり高い。太陽光発電モジュールのメーカーはもちろん、家電製品から何から、エコ関連の産業は商機到来と色めき立っているようじゃ。

私たちのような消費者には、どんな影響があるんでしょうか?

目標達成に向けた具体的な施策はこれからじゃから、まだはっきりとは分からんな。ただ、二酸化炭素の排出につながることには、より大きな経済負担がかかり、逆に削減につながることは経済的な支援が期待できるじゃろう。

うーん、えーと、それでどんな影響が……。

例えば、この2009年11月1日からの実施が決まった、太陽光発電の余剰電力の倍額買取策がわかりやすい。この施策では、余剰電力を従来の24円/kWhから48円/kWhと2倍の値段で買い上げるんじゃ。これにより、太陽光発電システムを設置した人は、売電でより多くのお金がもらえるようになり、初期投資の回収期間が短縮されることになる。より多くの人に、太陽光発電システムの設置をしてもらうための施策じゃな。

それならニュースで見ました。ところで、2倍で買い上げるために必要なお金は、やっぱり国が税金から出すんですか?

そう勘違いしている人は多いようじゃが、実際は違う。太陽光発電システムの導入時に国が支給する補助金は公的資金じゃが、余剰電力の倍額買取に必要な資金は、電気を使うすべての国民が少しずつ負担することになっておる。

ええっ!? 国民全員、ですか?

そう。そのために、全世帯の電気代が少しだけ高くなる。経済産業省は、国民が担うこの追加負担を「太陽光サーチャージ」と呼んでおる。

サーチャージ?

飛行機に乗るときに追加される「燃料サーチャージ」というのがあるじゃろ。あれと同じ「サーチャージ」だな。

ふうん。それで、負担増って、どれくらいになるんですか?

電気を使えば使うほど大きくなるじゃろうが、経済産業省の試算では、1世帯あたり、1カ月につき100円未満の増加としておる。

ふーん。太陽光発電しない人は電気代が少し高くなって、その分を太陽光発電する人が受け取るんですね。そりゃ、発電しなきゃ損だわね。

そうじゃな(しっかし損得の話になると、実に敏感に反応するのぅ、ソーラーさんは…)。

(2009/12/28 更新)

第6時限目の記事を読む



-PR-

太陽生活スポンサー・インフォメーション

補助金情報

2015年3月末をもちまして補助金情報の提供は終了しました。

太陽生活ドットコムからのお知らせ

2011/8/4
小学館 女性セブン 8月18日号「太陽光発電の意外な落とし穴」で、当サイトのコメントが紹介されました。
2011/7/28
テレビ神奈川 7月28日放送の「太陽がもたらす新たな社会 ~太陽経済かながわ会議~」に、当サイト編集長 小川誉久が出演しました。(→番組ホームページ
2011/7/26
TBS 「噂の東京マガジン」 7月24日放送の「噂の現場 節電の夏!太陽光発電!今が買い時!?」に、当サイト編集長 小川誉久が出演しました。(→番組ホームページ/→放送内容
2011/7/13
日本経済新聞 7月13日 夕刊 社会面「太陽光を活用 我が家の節電」の記事で、当サイト編集長 小川誉久のコメントが紹介されました。
2011/4/19
当サイト(太陽生活ドットコム)の月間ページビューが20万を突破しました!
2011/4/16
当社のサービスenervo(エネル簿)が、日本テレビ ズームイン!! サタデー「エース上重は見た!」で紹介されました!
太陽生活 on twitter