少々込み入った話になってしまった。複雑な流通事情は置いておいて、一般論としてのモジュールと価格の関係に話を戻そう。ただ、これからの話は、メーカーが公表している希望価格を元に話を進めるぞ。さっき話したとおり、実際の販売価格とは状況によってズレがあることを念頭に置くこと。
わかりました!
まずは次の表を見てもらいたい。主要な発電モジュールの一覧と、基本性能をまとめた記事から転載したものじゃ。ただし比較ができないから、希望価格を公開していないメーカーの製品は含んでいないぞ。
メーカー | 型名 | セル種類 | 価格 (税込) |
最大 出力 |
ワット 単価 |
外形寸法 (W×D×H) |
出力/ 面積 |
変換 効率 |
シャープ | ND-191AV | 多結晶 | 99,330円 | 191W | 520円/W | 1318×1004×46mm | 144W/m2 | 14.4% |
シャープ | ND-160AV | 多結晶 | 79,380円 | 160W | 496円/W | 1165×990×46mm | 139W/m2 | 13.9% |
シャープ | ND-153AU | 多結晶 | 72,450円 | 153W | 474円/W | 1165×990×46mm | 133W/m2 | 13.3% |
シャープ | ND-114CV | 多結晶 | 63,840円 | 114W | 560円/W | 990×856×46mm | 135W/m2 | 13.5% |
シャープ | ND-142CU | 多結晶 | 70,560円 | 142W | 497円/W | 1165×990×46mm | 123W/m2 | 12.3% |
京セラ | SD46X-QPS-B | 多結晶 | 28,980円 | 46W | 630円/W | 1015.5×345×8mm | 131W/m2 | 未公表 |
京セラ | SD62X-QPS-B | 多結晶 | 39,060円 | 62W | 630円/W | 1354×345×8mm | 133W/m2 | 未公表 |
京セラ | RD183X-QP-R | 多結晶 | 111,510円 | 183W | 609円/W | 1338×1012×36mm | 135W/m2 | 未公表 |
京セラ | KD183X-QPE-S | 多結晶 | 111,510円 | 183W | 609円/W | 1341×990×36mm | 138W/m2 | 未公表 |
三洋電機 | HIP-210NKH5 | HIT | 150,150円 | 210W | 715円/W | 1580×812×35mm | 164W/m2 | 16.4% |
三洋電機 | HIP-210BKH5 | HIT | 150,150円 | 210W | 715円/W | 1424×894×35mm | 165W/m2 | 16.5% |
三洋電機 | HIP-200BK5 | HIT | 143,850円 | 200W | 719円/W | 1319×894×35mm | 170W/m2 | 17.0% |
三菱電機 | PV-MX185H | 多結晶 | 114,660円 | 185W | 620円/W | 1657×858×46mm | 130W/m2 | 未公表 |
三菱電機 | PV-MX0925HH | 多結晶 | 63,105円 | 92.5W | 682円/W | 843×858×46mm | 128W/m2 | 未公表 |
昭和シェルソーラー | SC85-RT-A | CIS薄膜 | 50,820円 | 85W | 597円/W | 1235×671×23mm | 103W/m2 | 未公表 |
昭和シェルソーラー | SC85-A | CIS薄膜 | 50,820円 | 85W | 597円/W | 1235×641×35mm | 107W/m2 | 未公表 |
昭和シェルソーラー | SC80-RT-A | CIS薄膜 | 47,880円 | 80W | 598円/W | 1235×671×23mm | 97W/m2 | 未公表 |
昭和シェルソーラー | SC80-A | CIS薄膜 | 47,880円 | 80W | 598円/W | 1235×641×35mm | 101W/m2 | 未公表 |
太陽光発電モジュール 主要メーカー製品比較表(2009年9月末調査)
※上記の表は、元記事からのデータの一部を省略しています。
うわぁ、何だか数字がたくさん書いてあって難しそう……。
まあまあ、気楽にいこう。端的には、なるべく安くて、なるべくたくさん発電してくれるモジュールがいいわけじゃが、最大出力やモジュール1つの大きさ、価格などは製品によってさまざまじゃから、そのままでは比較できない。そこでここでは、ワット単価と面積あたりの出力に注目してみよう。
ワット単価? 面積あたりの出力?
ワット単価というのは、1W(ワット)の出力あたりの値段がいくらか、ということじゃ。モジュールの価格を、最大出力(W)で割った数値じゃな。この数字は小さいほどオトクということになる。安いもので500円/W弱、高いものだと700円/Wを超えているな。
えーと、お肉屋さんのグラム単価みたいなもんでしょうかね。
おおそうそう。これで値段のほうはわかるんじゃが、例えばワット単価が安かったとしても、発電効率が悪いとすると、同じワット数をかせぐのに多くの面積が必要になる。
それは前回、「発電効率」のところで教わりました(→前回の記事)。
モジュールを置ける屋根の面積には限りがあるから、たとえ安くてもあまり効率が悪いと、モジュールをあまり設置できなくて、結局はあまり多く発電できなくなってしまう。逆にいえば、効率がよいモジュールなら、ワット単価が多少高くても、同じ面積でもたくさん発電して、たくさん売電できるから、長い目でみれば導入時に高くても、のちのちお金を回収できて、そっちのほうがトクという可能性があるんじゃな。
なるほど。目先のお金にとらわれちゃいけない、ということですか。
そうじゃ。さて、表の数字だけではわかりにくいから、先ほどの表を、ワット単価を縦軸に、面積あたりの出力の値を横軸にしたグラフにしてみよう。すると、こんな風になる。
むむむむ。これはどう見たらいいんでしょう?
まず、縦軸はワット単価じゃから、上にいくほど高いモジュール、下に行くほど安いモジュールということになる。大雑把に見て、三洋電機のモジュールは高く、シャープは安い。その他のメーカーの製品はその途中に分布しておる。
ふむふむ。シャープは安い、か。
今度は横軸に注目してみよう。横軸は面積当たりの出力じゃから、右にいくほど変換効率が高く、左は低い。なるべく右側にあるモジュールを選んだほうが、同じ面積ならたくさん発電できることになる。高効率のHIT型セルを使う三洋電機の製品は効率が高い。一方、化合物薄膜型の昭和シェルソーラーのモジュールはあまり効率がよくないな。
HIT型の変換効率が高いことは前回教わりましたよね。三洋電機の製品は、高いけど効率がよい、ということですね。この結果だけ見ると、シャープの製品はそこそこの効率で、値段もお安いように見えますね。
そうじゃな。ただ、くどいようじゃがこれはメーカーが公表している希望小売価格を元にしている。本当の売値は聞いてみないとわからんからな。
はいはい。あくまで参考程度にしておく、ということですね。でもこれを知っていると、業者との話し合いでも役に立ちそうですね。
さて、では次は「モジュールの品揃え」じゃな。
はい。でも品揃えってどういうことでしょう? どのメーカーが売っているのも発電モジュールという点では同じですよね。
そうじゃな。1つは、さっき「見栄え」のところで話した建材一体型のモジュールじゃ。建材一体型のモジュールは、どこのメーカーでも売っているというわけじゃないぞ。具体的には、シャープや京セラ、カネカなどが製品を出しておるな。
そうでしたか。で、まだほかに「品揃え」の違いってあるんですか?
モジュールのサイズもある。さっき紹介したページ(→該当ページ)に、1/50スケールの各社のモジュールの絵がある。
ああ。だいたいどのメーカーも似た大きさですが、京セラとかシャープ、三菱電機のモジュールには小型のものもありますね。でもモジュールが大きいとか、小さいとか、何か関係あるんでしょうか。
広い屋根ならあまり問題ないんじゃが、寄せ棟屋根など、屋根面が狭いとき、できるだけ多くのモジュールを置きたいと思ったら、なるべく小型のモジュールを選べたほうが有利なんじゃよ。
ああ、そうかぁ。大きいモジュールしかないと、屋根に余りの場所ができちゃうんですね。
そのとおり。小さいモジュールが使えれば、できるだけ屋根に無駄なくモジュールを敷き詰めやすい。その典型が4時限目で紹介した、コーナー・モジュールじゃな(→第4時限目の記事)。
ああ、斜めの部分にもモジュールを配置できるようにしたものでしたね。
そう。コーナー・モジュールを使った場合、使わなかった場合の違いは次のような感じじゃ。小さいモジュールがあれば、こんな風に、できるだけ屋根を有効利用できるということじゃ。
でも、コーナー・モジュールは割高だったんでしたよね。
おお、忘れておらんかったな。じゃから、コーナー・モジュールを使うかどうかは、予算とのかねあいを見る必要があるな。
ふー。やっと最後まできましたね。残るは「保証」ですね。
うむ、わしも少々疲れてきたが、もうひとがんばりじゃ。
保証ってメーカーによってそんなに違うんですか?
どのメーカーも、だいたい10年の保証をつけておる。
まあ、10年も。ずいぶん長いですね。ところで、発電モジュールってそんなに故障するもんなんでしょうか?
一般的には、故障などは少ないといわれておる。じゃが、やはり保証はあったほうが安心じゃ。ところで、中国系のモジュール・メーカーであるサンテックパワーは、モジュールに25年の出力保証をつけておるぞ。
に、25年ですか! 発電モジュールって、そんなに持つものなんでしょうか?
これも一般論じゃが、モジュールだけなら、20年以上は持つといわれておる。
へぇ。でもほかのメーカーの2倍以上長期の保証というはすごいですね。
そうじゃな。発電モジュールを選ぶときには、保証についても確認しようということじゃ。
わかりました!
はー。今日も内容盛りだくさんじゃったな。今日はこれでおしまい。
お疲れ様でした、博士。また次回、お願いします!
2015年3月末をもちまして補助金情報の提供は終了しました。