ところで博士。どうして夜の時間帯だけ電気を安くしたり、昼間を高くしたりするんですか?
別に夜ふかしを奨励するわけじゃないんじゃが、電力会社としては、なるべく昼間ではなくて、夜間に電気を使ってほしいんじゃよ。
ふーん。電力会社の人は夜型が多いんですねって、もちろん冗談ですけど。
レベルが低い冗談じゃのう。それはともかく、これには電力の需要と供給が関係しているんじゃ。
需要と供給? また難しい話をしようとしていますね、博士。
まあまあ。需要というのは、みんなが使う電気のことじゃ。いまつけている教室の電灯も、電力需要のうちじゃよ。
なあんだ。わざわざ難しい言葉なんか使って、これだから学者さんは困るのよ。
うーん……。それはそうと、みんなが使う電気の量は時間帯によって大きく変わるのはわかるな?
それなら2時間目にやったじゃないですか。お昼寝も入れて、わたしが寝ている時間帯が一番少ないんでしょ。
相変わらず自分中心じゃな。まあ覚えていてくれたからよしとするか。これは個人の住宅の例じゃが、ほかにも電気を大量に使うオフィスとか、工場とかもある。いずれにしても、多くの人が寝静まっている深夜時間帯の電力需要は少なく、多くの人が活動している昼間の時間帯の電力需要は増えることになる。1日のうちでも、時間帯によって使われる電気の量は大きく変化するということじゃ。
そうですね。
それじゃ今度は、電気を供給する電力会社になって考えてみよう。電力会社は、発電所で電気を作って、みんながいつでも必要なだけ使えるように、電線に流し続けないといかん。
そうしてもらわないと困りますね。
ソーラーさんは、電気が足りなくなって、使えなくて困ったなんて経験はないじゃろう。
当たり前じゃないですか。電気が使えなかったら、いまどきは何もできないじゃないですか。
簡単にいってくれるのぅ……。じゃがみんなが電気をたくさん使うときでも、不足が起こらないようにするために、電力会社はがんばらんといかん。実際、電力事情の悪い国などでは、電気が足りなくなって工場が止まったなんてニュースもときどき聞くぞ。
へぇ、日本の電力会社はがんばってくれているんですね。
うむ。さて、電力会社は、電力需要が変動しても、不足が起こったりしないように、十分な電気を発電して供給し続けなくちゃならんというわけじゃ。
なるほど。じゃあみんなが寝静まって電気があまり使われないときは発電を減らして、昼間たくさん使われるときにはいっぱい発電するわけですね。
そうじゃな。じゃが実際の発電所は、ガスコンロの火をつけたり消したり、強火にしたり弱火にしたりするように簡単に発電量を変えられるわけじゃない。いろいろな発電方法を組み合わせて、それぞれの特徴をうまく利用して昼間のピーク電力をカバーしているという状況じゃ。次の図は、経済産業省が公開している『日本のエネルギー2008』から引用してきたもので、この様子を示しておる。
うわあ、こんなにたくさんの種類があるとは…。何がどうなっちゃってるのかわかりません。
ここでは詳しくは説明せんが、基本的には、ベースとなる部分を原子力発電でカバーして、時間帯による変化を石油や天然ガス(LNG/LPG)による火力発電で調整しているということじゃ。一番上の「揚水式水力」というのは、夜間に余った電気を使って水を高い位置にくみ上げておいて、昼間のピーク時にこれを下に落として発電するというものなんじゃ。
そうかぁ。電池じゃないけど、電気を貯めているのと同じ効果があるんですね。
そのとおり。こうした努力の結果、わたしたちは不足なく電気が使えているというわけじゃ。
苦労されているんですね。
さて、電気の不足を起こさないようにするためには、一番電力需要が多いピークのところに合わせて発電所の能力を確保する必要がある。
ふむふむ。お客さんがたくさん来たときに備えて、食器を余分に持ってないといけないのと同じですね。
うーんと、まあ、そんなもんじゃ。ともかく、電力会社としては、このピークの電力が下がってくれると設備に余裕ができて助かる。逆にピークがあがってしまうと、たくさんのお金をかけて新しい設備を作る必要に迫られるかもしれんのじゃ。さて、ピークをあげないようにするにはどうするか。
みんなが電気を使う昼間の分をなるべく減らしたいってわけですね……。
そう。つまり、需要の多い昼間はなるべく使わないようにしてもらって、その分は需要が少なく余裕がある夜間に使ってもらえれば助かるわけじゃな。
あっ、そうかぁ! 深夜の電気代を安くして、代わりに昼間の電気代を高くするのはそのためなんですか!
うむ。深夜電力メニューの狙いの1つはそれじゃ。
深夜電力メニューがどうしてできたのかはわかったんですけど、太陽光発電との関係はどうなるんでしょうか。太陽光発電システムを設置したら、深夜電力メニューにしたほうがオトク、とかってどこかで聞きました。
うむ。実際のところ、太陽光発電システムを設置した住宅の多くが、深夜電力メニューを選んでいるようじゃ。じゃが、これも生活パターンと電力消費の関係しだいで、場合によっては深夜電力メニューにしないほうがいいこともあるじゃろうな。
うーん博士、もっとわかるように説明してくださいよ。
深夜電力メニューを選ぶと、夜間は安く(10円/kWh程度)、代わりに昼間は高く(30円/kWh程度)なるといったな。
はい。
太陽光発電がなかったとしても、深夜電力メニューを選んで、昼間はなるべく電気を使わず、代りに安価な夜間時間帯に電気を使うようにすれば、電気代を安くできるわけじゃ。
ふむふむ。
実際、光熱費節約のため、深夜電力メニューにして、夜の10時まではじっと電気を使うのを我慢して、10時になるやいなや、食器洗い機にパソコンの利用、携帯電話の充電、ときには洗濯機も夜に動かすなど(普段はタイマーで早朝に利用)、徹底した家庭の話を聞いたことがある。深夜電力メニューにすれば、時間帯をうまく使って光熱費節約のチャンスが生まれるわけじゃ。
うわぁ、それは徹底していますね。わたしにはできそうにないなぁ……。
とはいっても、昼間に電気を使わざるをえない場合もあるじゃろう。深夜電力メニューを選んでいると、昼間は割高な電気を使わなくちゃならん。
じゃがこのとき、太陽光発電した電気があったらどうじゃ。
そうか! 太陽光で発電した電気を使えるから、高い電気を電力会社から買わなくてもすむんだ!
そうじゃな。もちろん、いまは余剰電力を48円/kWhで売電できるから、なるべく太陽光発電した電気は使わずに余らせたほうがトクなんじゃがな。
なるほど、太陽光発電と深夜電力の相性がいいっていうのはこういうことだったんですね!
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さあて、納得したところで、今日はこのへんにしよう。
わかりました、博士! ありがとうございました。
2015年3月末をもちまして補助金情報の提供は終了しました。