それじゃあさっそくじゃが、まずは電気料金の明細票を見てみよう。以下は東京電力の明細票を元にして作った見本じゃ。書いてある情報は大筋同じじゃが、電力会社が違うと、明細の体裁はだいぶ違う可能性があるので注意じゃ。月に1回、これがポストに入ってくるはずじゃが、ソーラーさんはわかるかな?
あら博士ったら! 電気代の明細でしょ! 主婦が電気料金を気にしないはずがないじゃないですか! 毎月この金額を見て泣いたり怒ったり笑ったり、百面相ですよ。
ああそうじゃった。じゃ、詳しく説明しなくてもわかっておる、と……。
あーいえ……。何かいっぱい書いてあるけど、いつも見るのは電気代のところだけです(汗)。
ま、普通はそんなもんじゃろう。まず、この明細票は大きく2つに分かれていて、それが色分けしたところじゃ。左側(緑色の部分)は今回検針した結果の電気使用量とそれに対応する電気料金が書いてある部分、右側(オレンジ色の部分)は先月の電気料金の領収書じゃ。
緑色の部分はこれから払う電気料金、オレンジ色の部分はすでに支払った電気料金、ですよね。
家計を預かる主婦の視点じゃな。間違いではないぞ。では今度は緑色の部分を拡大してみよう。
そうそう、こんな感じです。
アバウトな性格じゃな。まず、①は契約者の名前ね。ソーラーさんちの場合は、ダンナさんの名前になっとるだろう。
そうですね。
それから②の「検針月日」ってのは、検針員さんがメーターをチェックした日じゃな。そして1カ月前にメーターをチェックした日から、今回チェックした日までの1カ月分の電気使用量をメーターから計算して③を求め、④の電気料金を計算するというわけじゃ。
ああなるほど。じゃあ、検針月日っていうのは、家によって違うんですか?
そうじゃ。じゃから「何月分の電気料金」といっても、家によって対象の日にちは変わってくるな。
そうだったんですかぁ。
そして今回はここが大事なんじゃが、⑤のところに電力契約の種類が表記されておる。
「従量電灯B」? 何ですか、これは?
後で詳しく説明するが、特別な理由がなければ、東京電力と契約している多くの家がこの「従量電灯B」を使っておる。安い深夜電力を使うには、ここの契約の種類を変える必要があるんじゃ。
へぇ。うち、何か契約なんかしたかしら。忘れちゃったわ。
契約の話は後にして、もうちょっと明細書を眺めるぞ。⑥は契約しているアンペアじゃ。
あっ、これなら知ってます! ずいぶん前だけど、ブレーカーがしょっちゅう切れるから電気屋さんに相談して、このA(アンペア)っていうのを大きくしましたから。
そうそう。この契約アンペアというのは、家の中で同時に使える電気の最大量じゃな。同時に多くの電気機器を使う場合や、電気の消費量が大きい電気製品(IHクッキングヒーター(→用語解説)など)を使う場合は、十分な大きさの契約アンペアでないとブレーカーが切れてしまうんじゃ。
面倒だから最初からすごく大きくしておけばいいんじゃないですか?
ソーラーさんらしい発想じゃな。じゃが契約アンペアが大きいと、毎月の基本料金が高くなるんじゃよ。
あらっ!? そういうことなら最低限にしとかなくちゃ。
変わり身が早いのぅ。まあいいか。その辺の内訳が書いてあるのが⑦のところね。
ええっ!? 基本料金が8万1900円!? ああ、819円かぁ…。はぁびっくりした。
これは30Aの契約をしている場合じゃ。ま、普通はこのくらいが多いのじゃないかな。どの電力メニューでも、一定の基本料金と、その月に使った電気の量に応じた料金を加えて、電気料金が算出されるんじゃ。
それでこの「1段」とか「2段」ってのは…?
ああそれは次で詳しく説明するからちょっと置いておいて、⑧の燃料調整費っていうのを簡単に説明しておこう。
「燃料調整費」? 何ですかそれは?
うむ。ちょっとわかりにくいのう、これは。私たちが使っている電気の多くは、石油や天然ガスを使って発電しておる。じゃがこの石油とか天然ガスの値段というのは、常に国際的な市況に応じて変化しておるんじゃな。
ふうん。そんなに変わるもんなんですか?
普通の生活では、原油の値段なんてあんまり気にしないからのう。じゃがちょうど2年くらい前の2008年に原油が高騰して、ガソリンの値段が急に値上がりしたことがあったじゃろう。覚えておるかな?
ああ、そんなこともありましたねぇ。ニュースでもずいぶんやってました。うちのダンナも「ガソリンが高い」ってずいぶん文句いってましたっけ。
あれは原油価格の高騰が原因じゃ。電気を作るための石油や天然ガスは価格が変化する。そこで価格が高いときは、この調整費を使って電気料金を少し値上げする。逆に価格が下がったときは、この調整費をマイナスにして、電力会社がお金を返すことになっておる。詳しい計算方法はちょっと複雑じゃから、ここでは詳しくは説明せんぞ。詳細はさっきの表に示した各電力会社のホームページを見ること。
へぇ、そんなものがあったんですか。気づきませんでした。今度から気をつけて見てみます!
さてと、では電力契約メニューの話に進もう。ここでは基本的に、個人の住宅を対象にした電力契約の話に絞るぞ。商店とか工場とかの話はしない。
そりゃそうですよ。わたしに工場の話をされてもねぇ…。で、さっきの「従量電灯B」ですね?
そう。さっきも話したとおり、特別な理由がなければ、多くの場合、東京電力の区域の住宅はこの「従量電灯B」という契約をしているはずじゃ。これは電気を使う時間帯とは無関係に、使った電気の量に応じて電気料金を計算するというものじゃ。東京電力の場合、「従量電灯A」(「アパートの共用部分にある廊下の照明」などの小容量の用途向けの契約)とか、業務用の大型冷蔵庫などを使う商店向けの「従量電灯C」というのもある。
なるほど。A、B、Cとある中のBなんですね。
従量電灯Bでは使った電気の量に応じて電気料金を計算するんじゃが、使用量に応じて3段階の単価設定がされている。これは「三段階料金制度」と呼ばれておる。
「三段階料金制度」?
下の図にあるとおり、1カ月の電気の使用量のうち、120kWhまでの分は1kWhあたり17.87円じゃが、120kWhから300kWhまでの分は22.86円/kWh、300kWhを超えた分は24.13円/kWhとだんだん単価が高くなるんじゃ。さっきの明細票の⑦のところにあった「1段料金」「2段料金」というのはこれのことじゃ。この価格は2010年時点の東京電力のケースじゃよ。
うーんと……、いっぱい使うと電気料金が高くなるのはしかたないとして、単価も値上がりしちゃうんじゃダブルパンチですよね。どうしてこんなことするんでしょう?
「使うほど高い」ということは、逆に見れば「節約するほど安あがり」ってことじゃな。なるべくみんなに節電を心がけてもらって、省エネルギーを進めるのがこの制度の1つの狙いじゃ。電力会社の説明によれば、「第1段階は国が保障すべき最低生活水準の考え方を導入した比較的低い料金、第2段階は標準的な家庭の1カ月の使用量を踏まえた平均的な料金、第3段階はやや割高な料金」としておる。しかしいまは電化製品も増えているし、子供のいる家庭ともなると、第2段階に収めるのは難しいじゃろうな。
なーるほど。そういうことですか。帰ったらうちの明細票を確認してみようっと。
さて、次は肝心の深夜電力とか、太陽光発電との組み合わせについて説明しようと思うが、これは次回としよう。
ふー、そうですね、ちょっと疲れました。次回でお願いしまーす。
2015年3月末をもちまして補助金情報の提供は終了しました。